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高校三年生

作者: いものこ

8時06分

下り電車

三両目三番ドアが美香子の前で開く。

美香子は乗車し、電車に乗っていた友人に小さく「りんちゃん、おはよ」と言った。

りんも「おはよ」と言った。


終点で二人は降車した。

駅のホームには階段とエスカレーターがある。

美香子とりんは、いつも階段を使う。

階段を上りはじめたときりんが言った。

「あの目玉焼きが書いてあるリュックって佐々木さんだよね」

美香子は「それな。私もそれ思った」と言った後、「コンビニ寄って良い」とりんに聞いた。

りんは、美香子をみて黙って頷いた。


改札を通る時、美香子の目の前に目玉焼きのリュックを背負った女がいた。

女は残高不足で改札を通ることができなかった。

女は振り返り精算機に向かって歩き出した。


美香子は女の顔をみて「長島さん佐々木さんと同じリュックなんだ」と思った。

美香子は改札を通る。

改札から少し離れたところでりんが美香子を待っていた。


二人は歩く。

坂を登るとき、りんが言った。

「何が嬉しくてこんな坂を毎日登ってるんだろうっていつも思う」

「それな。でも明日でこの坂登るのも最後だし」

と美香子がそこまでいうと、

「自分で選んだ高校だけどさ、家庭研修期間がないとかありえなくない。他の学校の子みんな休みじゃん」

とりんが言った。

「確かに。私もまどかみたいに休みたいよ」

と美香子は同調した。

「そういえば、まどかって何で休んでるの」

とりんは美香子に聞いた。

なぜならりんは、美香子ならまどかが休んでいる本当の理由を知っているような気がしたからだ。

美香子はまどかから「女子高だし、派閥とかカーストとか三年間面倒だった。卒業を目前に急に本性だす人とかいそうで嫌だし、そういう面倒なのにもう関わりたくないから卒業式まで休もうと思ってるんだー。自主公欠、自主公欠」と聞いていたが、やたら面倒事に首を突っ込むりんにそれを伝えるのは違う気がして、

「よくわかんないけど『自主公欠』て言ってたよ。休みたいだけじゃね」と言った。


りんはそれを聞いてまどかに理由を聞いたときに

「えーなんとなくー自主公欠」と言われたのを思い出して、

それなら私も聞いたわ。美香子使えな。まどかにも信用されてないのかよ。

まあ、美香子口軽そうだしね。と思いながら

「自主公欠とか、まどか面白。ただのズル休みじゃん」と笑いながら言った。


美香子も一緒に笑った。


二人が教室につくと、ゆうかが近づいてきた。

ゆうかが「おはよ」と言った。

美香子とりんは「おはよ」と返した。


教室の窓際にいたなほが美香子とりんに手招きをした。

りんは窓の方に向かったが、美香子は気付かない振りをして席に着いた。


教室には沢山の話声がある。

「ゆうかに挨拶するとか美香子とりん優しすぎ」

「それな」

「目の前で挨拶されたらさすがにね」

「今日の放課後どこにいく」

「ゆうか優しくするとすぐにつけあがるから」

「明日、同じ髪型にしよー」

「いいよ。どんなのにする」

「明日、卒業式とか全然実感わかない」

「ほんとそれ」

「ゆうかちゃんって1、2学期結構仕切ったりクラスの中心だったよね」

「私は学生最後だから、家庭研修期間があればみんなと旅行とか行きたかったのに、この学校マジでくそ」

「長島が私と同じリュックなんだけど」

「うちらのクラスティーシャツ変なデザインだったじゃん。あれとかゆうかのわがままでしょ」




放課後

美香子はいつも一人で帰る。

正門を出たところでゆうかに声をかけられた。

「一緒に帰ろう」

美香子は「いいよ。一緒に帰ろう」と言った。


美香子は黙ったまま歩く。

ゆうかが困った様子で美香子の隣を歩く。


無言に耐え切れなくなったゆうかが

「何も聞かないの」と言った。


美香子は「話したいことがあるなら聞くよ」と言った。


13時24分

上り電車のホームに電車がきた。

美香子とゆうかは、電車に乗った。


ゆうかが口を開く。

「話したいって程じゃないんだけどね。最近、友達ってなんだろうって思うんだ」


「なんだろうね」


「よく考えてみるとわからないよね。友達だと思ってた人からある日、突然、裏切られると3年間の思い出が全部嘘だったように思える」


「へー」



「こんな話つまらないよね」


「つまらないけど、別に良いよ」


「ごめん」


「謝んなくてよいよ」


「ありがと」


「明日、卒業するんだし気にしなくて良いと思う」


「そうだね」


「うん。じゃあ私、ここの駅だから」


「あ、うん。バイバイ」


「うん。また明日ね」

と言って美香子は降車した。

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