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あの夜に恋をする

作者: 須田森羅

深夜3時を廻った。カーテンを開け窓越しに外を見る。暗かった。その暗さに私は少し安堵した。まだ夜は終わっていない。まだ朝は来ない。高校に行きたくなかったからだろうか、寝るのが嫌いだったからだろうか。理由も思い付かないまま夜が過ぎるのを体で感じていた。夜になると昼間には考えもしなかったことが思い浮かんでくる。人はいつ死ぬのだろう、と。ただ今を全力で生きることすらできていない自分が死を考える必要性は感じられなかった。そんなことを思っていると、何故か心の内側を誰かに抉られているかのような不快感が襲ってきた。


「死ぬのは簡単だが、生きるのは難しい」


人の一生とはそんなものだろう。そんなことが頭に浮かぶ。死ぬまでのほんの一瞬を一生懸命苦しみながら、もがきながら努力する。報われるかも分からない、失敗するかもしれない。それでも誰よりも努力し誰よりも上に立とうとする。そんな誰よりも素晴らしい人生。死ぬまでの一瞬を素晴らしいと表現していいのか分からないが、死ぬために努力や苦労を沢山する。私はそこに"人としての美しさ"を感じてしまった。


「明日死ぬかもしれないのに明日に触れる私は美しい」


明日死ぬかもしれない。明後日死ぬかもしれない。いつも死はすぐ側にある。そんなこと頭の片隅に誰でも置いてあるはずだ。それでも死を恐れず生きている人間は少なくない。そんな生き方をしている人間の方が死は遠いのかもしれない。私はそうは思いたくない。夜更けだからかもしれない。でもそれでいい。明日の朝私の胸にこの感情が残っていなくても明日の朝死んでいるかもしれない今の私がこの気持ちを持っているなら。下らないだろうか、自己嫌悪だろうか。誰にも分からない心のもやもやが私を蝕んだ。


「ただ夜が明けるだけ」


いつの間にか朝になっていた。不安や焦りはすっかり消えていた。いつものように朝ご飯を食べ、歯を磨き、学校へと向かう。私は呟く


「またあの夜が来ないかな」

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