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後編

奴隷生活の先にあるものとは?

幸せの感じ方は人それぞれ異なるようです。

 奴隷契約の儀式と、物々しく脅かされたけど、終わってみるとやはり結婚式のような気がする。

 まあ前の世界でも結婚した男なんて家庭の奴隷みたいな感じだったね。

 妻帯奴隷とはよく言ったもので、専業主婦の所に入り婿した会社の先輩は亭主元気で留守がいいってな感じで尻に敷かれていたね。

 それに後からテイルに聞いた話だけど、この世界には奴隷契約による結婚という形もあるようで、将来を誓い合った恋人達の片方の親戚が謀反などの大罪に問われた時、愛する二人を引き裂くのは忍びないと、このような結婚をするそうだ。




 儀式が終わったあとの帰り道の最中、テイルの背中で揺られながら、そんなことを考えていた俺だったが、屋敷に戻るなり、寝室に軟禁された。

 部屋から一歩も外に出して貰えない。

 そして俺は昼夜の境もなく、そして拒否権もなくテイルに色々と奉仕させられた。

 ケンタウロスの血を引くテイルには人間の俺では腕力では逆らえない。

 もう、されるがままだ。

 程なくテイルは俺の子をみごもることとなった。


 テイルの妊娠を聞きつけた人々は、流石は異世界から来た勇者と、皆、俺を褒めてくれたが、それってどうよって、聞いた瞬間、思った。

 しかし、話を良く聞くと、元来、ケンタウロスは異種族との間に生まれた子が子孫を儲けづらいのだそうで、テイルのような混血児は忌み嫌われていたらしい。

 馬とロバの合いの子のラバに子供が生まれないこととまでは行かないが、それに近い感じらしく、テイルを懐妊させた俺は再び英雄扱いされることになる。

 とは言え、普段の生活としては俺は元勇者でテイルは元従者、王の面前の公的な場ではテイルが準士爵で俺が御付きの奴隷という関係に変化はなかった。

 そんな暮らしのまま、季節は移り変わって行く。


 そして軟禁奴隷生活も一年を迎えようとした頃、俺達の第一子が生まれた。

 女の子だったのでエリザベスと名付ける。

 良い名前ねと、テイルは喜んでくれて名前の由来をしつこく聞かれたのだが、競馬の開催名だと教えると激怒しそうなので教えなかった。

 なお、その子は見た目普通の人間の子供だったが、ペガサスの血を引いているため、背中に羽が生えている。

 まるで天使のような姿であり、パパーと言って俺の胸に飛び込んでくるのを抱きとめた瞬間、俺は異世界に連れてこられて正解だったと感涙にむせるのであった。


 さらに一年後には二番目の子が生まれた。

 テイルに良く似たケンタウロスの女の子だ。お尻も大きく元気な子で、百万馬券の馬にあやかってマクリーンと名付けた。

 当然、テイルには馬の名前だなんて言えなかったが、その馬が俺とテイルを結んでくれたと思うと、その名前を付けてあげたかったのだ。

 話は変わるが。この子は残念ながら羽は生えていなかったが、ペガサスの血を引いているため、宙を蹴ることができた。

 つまり足踏みさえ止めなければ宙を駆ける続けることができるのだ。

 尤も長い時間は辛いようで数秒が限界のようであるが、自由に空を飛べるエリザベスと意地を張り合っており、エリザベスが俺の胸に飛び込むと、必ず、背中に飛び乗ってくる。

 時には肩に飛び乗ってくるので肩車状態になるが、ケンタウロスの子を肩車するのってバランス取るのが難しくって、結構、苦しいんだよ。

 まあ、幸せに包まれた苦しみではあるけどね。


 次の一年後には三番目の子が生まれた。

 今度は男の子だった。この子はギリシャ神話にでてきそうな上半身は人間で下半身は馬の半人半獣といった感じで、羽は生えていなかった。

 でも、この子も宙を駆けることができるようであり、男の子だけあって結構ヤンチャで柵を乗り越えて勝手に屋敷の外に出ようとするので目を放せない。

 真っ赤なスポーツカーのエンブレムにあやかってカヴァランと名付けた所為かもしれない。 将に跳ね馬だ。勿論、テイルには内緒の話だけどね。

 でも、元気がいいのはよいことなので、スクスクと育って欲しいと思う。


 そして、今年は四番目の子が生まれたのである。

 男の子であったが、羽も馬の蹄もなかった。

 どこから見ても人間の子供と変わらなかった。

 化け物のような姿でなかったことに安堵した俺だったが、

 俺に似て特殊能力がないことでロリばばあの機嫌を損ねないか、不安で夜も眠れない。

 今回は名前を付けている余裕など俺には無かった。

 そんな気持ちを抱きながら、今日、ロリばばあのところへ出産の報告をしに一家揃って登城したのだった。




「おー、おー、可愛い赤子じゃのう。そーれ、高い、高い」

 ロリばばあはニコニコ笑いながら四番目の子をアヤしてくれている。

 それを見て俺は内心ホッとした。

「子を孕みにくいペガタウロスを、こうも容易く連続四回も種付けに成功するとは、勇者のラッキースケベ能力、侮り難し」

「パパ、種付けって何?」

「ラッキースケベって何?」

 ロリばばあがボソッと俺の能力について感想を漏らす。

