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にっこり微笑むこともできた私はもう大丈夫。

もう、私は震えることはないでしょう。

心配そうに見つめる旦那様に大丈夫だという意味を込めて笑顔で見返す。



「嗚呼、そうですわ。ラートム殿下。こちらを。」


「これは、母上のじゃないか。」


「えぇ、少しお借りしたのです。」



先程使っていた弓と矢は使い終わった後すぐに小さなネックレスとなった。

借りていたものなので返そうと思ったのですが、プージャ様はまだ時間がかかりそうですし、ちょうどラートム殿下がいらっしゃったから、とりあえずラートム殿下にお預けしておけばプージャ様に返却されるはずです。

とっても高価なものだと思いますからね。

これ。



「なんとなんと、母上が大事にしていた魔法具を。」


「えっ?」


「まぁ、君になら貸すか。しかし、使えたのかい?これを。」


「えっえぇ。これでも弓は得意なので。」


「ふふふ、そうか。流石だね。分かった。これはちゃーんと母上に返しておくね。」


「えっえぇ、よろしくお願いいたします。」



殿下に一礼して、その場を離れる。

これ以上、ここにいるのは良くないので、旦那様と共に去ることにしました。

去る前にまたと笑顔で殿下が手を振っていますが、もう会うことはないかと思います。



「すまなかった、ミミ。危ない目に合わせて。」


「えぇ?大丈夫です、平気ですよ?」


「いや、俺が君から離れるたのが間違いだったんだ。何があっても離れる訳にはいけなかったのに。」


「もう、旦那様。」



ようやく落ち着ける馬車に乗り込めたのに。

旦那様は落ち込んでしまっている。

何も旦那様は悪くないのに。



「私はこれでも辺境で狩りもしてたから他の令嬢よりも強いんですよ?」


「それは聞いていたが、しかし。」


「確かに、追われた時はどうしようかと思いましたが、なんとか逃げきれましたから、ね?」


「だが!もし、捕まっていたら、ミミ、君を失うことになったかも知れないんだぞ!」



聞けば、姫の計画はなんとも言えない計画でした。

なんというか、穴の多い計画ではと。

そう素直に旦那様に伝えると、旦那様はきょとんとした表情を浮かべていました。



「いや、その、私が例え襲われたとしても、それが理由で旦那様は別れますか?私と。」


「そんなことするわけが無い!!」


「ふふふ、やっぱり。だから、姫の計画は穴だらけなんですよ。」


「えっ?」


「だって、まず、私と旦那様が別れないと話は進まないのでしょう?」



私が襲われたとしても、そりゃあ、襲われたくは無いですけども、もしそうなったとしても、旦那様がそれを嫌がって私と離婚するというのならば、姫の計画通りかもしれませんが、そうじゃないなら意味がありません。

なんたって、私と旦那様は、もう結婚してますし、事実上の夫婦ですもの。

その初夜だって、ねぇ。

つまり、私は生娘ではないとほかの方も思ってらっしゃるし、今更、どうこうされようとも変わらないのですよ。

旦那様がどう思われるかしか変わらないのです。



「旦那様はきっと、変わらないので、大丈夫でしょう?」


「ミミ。」


「まぁ、それに、私は普通の令嬢よりも強いので、そうそう捕まりもしませんでしたがね。」


「嗚呼、君は、本当に。」


「旦那様?」



ギュッと抱きしめられてしまった。

最近、とても多いですね。

旦那様に抱きしめられるの。

最初はどうしたらいいのか反応に困ってしまっていましたが、今はなんでしょう、落ち着くんですよね。

旦那様の腕の中に居ると。



「しかし、先程はとても震えていたね。」


「えっ、嗚呼。それが、金さんと出会って、あれほど目の前で話すことになるなんて驚いてしまって。」


「そっそうか。それでどうだったんだい?」


「どうだったとは?」


「いや、その、想い人と話したんだろう?それで、その。」



旦那様がとても聞きずらそうに聞いていますが、どうだったと言われましても。

相手はなーんにも覚えていませんでしたもの。



「どうもこうも、ありませんよ。旦那様。」


「えっ?」


「金さんは、コールド様は一切私を覚えていませんでしたから、なーんにもありません。そりゃあ、少しは覚えてくれてたらなんて思わないこともなかったですけども、それでも、あれだけさっぱりと覚えていらっしゃらないので、すっきりと気持ちを切り替えることができました。」


「切り替える?」


「えぇ。まぁ、コールド様が覚えていなくても、私にとっては命の恩人ですから、今まで通り幸せになって頂きたいという気持ちは、ちゃんとあります。しかし、それまでです。」


「それまでって。」


「ふふふ、もう終わっていた恋です。初恋で叶わない恋でしたが、とても幸せな恋でした。」

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