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目の前には今にも落ちそうな姫の姿。

追われていた身だし、旦那様を困らせていた相手だけどもこのまま何もせずにいて大怪我をしてしまったら後悔する。

ただ、弓を撃たなくなってもうしばらく経つ。

きちんと狙って打てるものか?



「出来るかい?」


「自信があまり。」


「ううっ。」


「っ!!!打ちます、打ってみせます!!」



苦しそうな姫の声。

確実に限界が近づいている。

私がやらないといけないっ!!!

プージャ様から弓と矢を受け取り、狙いを定める。



「大丈夫、少しズレてもいけるから。」


「はいっ!」



プージャ様の声に安心する。

でも、できるだけ先程指定された場所を狙ってみせる。

大丈夫、私の命中率はお祖母様も褒めてくださるほどだもの。

ギリっと歯を食いしばり、弓を引く。



「いけっ!!」



狙いを定め、次々に打つ。

良かった。

体はしっかりと覚えていたようで、自然と引けた。



「おおっ!流石だ!!言った通りの場所だっ!」


「殿下!!」


「おおっと、ヤバいね!!」


「きゃあっ!!」



矢をいった後、姫の体が揺れ片手が滑り落ちた。

そして、片手では支えられず、ずるりともう一方も。

ふわりと姫の体が下へと落ちそうになった瞬間、とても素早く隣からプージャ様が消えた。

そして、気づけば姫を抱えたプージャ様が。



「よっ良かった。」


「ははっ!流石は姐さんのお孫さんだっ!」


「でっ殿下!?かっ髪が!!それに耳と尻尾がっ。」


「あっ、ありゃ!力を出しすぎたね。まぁ、仕方がないかっ!」



頭から耳が出、尻尾も出ているプージャ様の姿に驚いてしまう。

そう言えば皆、力を出しすぎたり気持ちが落ち着かなかったりすると出てしまうって言ってましたね。

しかし、髪まで伸びるとは思いませんでした。

先程までは本当に殿下そっくりでしたが、髪が伸び、そしてどこか女性らしさも出たプージャ様。

しかも、今抱きしめられている姫は分かってしまっただろう。

今、自分を助けたのは女性であると。



「えっえっ?わっ私?そっそれにあなたは?」


「嗚呼、仕方がないね。初めまして、嫁殿。無事助けられてよかったよ。」


「えっえっえっ???」


「リリィ殿下!!無事で!?」


「えっえぇ。」



困惑する姫に楽しそうな笑みを向けるプージャ様。

そして遅れてやってきた兵たちに、これでは確実に間に合わなかっただろう。

良かった。

姫を助けられて。

騒ぎを聞きつけて、どうやら本物の殿下もやってきたようですね。

面白そうに笑いながらやってきている殿下のお姿。

しかし、その後ろを見て、目を見開いてしまう。



「きっ金さん。」


「ん?どうしたんだい?ミシェル嬢。」


「えっあっいっいえ。」


「ハッハッハ。まさかこれでバレるとはね。母上も爪が甘いねー。」


「ラートム殿下、また怒られますよ。」


「大丈夫だろう、今は嫁殿に集中してるから聞いてないさ。なぁ、ミシェル嬢。」


「えっあっ。」


「嗚呼、すまない。紹介するのが遅れたね。私の右腕のレイン・コールドだ。」


「初めまして。レイン・コールドです。」


「えっ?」



やってきたラートム殿下の後ろにいたのは金さんだった。

確かに金さんだった。

しかし、彼は初めましてと言った。

私の顔をしっかりと見て。

でも、何にも反応はなかった。

もし、目の前で会うことがあったら金さんは少しでも思い出してくれるだろうか。

そう思っていた。

あの日々は私にとって大切な思い出だったから。

私の人生でとても幸福な日々だったから。

少しでいいから覚えて欲しいと思っていた。

約束は別にいいの、もういい。

でも、少しでもあの日々を覚えてくれていたら。

金さんも大切だと少しでも感じてくれていたらと思ってた。

願ってた。

でも、彼は何も覚えていない。

その事実は、どんな再会になろうとも笑顔でと思っていたのに、その笑顔を一切浮かべることが出来なかった。

動揺に、体が震えた。



「ミシェル嬢?」



嗚呼、ラートム殿下が心配して声を掛けてくれるが上手く返事ができない。

頭が真っ白だ。

嗚呼、嗚呼、誰か。



「ミミ!!」


「えっ、あっ、旦那様!!」


「良かった。」



汗を流し、必死にコチラに向かってきた旦那様に、抱きしめられる。

その瞬間体の震えが止まる。

そして、冷静に考えることができる。

嗚呼、もう色々な事があって忘れてしまったいたが、私はずっと旦那様と合流する事が目的でした。

どうやら旦那様は今まで私を探してくれていたようです。

旦那様の様子を見てとても申し訳なくなる。



「ごっごめんなさい、旦那様。」


「無事ならば良かった。」


「えぇ、私は大丈夫です。ご心配をお掛けして、すみません。」


「いや、大丈夫では無いだろう?」

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