 一応、俺にもチート能力があったんだ、なんて思っていると、エリザベスとマクリーンが無垢な瞳で、ロリばばあの言葉の意味を聞いてきた。

 俺は返答に窮してしまう。


「陛下。子供達の前で変な言葉を使わないでください。教育上よくありません」

「すまぬ。今のはワラワが悪かった。許せよ」

 俺は言葉を選びながらも、ロリばばあを語気を強めて非難すると、バツが悪そうに謝ってきた。

 色々と無茶苦茶し放題なロリばばあでも一応、常識はあるようだ。


 そして俺は話の流れを変えるべく、心に浮かんだある疑問について質問してみることにした。

「陛下、一つ、伺っても宜しいでしょうか?」

「なんじゃ?申してみよ」

「俺の子だと、如何あがいてもペガタウロスにはなりませんよ。ペガタウロス軍団は諦めるたのですか?」

 俺は恐る恐る、ロリばばあにペガタウロス軍団について聞く。

 俺とテイルの子が空を飛ぶ羽と自由に動かせる両腕と大地を蹴る四足を持ったペガタウロスとして生まれてくるなんてありえないし、事実、生まれてきた子はそうではなかった。

 生まれたきた我が子が責められてはかなわない。

 俺は諦めたと言ってくれと願いながら、ロリばばあの真意を聞いたのだった。


「何を言うておる。ペガタウロス軍団は子や孫の代ではのうて、もっと先で充分じゃ、愚か者。まずは子を沢山つくることじゃ。そしてペガタウロスが種として確立し最強軍団を編成することができるのは七代目くらいからであろうのう。ソチも、もっと百年二百年のスパンで物事を見据えて気長に構えるようでなければ貴族社会には溶け込めんぞ」

 ロリばばあは鼻で笑いながらすこし呆れたような顔をする。

 諦めていないようだ。

 でもペガタウロス軍団は今すぐでなく七代くらい先でいいと教えてくれた。

 俺の役目はテイルの子供を沢山作ることのようだ。

 まあ、それについては俺もテイルも嫌いではないので大人しく従ってもよいだろう。

 僕は少し安心し胸を撫で下ろした。


「上流社会は肌に合わないので、俺はテイルの奴隷のままでいいですよ」

「かっかっかっ。ソチは無欲じゃのう。大体、異世界の勇者といえば、チート能力で魔王を倒した後、見たこともない変哲な物を売って金儲けしながら、その金で女を数十人単位で囲うのが習わしだったのじゃが、ソチはそんなことをせず、ノンビリと子供と遊び呆けていると噂になっておるぞ。とんだ変わり者の勇者じゃ」

 しかし、教えてくれるついでにロリばばあは厭味を言ってきたので、俺は拗ねて貴族でなくテイルの奴隷で良いと答えた。

 するとロリばばあが笑いながら、過去の勇者達と比べて俺の無能振りを指摘し始める。

 勇者は前の世界の物を持ち込んで荒稼ぎしてたようで、ロリばばあは今度はそれを俺に期待しているみたいだ。

 しかし、そうは問屋が卸してなるものか。俺はカヴァランとエリザベスを抱き抱えると、すかさず甘えん坊のマクリーンが俺の肩に飛び乗り、肩車をさせらる。

 そして俺は、子供達を武器にしてロリばばあに心の思いを言い放った。


「ええ。そんな欲は払い戻し期限が過ぎた百万馬券と一緒に向うの世界に置いてきました。俺にはこの子達がいれば十分ですよ」

「かっかっかっ。そうか、そんな欲はないと申すか。この度の勇者はほんに勇者らくない勇者じゃ。テイルよ、偏屈な勇者が心変わりせぬよう、これからもしっかりと見張っておくのじゃぞ。他国は本より元の世界に帰られては折角の勇者召喚が台無しになってしまうのでな」

「御意にございます。昼夜を問わず、見張り続ける所存にございます。エリザベス、マクリーン、アナタ達もパパを見張るの手伝ってちょうだい」

 俺の答えを聞いたロリばばあは再び大笑いをした。

 そしてテイルに見張りの役目を仰せ付けると、テイルは恭しく一礼して了承し、エリザベス達にも手伝うように言った。


「はーい、パパがお馬さんのところに行かないように、見張りまーす」

 俺に抱き抱えられたエリザベスが手を上げて、馬のところに行かないように見張ると言い出す。

 テイルめ、陰でどんなふうに俺のことを言っているのか、知れたもんじゃない。


「パパはどこにも行かないよ。ずーと、みんなと一緒だよ」

 俺はマクリーンの後ろ足を抱き締めるように脇でギュッと挟みながら、エリザベスとカヴァランに頬擦りする。

 どこにも行かないよ。前の世界にも帰りたいとも思わない。みんな一緒さ。

 だって大事な家族だもの。

 そんな思いが伝わったのか、エリザベスとカヴァランは笑い始める。

 勿論、俺の頭上のマクリ―ンも笑っている。

 それを見ているテイルとロリばばあとロリばばあにアヤされている我が子も笑っていた。


 この笑顔を見ていると異世界の奴隷生活も捨てたもんじゃないなと、俺は思うのであった。


如何だったでしょうか?

感想など頂けると幸いです。


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一読頂ければ幸いです。

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