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序列学園  作者: あくがりたる
神眼の女の章
82/138

第82話~新たな事件~

新章突入です!!宜しくお願いします!

 学園に動きはなかった。

 光希(みつき)救出の任務を成功させカンナ小隊が帰還したのは学園を出発してから丁度1週間後の放課後だった。

 澄川(すみかわ)カンナ、斉宮(いつき)つかさ、後醍院茉里(ごだいいんまつり)火箸燈(ひばしあかり)篁光希(たかむらみつき)の5人は学園に帰ると任務完了の報告をする為に割天風(かつてんぷう)の執務室へ馬の背に揺られながら向かっていた。

 その途中でふと剣特の(あかね)リリア、祝詩歩(ほうりしほ)、体特の蔦浜祥悟(つたはましょうご)が出迎えてくれた。


「おかえり!みんな!無事で良かった」


 リリアは笑顔で挨拶をした。

 カンナ達の帰還は前もって茉里が伝書鷹の滝夜叉丸(たきやしゃまる)で学園へ報告していたのだ。


「ただいま!無事任務完了しました!」


 カンナが笑顔で報告した。

 すると蔦浜が堪らずカンナに近付いてきた。


「良かったー!無事に帰ってきてくれて。1週間もカンナちゃんに会えないと調子狂ってしょうがなかったぜ」


 蔦浜は鼻の下を伸ばしながら満面の笑みを浮かべた。


「蔦浜君、カンナに気持ち悪いこと言うな。カンナに気持ち悪い顔見せるな」


 つかさが不快そうに蔦浜に棒を向けた。

 茉里と光希も蔑む目をしていた。

 しかしカンナは3人を手で制した。


「ありがとう蔦浜君。そう言ってもらえると嬉しいよ」


 カンナの優しい言葉に蔦浜は感激してさらににやにやとしていたがそのカンナの対応を見たつかさ達は驚いていた。


「嗚呼カンナちゃん!なんて優しい事を言ってくれるんだ!!どっかの誰かとは違うなぁ!!今俺は猛烈に君を抱き締め」


「それはダメ」


 カンナの即答に肩を落とす蔦浜をリリアは肩に手を添え優しく慰めた。


「それより、私達、これから割天風総帥の所へ報告に行くついでに学園と青幻(せいげん)が繋がっていたことを問い詰めようと思うの」


 カンナは先の任務で分かった事をリリア、詩歩、蔦浜の3人に共有した。3人とも驚いた様子は見せず不安が的中したかのような様子だった。


「今は報告だけにしておきなさい」


 どこからともなく長い髪を風に靡かせた御影(みかげ)が現れた。


「御影先生」


 突然現れた御影はまず小隊全員に(ねぎら)いの言葉をかけた。


「光希ちゃんも無事で良かったわ」


「あの……皆さん、ご迷惑をお掛けしてすみませんでした」


「もう悪い事しちゃ駄目よ」


 御影は光希の頭を撫でた。


「はい」


 光希は大きく頷いた。


「青幻の件を問い詰めるのはもう少し待って。状況が変わったの。総帥に帰還と任務完了の報告を済ませたら私の部屋に集まってくれる?」


 御影が真剣な眼差しで言ったのでカンナは頷いた。

 御影の様子がいつもと違ったのでカンナは疑問に思ったが、とりあえず割天風へ報告をしにつかさ、茉里、燈、光希を伴って執務室へ向かった。



 割天風の執務室を訪れたカンナ達は側近の畦地(あぜち)まりかによって中へ通された。

 光希は自分の捕虜殺しの罰を気にしているのか浮かない顔をして俯いていた。


「お帰りなさい!みんな!光希ちゃんも無事に戻って来れて良かった!任務成功ね!おめでとう!」


 まりかは満面の笑みでカンナ達の労を労った。しかし、まりかのその笑顔と言葉を信じる人間はここにはいなかった。もともとまりかは水音(みお)と共に光希も殺そうとしていた女なのだ。白々しいにも程がある。


