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俺がミミを見つけた時には、もう全てが終わっていた。

俺が見つけた時は姫が落ちそうになった時で、ミミがしっかりと前を見つめ、そして弓を引いた時だった。

なんて美しい光景だと見惚れた。

ミミが狩りをしていたことは知っていたが、まさかあれほど美しい光景だとは。

その光景に見惚れていて、出ていくのは遅れてしまった。

まさか、殿下達がミミと知り合っていたとは。

親しげにミミに話しかける2人に嫉妬し、ミミを無理やりに背後に隠してしまった。

2人とも、ここまで近づくことは本当に久しぶりで、それこそ俺があの姫を想い出してからは会ったことがなかった。

いや、会う時間がなかったのだ。

幼い頃は、ちゃんと自分の意思で獣化できるようになるでは一緒に暮らしていたが、それ以来会うことはなかった。

だからこそ、懐刀と言われている彼には会ったことがなかったのだ。

まさか、その彼が、ミミの想い人だとは知らず。

目の前にした彼は、レイン・コールド殿は同じ狼族だった。

しかし、彼は金狼族。

俺達、銀狼族とは元々は、同じ一族だったが本家があちらで一族が別れ、金狼族の方が先祖返りが多いと聞く。

彼もそうなのだろう。

確か、ミミの話でそう言っていたのを聞いているし、なんとなく勘で分かる。

彼は獣化のできる獣人族だと。



「はじめまして。」



そう言ってにっこりと笑うコールド殿はなんの感情も浮かんでなかった。

確か、ミミの話ならば、ミミのことを迎えにくると約束したはずなのに。

しかし、彼は一切ミミを見てもなにも感じてなかった。



「あまりにも美しく成長していたからと言って、全く面影が無くなると思えないのだが。それこそ、ミミの話を聞いてから、相手が並々ならぬ思いを寄せていたことはよく分かるのにだ。」



幼いながらも懸命に自分のために看病してくれる相手をそう簡単に忘れられるだろうか。

ミミはその程度のことなんだっと笑っていたが、本当にそうなのだろうか。

価値観は人それぞれだが、命の恩人とも呼べる人をそう簡単に忘れられるものだろうか。

なにかが引っかかっている。

いや、俺にとってはこれで本当にいいのだろうと思えるが、しかし、ミミを思えば。



「まぁ、でも、もし、旦那様、相手が覚えてらっしゃったら大変ではないですか?」


「うっ。」


「奥様の話を聞いていて、本当に奥様は相手を思ってらっしゃいましたし、それこそこちらの方の価値観で1番問題がありそうな獣人族って所がまず全く奥様は気にしてらっしゃいませんし。それに隣国でも有名な方で、お噂は聞いています。権力も旦那様と同じ、家柄だって、まぁ、奥様はそんな所に惹かれる方ではありませんが。人柄も奥様の話からとても良い方だと。もし、相手方が奥様を、迎えに来られたら、それこそ旦那様は勝ち目がありませんよ。」


「そっ、それは。」



うぅ、痛いところを。

確かに、ミミとの出会いは良いとは言えない。

寧ろマイナスであることは重々承知している。

勝ち目が今はないこともよく分かっている。



「確かに、昨日の今日で、大分旦那様と奥様の距離は近づいたと思います。しかし、それは以前と比べてです。以前の最悪のスタートからはというだけです。正直言って、奥様が旦那様に対して恋愛感情を持っているかと言われるとまだはっきりとは言えないぐらいです。気にはされているかと思いますが、まだまだのように感じます。奥様が旦那様に対しての感情はそれこそ家族愛に近いような気もするのです。」


「かっ、家族愛。」


「はい、まぁ、少しは旦那様がしっかりと思いを伝えたことで意識はされてますがね。想い人に勝てるほどかと言われたら、はっきりと勝てないと言えるほどですから。」


「クックリス、そんなにはっきりと。」


「現状把握は大事ですよ、旦那様。現実を見ず、幻想を追い求めていると、大事なことを見逃しますからね。私共は末永く奥様には、この屋敷にいて頂きたいと思っております。女性陣など、この屋敷から、領地の屋敷に移動した際、誰が一緒に行くかなんて話し合いをもうしているぐらいですからね。気の速いことに。」


「えっ!?」



まっ、まさか、いや、そりゃあ、これからずっと一緒にいれば、子どもが生まれ、その子に爵位を譲らなければならなくなる。

そしてこの地を離れ、領地にある屋敷に、移り住むだろう。

嗚呼、想像するだけでなんて幸福なことか。

ゆったりと過ごす中で、ミミと穏やかな時間を共に過ごしていくなんて。

これ以上、ないぐらいの幸福なことだ。



「嗚呼、お子様が生まれた時の乳母は誰がなるかも話し合っていましたね。」


「なっ!!」

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