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四神  作者: ゆーま
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第二章「開戦」

勇魔たちが、アパートに向けて走り始めたと同時に、破壊された窓から指令がAKを突き出して撃ち始める。

「ちょっと、指令、本気ですか?確かに攻撃してきてますけど、相手は少年ですよ。殲滅って。」

若い男が指令に対して言う。

「甘いぞ。お前は。あの年代の少年少女たち。間違いなく、あの時の大テロによって生まれたテロ孤児たちだ。テロに対する憎しみ、復讐心、それはとてつもなく恐ろしいものに違いない。」

指令は破壊された窓からAKをフルオートで撃ちながら言う。その顔には、焦りだけでなく恐怖が感じられた。

「そんなにですか?」

若い男が言う。彼はいまだに銃を撃つことをためらっているようだ。

「ああ。少年兵を育成する機関のうわさが流れ始めたのは、今から5~6年前だ。あいつらよりも少し上の年代のテロ孤児たちが集まって、いくつかのテロ組織を壊滅させたという情報が流れた。その時はまだ、少年兵の育成機関などはなく、テロ孤児たちも政府に所属していたわけではなかったようだ。だが、政府に所属していないのにもかかわらず、テロ組織を壊滅できるだけの戦闘能力、テロ組織に挑もうとする勇気、行動力、テロ組織の所在を突き止めた情報収集能力。これらは脅威だ。だが、憎しみの力がこれだけのことをなしとげるなら、これは大きな戦力になる。政府はそう判断したようだ。それからだ。少年兵を育成する組織の存在、様々なテロ組織の壊滅の裏に、少年兵たちの存在の噂がちらつき始めたのは。」

指令はAKの銃身の下部にある、グレネードランチャーに弾を装填しながら話した。

「じゃあ、こいつらも?」

若いほうが、怯えの混じった声を漏らしながら言う。

「間違いない。その育成機関によって訓練された少年兵たちだ。今まで、噂程度のものとしか思っていなかったが、今確信した。そんな奴ら相手に手加減なんか出来る訳がない。確実に仕留める。」

指令が力のこもった声で言う。その声には強い覚悟が感じられた。


「勇魔隊長、及び弓子隊長率いる2番隊が、敵アジトに向かって突撃を開始いたしました。」

敵アジトのアパートから遠く離れた別のビルの屋上で双眼鏡を持った少女が言った。黒い髪が肩まで伸びている。身長は155㎝くらいだ。

「2番隊だけに任せておけばいいのに、総隊長自らが突っ込むだなんて。」

狙撃銃、SL9SD持った少女があきれた感じで言った。身長は160㎝くらいで、黒い髪が腰まで届いている。

「みんなのことが心配なんですよ。傷つけたり、死なせるくらいなら、自分を犠牲にしたほうがいいと思っているんでしょう。」

双眼鏡を持った少女が言う。

「これは戦争よ。戦争にそんなロマンチシズムを持ち込んでも、自分の負担になるだけよ。」

ライフルを持った少女は冷めた口調で言う。

「だけど、友子隊長は認めているんですよね?そんな勇魔さんのことを。」

「まあね。」

少女はそういうと、無線に手を伸ばす。

「4番隊、2番隊を援護するわよ。」

「了解!」

無線から複数の声が聞こえる。

「春子、サポートをお願い。」

少女はそういうと、長い髪を後ろに束ねて、ポニーテールにすると、ライフルを構えた。


「撃て!撃つんだ!」

指令と呼ばれている男がAKを撃ちながら言う。先ほどまでいた部屋を出て、今は外の廊下にいる。

 このアパートは5階建てで、横一列に6部屋が並んでいる。廊下の真ん中にはエレベーターがあるが、エレベーターの横と廊下の両端に非常階段がある。

 男たちのいた部屋は、3階で、エレベーターを中心に右側にあった。男たちは最初は右端の非常階段を使おうとしていたが、部屋から出た瞬間、両側から攻撃を受けた。他の階にも、仲間が数十人いるが、上、下両方からも銃声が聞こえる。少年兵たちと戦闘をしているのは明らかだ。

 もう一人の中背の男も、左奥の非常階段に向けてAKを撃っている。自分たちのいた部屋の扉を防弾壁代わりにしている。それなりに戦闘経験はあるようだ。

「指令、やめてください!相手はまだ子供ですよ!」

若いほうの男がAKを抱えながら言う。撃つ気は全く感じられない。

「甘いぞ!さっきも言っただろう!こいつらはテロ孤児だ。憎しみをもって俺たちに挑んでいる。やらなければやられるだけだ。」

指令は言った。

「でも、でも、元々彼らのような子供たちを救うのが、自分たちの目的だったはずですよ。自分たちの活動で、テロ孤児たが生まれたのは必然だったのかもしれません。彼らに自分たちにがやられるのも必然でしょう。だけど、自分たちによって生み出されたテロ孤児たちを自分たちが殺すだなんて、そんなのおかしいです。」

若い男は言った。

「だから、甘いと言っているんだお前は!お前はまだ若いから、そんなことが言えるんだ。だけどな、これは戦争だ!理想だけでではやっていけない。目の前に立ちはだかる敵は容赦なくやる。やられる前にやる。やらなきゃやられる。ただそれだけだ。」

指令はそういうと、またAKを撃ち始める。しかし、その瞬間、銃声が聞こえたと思うと、黙ってAKを撃っていた、もう一人の男が肩を抑えながら倒れる。どうやら、肩を撃たれたようだ。しかも、特殊な弾丸を使用しているようで、たった一発の弾丸で気を失ってしまっている。

 男が、銃声が聞こえた自分から右側のほうを見ると、右端の非常階段と、自分達のいた部屋の間にCz75を構えた少年がこちらの方を見ていた。背は170cm台と高く、細身だが、鍛えられた体をしている。見たところ、日本と西洋の混血のようだ。

「貴様!」

指令は少年に向けてAKを向ける。

「ご安心を。殺してはいませんよ。我々が使っている弾丸はすべて麻酔弾ですので。それよりも、おとなしく捕まったほうが身のためだと思いますけど?」

少年は落ち着いた口調で言った。

「黙れ!来い!」

指令はそう叫ぶと、少年がいるのとは反対側、つまり左側に位置するエレベーター横の非常階段に向けて走り出す。若いほうの男もそれに従う。

「無駄ですよ。」

少年はそういうと、再び愛銃のCz75を構える。慎重に狙いをつけようとするも、二人が非常階段にたどり着いたとき、下のほうから銃声が響く。そして若いほうの男が腹部を抑えながら倒れる。

 指令は構わず。上のほうに上がっていく。少年が、若い男のほうまで駆け付けると、下のほうからリボルバー拳銃を持った少女が上がってくる。

「勇魔、目標は上の階のほうへ行ったよ。こちらの階も制圧完了。」

少年は無線に話しかける。

「了解。これからそっちに向かう。」

勇魔が答える。

 少年はすぐに倒れた男たちのほうへ向かう。先ほど言ったように、少年たちの武器は特殊な弾薬を使用しているため、被弾すれば、気を失う。しかし、威力は通常の弾丸と同じなので、早いうちに処置をしないと、失血死をしかねない。

 少年は先ほどまで男たちのいた部屋の扉の前で倒れている男のに近づくと慣れた手つきで処置をする。そして、非常階段の方に目を向けると、顔色が変わった。先ほどのリボルバー拳銃を持った少女が、若いほうの男に対して銃を向けていた。


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