「はい、ありがとうございます」


 カンナはまりかを一瞥(いちべつ)しただけで無表情で返事をした。

 まりかはそっけない返事をしたカンナに苛立ったのか、笑顔のままだったが顔が引きつっているように見えた。

 改めてカンナは割天風に任務完了の報告をした。

 割天風は椅子に座ったまま大きく頷いた。


「ご苦労じゃった。してお前達。青幻が何故篁光希を連れ去ったのか、その理由は何か分かったか?」


宝生(ほうしょう)将軍とお会いして、解寧(かいねい)の復活と復活した解寧の力で死者の軍勢を蘇らせること……ではないかと聞いていました。実際に解寧は光希の身体を一時的に乗っ取り復活してしまいましたが、なんとか死者の軍勢を蘇らせる前に倒す事が出来ました」


 カンナは事実のみ報告した。

 割天風は軽く頷いた。

 まりかは笑顔を消し腕を組んで割天風の横に立っている。カンナの話にまったく反応がない。やはり割天風もまりかも解寧の野望を知っていたのだ。


「良くやってくれた。これで青幻の思惑も崩れたと言うわけじゃな。あの若造め。舐めた真似をしおって」


 言った割天風の隣のまりかは先程からずっとカンナを見ていた。

 カンナがそれに気付きまりかと目が合っても目を逸らそうとしない。

 カンナは恐怖を感じた。この女だけはどうしても身体が避けたがる。


「青幻の居場所は以前の久壽居(くすい)からの報告で特定出来た。大陸側の”焔安(えんあん)”という街じゃ」


「分かってるなら、さっさと青幻を潰しに行きましょうよ!!何でこっちから行かないんですか!?」


 燈が言った。

 カンナ達はハッとした。あまり余計な事は言わないでほしい。


「我々は一学園に過ぎない。軍隊ではない。青幻は今や軍を所有している。それならば青幻をどうにかするのは久壽居達帝都軍の仕事じゃ。それに多綺響音(たきことね)が動いているじゃろ?個人的な恨みがあるのなら響音のように個人でやれば良い。……と、今までは思っておった」


 意味深な言い方にカンナ達は眉を潜めた。

 相変わらずまりかは無表情でカンナを見ている。


「今回のように再び学園の生徒を狙い、解寧の復活という大仰な事をしようとした。もはやこちらも黙って見ていては今後も学園が狙われかねん。ならばいっそのこと青幻を撃滅してしまおうと、理事会で決定がされた」


「……と、言うと、学園から青幻の軍を滅ぼす為に師範や生徒を派遣する……って事ですか?」


 つかさがおそるおそる割天風に質問した。


「そうじゃ」


「でも青幻の勢力は先程も総帥が仰ったように軍隊のそれ。国家の建国も可能なレベルの強大な勢力と聞きます」


 つかさが言った。


「話によると、青幻の軍勢はおよそ1万。そして密かに青龍山脈の蔡王(さいおう)瀋王(しんおう)の兄弟とも繋がっており、ゆうに1万5千を超えるでしょう」


 茉里が響音からの情報を述べた。


「確かにそんな勢力じゃ、学園がどうこう出来る問題じゃないか……あ!!もしかして、総帥なら1万人の敵相手に同等かそれ以上の力を発揮出来るんじゃ」


「流石に無理じゃ」


 燈の発言に割天風はすぐさま否定した。


「どんなに強い人間でも1万人の敵を1人で相手に出来る人間などおらん。考えているのは主要幹部の暗殺じゃ」


 ”暗殺”という言葉にカンナ達は息を呑んだ。


「割天風先生。先の任務で青幻の幹部と闘ったのですが、序列10位の私の力でも倒すのがギリギリでした。それこそ、もっと上位の生徒を派遣しないと」


「序列1位を使う」


 カンナ達はもちろん、隣にいたまりかまで驚き絶句した。

 都市伝説とまで呼ばれたあの女を使うというのか。やはり存在していたのだ。しかし、ここに来て序列1位を使うとは割天風も本気という事なのだろう。となると、青幻と繋がっている話はどうなるのだろうか?訳が分からなくなった。

 カンナは今すぐ青幻との繋がりを問いただしたかったが御影の話も気になったので口には出さなかった。


「まあひとまずお主らは休め。茉里も燈も怪我をしているようだからな。それと、篁光希、お前の捕虜殺しの罰だが、今回は特別に理事会の決定で減刑が決まった。一週間の全寮の厩舎(きゅうしゃ)の糞尿の始末。そして、今後学園の発展の為にその力を大いに活用すること」


