埃と妄想
きらきらきんいろ
ほこりのつぶ舞っている
見とれているのは
あなたのほおの産毛
午後三時十二分の明るいけだるさ
あなたは何か言った
微笑まないで
こんなに苦しいのに
そのやわらかな指さきで
かろやかにめくる楽譜こそ
あなたとの共有する確かさ
どうしてなんて問わないで
時が今終わればいいのに
あなたの丸い瞳は亜麻色で
なんて締め付けてくるのだろう
雲流れる空広い屋上から
いっそ飛び降りたら
この想いは消えないだろうか
それとも
むしろ死んでしまえと
想いを告げたなら
悔い残らず
果てへ飛び込めるのか
すべての悲しみを
すべての弱さを
すべてのわたしを込めて
あなたに一つ詩を贈る
これは決して届きはしないもの
これは何時までも忘れられるもの
さいごの朝が明けるとき
一声鳴いたカラスの声
そのままでいてください
わたしにとって
あなたがすべてです
あなたのそのままこそ
わたしのすべてなのです
だから
どうか
あなたのその銀の星のような声で
わたしのなまえをよんでください
わたしは何処へでも迎えに行きます
例え裸で割れたガラスの海を泳いでも
例え炎立つ重油の沼で溺れても
例え千尋の谷を落ちようとも
この想いは
どこまでもいくのです
茜の空を超えて
重々しき雲の帳を払い
峻険なる白い峰の頂きより
鏡の湖を渡る風となり
ひとりのあなたへ
あなたへと
涼やかに頬を過ぎるものとなり
あなたのたじろぐものを
遠ざけるために
あなたの安らぎの
礎となるために
若き日の追憶と膨らんだ妄想です。
ある方の企画に感化されました。
詩とは鮮度が短い故、今しか書けないのです。