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あっという間に時はすぎ、目の前で敵陣に乗り込み、頭の首を飛ばされた瞬間、ようやく、終わったことを知った。

返り血を浴びた私に、にっこりと美しく微笑む彼女は誰よりも輝いていた。



「終わったね。」


「実感が今は湧きません。」


「そう?でも、終わったよ。この首はそのまま、あっちの国に送り返してやればいいさ。確か、コイツがあっちの国では1番強い奴だから。コイツを仕留めたら暫くは悪いことは出来ないだろうね。それに、私が国に言っとくからさ。」


「国?」


「嗚呼、言ってなかったね。私はオーウラ国出身なのよ。オーウラ国の辺境伯の娘、ミーファ・リョーランだ。改めてよろしくなっ。」


「えっえっ?なっ名前。」


「約束だったろ?全てが終わったら名前を教えるって。プージャ君。」


「私の名前、知って。」


「ふふふ、なんでだろうね。まぁ、いいさ、私の事はミーファと読んでくれ。」


「ミーファ様?」


「様付けなんて面白くない。呼びつけでいいだろう?」


「えっ、しかし。」



ようやく名前を知れた彼女が、まさかオーウラ王国の辺境伯のご令嬢だとは。

オーウラ王国はそれこそ我が国よりも大国で、隣国ではあるがあまり交流がない。

相手にされていないのだ。

我が国が小さいのと獣人族の国だから。

そんな国からまさか来ていたとは。

しかもリョーランの名は交流がない我が国でも知っている。

オーウラ王国の守護神。

リョーランは弓の名手で、それこそ数百年前に魔王と呼ばれるものが現れた時に、討伐に向かった勇者の中の1人だ。

討伐した後、自国に戻り、自国を守るために辺境で住み続けていると聞いている。

そんな一族の方だったなんて。

因みに、私も一応は勇者の中の一人の獅子族の一族だけども、分家も分家。

本家は王家であり、私は遠縁すぎる者だ。

嗚呼、だからか。

そう言えば、勇者達は仲が良く、その子孫も繋がりがあると聞いていた。

つまり、彼女がここに来たのは、うちの王族が頼んだのだろう。

そんな方を呼びつけなどできるはずが無い。



「んー?君だって、勇者の子孫だろう?私と一緒だからいーのいーの。」


「いっいえ、わっ私はそんな子孫とも呼べない者です。ですから。」


「いやいや、そんな訳ないよ。寧ろ君は先祖返りだと思えるほどの才能を持っているよ?君以上に勇者の力を受け継いでいるものは居ないだろう?」


「ええ?そんな馬鹿な。」


「いや、毎日君を見てきたが、本家であるアイツらよりも君は勇者の能力を受け継いでいるよ。君達の先祖の勇者はね、なによりも感が鋭かったんだってね。そして、素早かった。特にうちの先祖の勇者と相性が良くてね、とても仲が良かったそうだよ。遠距離のうちと、近距離の君の先祖。それこそ、これまでの私と君みたいにね、先祖もそうやって戦っていたそうだ。」


「私達みたいに?」


「嗚呼、本当にそれこそ伝説のようでしかなかった話を自分が体験することになるなんて、人生面白いね。」


「私達が・・・。」



勇者の話は昔っから聞いていたし、幼い時には憧れていた。

私も勇者のように強くなりたいと思っていた。

しかし、現実を目の当たりにして、自分は勇者のようにはなれないと実感した。

戦争に自分が参戦し、私よりも強い人は沢山いる。

強い武器もある。

勇者だったら、きっとこんな武器にさえ、勝つことが出来るのに。

私は弱いから。

そう思い、諦めていたのに、まさか、そんな私が?



「ふふふ、さあ、帰りましょう。」


「はっ、はいっ!!!」



ミーファ様に連れられて国に帰れば、勇者扱いされてしまったことは本当に驚いた。

そのせいで、有り得なかった国の妃まで上り詰めてしまった。

遠い昔の話だ。



「母上?」


「嗚呼、すまないすまない。なんだったけ?」


「だーかーら、嫁殿の話だよ。父上は母上の好きなようにしたらいいとは、言っていたけども、本当にどうするつもり?」


「どうするって、国に連れて帰るんだろう?」


「連れて帰るたって、ミシェル嬢にあんなことをした女だよ?それを嫁に本当に連れて帰る気?」


「んー、まぁ、そうだけども、大丈夫だろう。あの様子ならば。」



あの後の様子を見れば、そう馬鹿なことはしないだろう。

姐さんのお孫ちゃんを虐めたことはゆすせないけども。

それでも、それだからこそ、連れて帰らなくちゃいけないのだ。



「私がしっかりと面倒を見ないとね。」


「はぁ、またかよ。」


「ん?それが、ミシェルちゃんの為にもなるでしょう?」


「それが本音?」


「まぁね、いつもとはまた違うわ。私の女神達が困っているから助けないと。」



私の女神達が笑っていてくれるのが私の願いだから。

しかし、あの笑顔。



「1度、ミシェルちゃんに会わないとね。」

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