「ご慈悲感謝します」


 光希はその減刑に驚いた様子だったが割天風に深く頭を下げた。

 割天風が喋り終わると目を閉じてしまったのでカンナ達は一礼して部屋から出て行った。

 まりかは(あご)に手を添え何か考えているようだった。





 カンナ達は御影の部屋に集まった。

 部屋には御影を初めリリア、詩歩、蔦浜の姿もあった。

 茉里と燈は御影に会うとすぐに傷の具合を診てもらった。響音がしてくれた応急処置の後新たに久壽居の軍医に処置し直してもらったので化膿したりはしていなかった。

 御影は改めて傷の手当てを始めた。


「御影先生、状況が変わったとは何でしょうか?悪い話ですか?」


 カンナが茉里の太ももの怪我を手当している御影に聞いた。


斑鳩(いかるが)君が学園に捕えられたわ」


 御影は手を止めずにカンナの質問に答えた。


「え!!?」


 カンナ、つかさ、茉里、燈、光希の5人は声を出して驚いた。

 リリアと詩歩、そして蔦浜は知っていたのか特に驚いた様子はない。


「どういうことですか?御影先生」


 カンナは心が乱れるのを感じた。拳に力が入った。怒り。学園に対する怒りが込み上げてくる。


「落ち着きなさい。私はカンナちゃんが穏やかでいられないと思ったから、総帥への青幻との関わりを問いただすことをやめさせたのよ」


 御影は茉里の太ももに薬を塗り包帯を巻き直しながら言った。

 カンナは一度目を閉じて深呼吸した。


「牢番の鵜籠(うごもり)の所に斑鳩君が乗り込んだの。直接鵜籠から色々聞き出そうとしたのね。でもそこには数人の護衛がいて戦闘になった。まあ斑鳩君の事だからそんな護衛くらい簡単に始末したんだけど、もう1人いたのよ」


「もう1人……?」


 御影が言葉を溜めたのでカンナは唾を飲んだ。


「畦地まりか」


 その名を聞いたカンナは突然部屋から出ようとした。咄嗟につかさとリリアがカンナを抑え部屋の中へ引き戻そうとした。


「ちょっと!落ち着いてカンナ!!どこ行くのよ!?」


 つかさがカンナに語りかける。


「あ、あの女がぁぁ!!斑鳩さんを!!」


 普段のカンナからは想像もできない程取り乱し激昴した姿を見て燈、蔦浜、光希もカンナに近付いてきた。


「カンナ、落ち着いて。あなたらしくない」


 光希がカンナの手を握り冷静に(いさ)めた。

 するとその様子を見たカンナはようやく落ち着きを取り戻し部屋の中へ戻り椅子に座った。


「ごめんなさい。続けてください」


 カンナは取り乱した事を謝罪すると俯いた。


「カンナちゃん。大丈夫?」


 御影が心配して聞いた。


「大丈夫です」


 カンナも落ち着いたようなので御影はまた話を続けた。


「斑鳩君はまりかちゃんと戦闘になったんだけど、さすがの斑鳩君も格上のまりかちゃんには適わなかった。鵜籠を捕えられず、斑鳩君はまりかちゃんに連れて行かれ拘束された。そして後日、その事が学園から公表されたの」


 なるほど、だから学園にいたリリアや詩歩、蔦浜はその事を知っていたのか。

 カンナは肩を落とした。


「光希の次は斑鳩さんか……」

 

 燈が腕を組んで言った。


「カンナ、斑鳩さんはまだ生きてるわ。殺されたわけじゃないのよ。だから私達で助け出す方法を考えましょう?」


 リリアはカンナに優しく話し掛けた。

 カンナは何も言わず頷いた。


「今下手に動けば捕らわれている斑鳩君の身に危険が及ぶかもしれないわ。はい、次、燈ちゃん」


 御影が茉里の手当てを終え燈の手当てに移った。


「監禁されてる場所は、分かってるんですか?」


 カンナが俯いたまま言った。


「公表されている話だと鵜籠が牢番をしている地下牢よ」


 カンナが立ち上がった。


「待ちなさい。カンナちゃん。場所が公表されているということは、罠かもしれないわ。いえ、十中八九罠ね。助けに来た人を仲間として一網打尽にするつもりだと思うわ」


「じゃあどうすれば!?」


「畦地まりかを捕まえましょう」


 御影が不敵に笑った。


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