表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
序列学園  作者: あくがりたる
神眼の女の章
92/138

第92話~学園生活の終わり~

 畦地(あぜち)まりかが戻らない。

 外園伽灼(ほかぞのかや)からの報告もない。そんな状態で1日が過ぎた。

 割天風(かつてんぷう)が執務室にて鵜籠(うごもり)から報告を受けたのはそんな時だった。

 鵜籠が口にした名はそれ程割天風を驚かせなかった。予想はしていた事だったのだ。

 澄川カンナ。この女は神髪瞬花(かみがみしゅんか)に続く”実験体”。復讐心という負の感情は膨大な氣を生成する。かつて解寧(かいねい)が復讐心を利用して作り出した武術に”慈縛殿体術(じばくてんたいじゅつ)がある。あの技は復讐心が強ければ強い程強力な技を繰り出せる。しかし、慈縛殿体術には”氣”という考え方がなかった。その点、篝気功掌(かがりきこうしょう)の氣を操る力と融合させれば世界最強の体術となる。それはあくまで、体術で世界最強となるのであって、剣術、槍術、弓術の最強は別に存在する。

 割天風はその4つの世界最強武術の使い手を集める事に執着していた。現在学園の監視下にある最強武術は澄川カンナの”篝気功掌”。美濃口鏡子(みのぐちきょうこ)後醍院茉里(ごだいいんまつり)の”御堂筋弓術みどうすじきゅうじゅつ”。そして、序列1位、神髪瞬花の”神髪正統流槍術かみがみせいとうりゅうそうじゅつ”の3つの武術である。残る剣術を使う者はまだ見付けられていなかった。

 割天風は椅子に座ったまま長い髭を撫でて鵜籠を見た。


「して、澄川カンナ以外の反逆者は分かったか?」


「いえ、残念ながら。ただ、畦地まりかは反逆者共に捕まったと思われます」


「そうか。今のところ、反逆者は斑鳩爽(いかるがそう)と澄川カンナが確定。報告をして来ない外園伽灼も同類とみなす」


 割天風はそこまで言うと言葉を溜めた。


「ここからは儂の推測じゃが、(あかね)リリア、斉宮(いつき)つかさ、後醍院茉里、火箸燈(ひばしあかり)祝詩歩(ほうりしほ)篁光希(たかむらみつき)あたりも怪しい。こやつらには任務などでの繋がりがあるからのぉ」


「では、もう一度総帥直属の暗殺部隊を」


 割天風は鵜籠の言葉を手で制した。


「まりかが捕まったとしたら儂の計画が露呈している可能性がある。まりか諸共反逆者共を抹殺する。今は瞬花もすぐにでも動かせる状態じゃ。いいか、鵜籠。理事会メンバーに招集を掛けろ。その後、学園の掲示板に確定している反逆者である斑鳩爽、澄川カンナ、畦地まりか、外園伽灼を制裁すると貼り紙を出せ。執行人は理事会とする。念の為、今挙げた者達も監視しておけ」


 割天風は金の粒を3つほど机の上に置いた。


「御意!」


 鵜籠はその金の粒を拾うとすぐに部屋を出ていった。

 鵜籠には肝心な事は一切話していない。ただ少し(かね)を握らせればなんでも言う事を聞く。屑のような男だがそれでも使い勝手は良いのだ。

 割天風は窓の外を見た。


「澄川カンナ。役目はしっかりと果たしてもらうぞ」


 誰もいない執務室で割天風は呟いた。





 まりかは御影(みかげ)の天才的な外科手術を受けた。まりかの右手は酷く焼け爛れていたので皮膚の移植手術が必要だった。御影は最も信頼している部下である学園医療担当者の小牧(こまき)を呼び出し手術を行った。栄枝(さかえだ)とは連絡が取れず、その他の医療担当者も学園の息がかかっている危険もあったので小牧だけを助手として使ったのだ。御影の腕はまさに神業(かみわざ)でまりかの下半身の皮膚を移植する手術を行ったらしいが傷も全く気にならない完璧な処置をした。ただ、やはり何度か繰り返しの手術は必要で、まりかはしばらくは御影の保護下に置かれる事になった。

 リリアや燈の怪我はかなり浅いものだった為問題はなく、斑鳩の怪我もすぐに治療した為大事には至らなかった。意識もはっきりある為斑鳩は御影の部屋にまりかの監視も兼ねてしばらく滞在する事になった。

 その他のメンバーは怪しまれないように授業へはいつも通り出る事になった。


 朝、カンナと光希が授業へ行く準備をしているとつかさが慌てて飛び込んで来た。


「カンナ大変!!カンナと斑鳩さん、それに伽灼さんとまりかさんの制裁仕合をやるって掲示板に!」


 つかさの驚愕の情報にカンナも光希も声を出して驚いた。


「私と斑鳩さんと外園さん??畦地さんもなの!?」


「うん、それで制裁執行人は特定の生徒じゃなくて”学園理事会”って……」


「いよいよ学園も本気を出してきたって事なんだね」


 カンナが青ざめた顔で言った。


「大丈夫だよ、カンナ。私がずっと付いていてあげる。一緒に戦おう!!この際学園を倒して私達の理想の学園に作り替えようよ!」


 つかさが元気づけようと笑顔で言った。


「私も、カンナと一緒に戦います」


 隣にいた光希も言った。


「ありがとう。2人とも。なんか凄く力が湧いてきたよ!」


 カンナは2人の優しさに自然と笑顔になっていた。つかさはカンナがこの学園に来た時からずっと気遣い、助けてくれた。

 光希とは色々あったが、今となっては妹のような存在になっている。


「それじゃあ、とりあえず、御影先生達の所へ行こう!こうなったら授業なんてボイコットよ!!」


 つかさが言うとカンナと光希も頷き、御影の部屋へと向かった。



 これがきっとこの学園での最後の戦い。この戦いが終わってこの部屋に戻って来れるかどうかは誰にも分からない。

ただカンナは絶対に戻って来ると決めていた。この学園が大好きな仲間達と築き上げた”楽園”になる事を信じて。。。






神眼の女の章~完~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