企み
そこから禁煙生活がはじまる
気の強い女程
惚れた男には弱い
私の人生で出会った女性の統計だ
この時私は自分もそうだと確信した
今更気付いた訳ではない
何となくそんな人種だとは思っていたが
ずっと目を逸らしてきたし
そんな男にハマる事がなかった
自分のタイプの男性に惚れ込むよりも
惚れされるべきだと思っていたし
そんな事よりも仕事を優先にしてきた
そして周りの経験談を聞く限り
恋愛の好きなど一過性で
最後は裏切るか裏切られるか
冷めるのが彼側か彼女側か
その最終地点しかない
その最終地点を目の前にしながら
どこまで両思いで生き抜けるのか
そのサバイバルゲームだと思っている
そんなサバイバルゲームよりも
仕事で誰よりも評価され、出世する
誰かが出世すれば、誰かが降格する
そんなサバイバルゲームの方が性に合う
そして私はガムを噛み続けていた
「部長が煙草をやめた」
そんな噂が回っているらしい
中には男が出来たからとか
その男と結婚する気だとか
嫁になれる為にあがいているとか
好き放題に言われている
人の上に立つと、こうなる
そして的外れではない現実
そして会議中にパソコンにメールがきた
初めて山本くんから送られてきた
「あやかさん、お疲れ様でございます。禁煙は順調でしょうか?」
妙に心が踊っているのが分かる
学生時代のバレンタインの日みたい。
「翼くんお疲れ様です。お陰様で順調です」
ふと、思う
私は彼がおそらく好きなのだ
そして
彼は私を好きなのかどうか
結婚には条件があると言っていたが
「好き」にも条件がある
自分から告白した事がない私は
告白された人の中からしか
付き合った事がない
そう
私は好きになられて好きになるのだ
そしてそれが女の幸せの最低条件だと思っている
それでいままで愛されてきて満足している
元彼が完璧だとは言わない
ただ、沢山愛して貰えた
後悔などない
だが、自分から好意を抱いて近寄って
見事に相手から告白された
こんなパターンははじめて
でもね、引っ掛かるの
彼は私に好きだとは言っていない
私は告白されて否定はしていないが
OKを出した覚えもない
もちろん私も好きだとは言っていない
冗談のように始まった関係
いや、始まっているかも分からない関係
でも私は真面目に禁煙をしている
この事実が、おそらく好きだと
言っているようなもの
でも、彼は何もない
変化は彼からメールが届くようになったこと
そしてタメ口になったこと
彼が私を好きという証拠は、何もない
企みはなんなのだろうか
お金なの?地位なの?体なの?何なの?
カフェ代は必ず渡す彼
業務中に誘ってるんだから払わせてと言っても
絶対に払わせてくれない
あとは推薦狙いかしら
部長推薦という出世枠がある
使っても使わなくても良い
でも私はいままで誰も推薦していない
まあ体目的は可能性が低いわね
それよりも「部長を抱いた」という
ステータスのようなモノを
もしかしたら狙ってるのかもしれない
彼の企みは、分からないままだった。