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「わっ、私とコールド様は恋人ではなくて、その昔会ったことがあるだけで。その、あの。」
「あら、もしかして、両想いで別れてしまったとか?」
「えっ、そっそんな。それは、私の勘違いで。」
「あら、あらあら。」
慌てれば慌てるほど、何か言ってはいけないことを私言ってしまっている。
嗚呼、一体なんて言えばいいの??
「まさか、ミシェルちゃんがあの子の言っていた愛らしい人だったとは。」
「えっ?プージャ様?」
「そうか、そうよね。あの子が、出会ったと考える歳があの時だからそうか、なるほど。」
「その、プージャ様、愛らしい人って一体?」
一体、プージャ様は何を知っているのですか?
もしかして、コールド様、金さんとの関係を知っている?
「嗚呼、大丈夫。そんな知っているというわけではないさ。ただ以前のあの子の話からと、あの子のあったことを考えていたからよ。」
「あの子にあったこと?」
「何年か前に、あの子はある仕事をこなしていた時、大怪我をしたことがあったのよ。それこそ命に関わるほどのことを。」
聞けば、若くも力があったコールド様、金さんは王家の刀として働いており、ある仕事に着いたことがあった。
しかし、その際に大怪我をしてしまい、なかなか帰って来れないことがあった。
心配して、新たに人を出そうとした時にケロリと帰ってきたという事件があったそうだ。
「あの時は、驚いた。怪我の後を見れば、それこそ大怪我で野垂れ死にしても可笑しくなかったはずなのに。聞けば心優しい娘に助けられたと。」
そして、その後は今まで以上に必死に仕事に取り組むようになった。
何故ならば、大金を稼がないといけないからと。
聞けば、迎えに行かなければならない愛おしい人がいると。
しかも、彼女はきっと家族を大切にしているから国から離れたくないだろうと。
だから、俺がこの国を出て、彼女を幸せにしないといけないから、大金が必要なのだと。
「そう言っておった。」
「えっ?」
「その彼女が君ではないかい?ミシェルちゃん。」
えっ、えっ、えっ??
金さんが、そんなことを、言って。
そんな、でも、そんなはずは。
「だって、彼は私を見ても何も。」
「嗚呼、そうだ。君を見ても何も言わないだろう。見たこともないと思っているさ。だって、あの子は4年前に記憶を失っているからね。」
「えっ?」
記憶を失う?
それって、一体。
「何故、金さんが記憶を!?」
「嗚呼、君は金さんって呼んでたんだね、そう言えば、あの子は自分の金の髪をとても大切にしていた。それはそういうことだったんだね。今は、その髪もばっさりと切ってしまったがね。」
「プージャ様、何を言って。」
「あの子はね、4年前に無茶をして、また大怪我をしたんだ。しかし、それは命に関わるようではなかったが、しかし、精神的なものでね。それで、あの子は1番大切だった記憶を失ったようだ。それが、君との記憶だよ。ミシェルちゃん。あの子の心を助けるためには代償として1番大切にしている記憶を失わなければならなかった。あの子はなかなかそれを許そうとはしなかった。例え、自分がどうなろうと、この記憶は消したくないと。俺の生きる意味を忘れたくないと、最後の最後まで言ってたよ。」
「そっ、そんな。」
「泣いて暴れるあの子を必死に止めて、私達が無理矢理したんだ。だからあの子を攻めないでやってくれ。仕方がなかったんだ。あのままでは、あの子は呪いに魂を食われていた。あの子は我が国にとっても無くしがたい存在だ。故に、君との記憶を犠牲にして生きながらえさせた。」
嗚呼、嗚呼。
次から次へと流れていく涙が止まらない。
嗚呼、嗚呼。
あの人は、私を、あの思い出をとても大切に思ってくれていた。
それこそ1番に。
自分が死ぬかもしれないと言う時でさえ。
なのに、私は。
「私は、私は、忘れてしまったのだと、思い。なんて、なんて酷い。」
「いいや、ミシェルちゃん。君は酷くないさ。だって、君は知らなかったのだから。それに、聞けば、君はずっとずっと待ってたんだろう?あの子を。たった1度会っただけのあの子を。年頃の女の子の大切な時をずっと棒に振ってまであの子を思い続けていた、そうだろう。」
「しかし、私は今は、その公爵家に嫁いで。」
「嗚呼、それだって、話を聞いているさ。あの子からね。君の旦那から。」
「だっ、旦那様から?」
「嗚呼、本当になんて馬鹿なことをしてんだって久々に怒鳴りつけてやったよ。私の可愛い姐さんのお孫さんに。いや、誰だってダメな事だが。」




