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旦那様に支えられている肩にぐっと力が籠る。

嗚呼、旦那様はこの震えに気づいていた。



「旦那様。」


「大丈夫。俺が着いているから。大丈夫だ、ミミ。」


「えぇ、えぇ。ありがとうございます。」



旦那様の温もりに震えが止まる。

そうだ、もう終わったこと。

私は、私は、あの頃の少女ではもうないのだから。

私はウィルド公爵夫人なのだから。

私はローエン・ウィルド公爵の妻。



「しかし、一体どういうことだ?何故姫が?」


「えっ、あっ、それは。」


「それに何故、殿下が2人?いや、似ているがもう1人は女性だな。もしかして、あの方は。」


「えぇ、旦那様の予想されている通りです。あの方はレオルド王国の第1妃のプージャ・レオルド様です。」


「嗚呼、やはり。先程夜会でいらっしゃったラートム殿下は妃殿下ですね。」


「えっえぇ。そうらしいです。」


「しかし、何故、彼女と姫が?」



あっ、そうですよね。

不思議に思いますよね。

これまでのことを旦那様にとりあえずできるだけ短くお話すると、旦那様の表情はあまり良くない表情になっていきました。



「あっあの旦那様?」


「嗚呼、今はいいです。我慢します。しかし、今この場に居続けるのはあまりよくないな。ミミ、早く帰ろう。」


「はっはいっ。」


「おいおい、そりゃないよ。ウィルド公爵。」


「チッ。」



旦那様と共にこの騒ぎに乗じてこの場から離れようとした時に、何故かラートム殿下に引き止められました。

結構、ガッシリと掴まれています。



「お久しぶりですね。レオルド殿下。」


「ヤダなー。レオルド殿下って呼ぶとそれこそ母上もレオルド殿下だし、他の兄弟だってレオルド殿下だって言ったじゃないか。」


「チッ、ラートム殿下。お久しぶりです。」


「嗚呼、そうだね。君が公爵になった時以来だね。もっとコチラに来てもいいんだけどね。」


「ご冗談を。私などが易々と殿下にお会いなどできませんよ。」


「そうかい?君はある意味、私達ととっても近しい存在だ。それこそ兄弟だ。」


「はははっ。それはそれは。身に余る言葉です。」


「だっ、旦那様?」



ラートム殿下とお知り合いであった事にも驚きましたが、何よりも先程からの殿下への対応の仕方がとてもじゃないですが、穏やかではありません。

寧ろとっても失礼ではないかと思いますが、殿下が気にしてらっしゃらないからいいのかしら。

しかし、なんで旦那様とラートム殿下はお知り合いなのかしら?

公務でお会いしたのかしら?



「嗚呼、ミシェル嬢、すまないね。彼とは昔一緒に暮らしていた時期があるのさ。彼の体質がね、うちの国に合ったから。3歳から7歳までの間ね、だからまぁ、なんだ幼なじみというのかな?いや、兄弟?」


「違います。私に兄弟はおりません。」



なるほど。

旦那様はそう言えば珍しくも全身を獣人化することが出来る方でした。

きっと昔は上手く出来ないこともあって、隣国の方に行っていたのですね。



「まぁ、いいさ。そう言えば、レインとは初めてだったけ?ローエン。」


「えぇ、そうです、殿下。初めまして、レイン・コールドです。」


「嗚呼、初めまして、ローエン・ウィルドです。」


「そういや、お前達はすれ違いだったけなー。レインが私の傍付きになったのはローエンが国に帰った後だからな。」


「そうですね。お噂は聞いてましたが。」


「私もですよ。お噂は色々と聞いてます。えぇ。」



目の前に金さん、いえ、コールド様がやった来たので、少し震えたが、旦那様がそっと前に出てくれ、私から見えなくなった。

やはり、コールド様は一切私を見ることはない。



「しかし、殿下。勝手な行動をされては困ります。」


「勝手な行動って、私が悪いわけじゃない。母上が勝手なことをするからだ。まぁ、母上の勝手な行動で、ローエンに久々に会えたし、それにミシェル嬢にも会えたんだ。」


「ミシェル嬢?」


「嗚呼!ローエンの奥方だ。」


「チッ、いらん事を。」


「ん?なんだなんだ?」


「いいえ、なんでもありません。私の妻、ミシェル・ウィルドです。」


「ミッミシェル・ウィルドです。」


「初めまして、ウィルド公爵夫人。レイン・コールドです。」



旦那様が渋々前から居なくなり、私を紹介したので、目の前には、コールド様が立つことになってしまった。

どうすればいいのか分からず、とりあえず名前だけ伝えることしか出来なかった。

しかし、コールド様が 笑顔ではじましてと挨拶されたことで、どこか吹っ切れた。

やはり、彼の中ではじめましてなのだと。

あの時の記憶は一切ないのだと。



「えぇ、初めまして。コールド様。お噂は度々耳にしてますわ。」


「そうですか?いや、これほど美しい方の耳にも入っているとは、光栄ですね。」


「あらあらまぁまあ、お上手ですこと。」

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