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前編

テイルにお説教されているシヨータであった

「馬に乗れない準士爵って、可笑しいと思わないか?」

「思いません。馬に乗っている勇者の方がよっぽど変です。勇者にはケンタウロスときまっています」

 俺は準士爵の職務を全うするためにもテイルに馬に乗る練習の許可を求めたのだが、黒いオーラを放つテイルはジト目で僕を見降ろしながら即時却下する。


「俺はもう勇者を辞めたんだよ。これからは準士爵として暮らして行くためにも馬くらい乗れないとハクがつかないよ」

 ドンッ!

 俺は馬に乗れないと準士爵と認められないとテイルを説得しようとしたが、テイルは無言のまま前足で壁を蹴った。

 蹄が俺の顔のすぐ横の壁にめり込んでいる。何時もながらテイルの壁ドンは迫力があるね。

 オシッコちびりかけた僕は愛想笑いで誤魔化そうとした。


「馬はダメです!元勇者としての誇りを持ってください!」

 情けない僕の愛想笑いにイラついたのか、コメカミに青筋を立てたテイルが真顔で怒っている。でも思わず惚れてしまいそうなくらい真剣で凛々しい顔だった。


「でもさ、ここにはケンタウロスはテイルしかいないじゃないか。俺の従者を続けていると、いつまでたってもお嫁に行けないだろ。俺はテイルが子供と一緒に天を駆け巡っているところを早く見たいんだよ」

 この前、別なケンタウロスの若者の背に乗ろうとしたら猛然と怒られた件を思い出し、それじゃテイルに乗ることしかできないじゃないかと、俺は心の中で悪態を吐きながらも、ぐっと堪えてテイルに早く子を産んで欲しいと優しく諭すようにお願いした。


「だったらショータ様との子がいいです。勇者様との子供ならケンタウロスの村人全員に祝福して貰えますから」

「うっ、無茶言うなよ。俺との子だったらペガタウロスにはならないよ。王からペガタウロス軍団を作れと厳命されているんだぞ」

 すると調子に乗ったテイルは俺の子がいいとニッコリ笑う。

 俺はその笑顔に思わずドキッとしてしまった。

 確かに俺との子供であれば混血児でもケンタウロスから祝福されるだろう。

 しかし俺の子供では翼の生えたケンタウロスになることはなく、それは王から王から命ぜられたペガタウロス最強軍団の編成とは相容れないことにもなる。

 俺はテイルの要求を断わることしか選択肢がなかった。


「ショータ様は、私とペガタウロス軍団とどちらが大切なのですか?」

「それはテイルだよ。テイルに幸せになって貰いたいから、こうして花嫁修業にも付き合っているんだぞ」

 ペガタウロス軍団の話を蒸し返されたテイルは急に不機嫌そうな顔になり、テイルとペガタウロス軍団の究極の選択を俺に突き付けてきた。

 俺は即座にテイルだと答える。それを聞いたテイルは満足そうに頷いてくれたので、俺は内心ホッとした。


「それなら、花嫁修業の一環として房中術の練習にも付き合ってください。房中術で殿方をコントロールできなければ立派なレディとは言えませんから」

「いやいや、それはさすがに拙いだろ。君を傷物にしたくない」

 再び機嫌の良くなったテイルは、房中術の練習に付き合えと俺に迫ってきた。

 やばい。このまま押し倒されそうな勢いだ。

 ケンタウロス相手に騎上位なんて押し潰されちゃうぞ。ケンタウロスの腹の下で腹上死した勇者なんて物笑いの種だよ。

 俺は適当な言い訳で誤魔化しながら後退りする。


「私、魅力ないですか」

「そんなことはない。テイルは凄く美人で素敵だよ」

「私が、ケンタウロスとペガサスの混血だから嫌なのですか」

「そんなこと関係ない。……だけど。生まれてきた子供達の将来を考えると、僕が君の夫の資格があるとは思えないんだ」

「……」

 俺が逃げる度にテイルは悲しそうな顔をしつつもにじり寄った。

 そして、魅力がないからなのか、ケンタウロスとペガサスの混血児だからなのかと逃げる理由を追及してくる。

 俺はそれを首を横に振りながら否定する。本当にそんなことは気にしていない。

 ただ気になるのは生まれてくるであろう子供のことだ。

 僕との子供だとペガタウロスというのは無理な話だし、ペガサスと人間の遺伝を受け継いだ時のことを考えると、ちょっと悩んでしまう。

 上半身がペガサスの馬の恰好で下半身が人間ってことになると、出来そこないのモンスターになっちゃうよ。

 そんな気持ちをオブラートに包んでテイルに語りかけたのだが、テイルは俯いて黙りこくってしまった。

 暫し気まずい時間が流れる。


「なあ、テイル。俺、準士爵を辞めて独りで旅に出ようと思うんだ。ちょっと独りになって君との関係を見つめ直したいんだ」

「……そ、そんなに私の存在が邪魔なの!ショータのバカ!」

「テイル!」

 俺は思い切って、自分の気持ちを整理するために独り旅をするつもりであることをテイルに伝えたのだが、それを聞いたテイルは大粒の涙を流しながら大空へと駆けだした。

 俺は慌ててテイルに飛び乗り、しがみ付く。


「何よ、無理矢理、私に飛び乗って。重いから降りてよ、このケダモノ!」

 テイルは俺を振り落とそうとやっきになっている。

 俺は振り落とされないようにテイルにしがみつく。

「テイル。落ちついて俺の話を聞いてくれ」

「うるさい!触るな!バカ、変態、スケベ!」

「あっ」

 テイルが思いっきり飛び跳ねた時、俺はバランスを崩して振り落とされた。

 地上八百mの高さからのスカイダイビングだ。あっという間に地上が迫ってくる。

 勇者とは言え助からないだろうな。しかも元々なんの能力もない俺だから。


 激突すると思い目を瞑った瞬間、俺はテイルに抱えられていた。

 間一髪、助かったのだ。

 そしてテイルは無言のまま屋敷に帰ると自分の部屋に籠ってしまった。

 テイルの部屋から泣き声が聞こえてくる。今日の所は、そっとしておこう。





「テイル、腹減った。ご飯にしようよ?」

「……」

 あくる日もテイルは部屋に閉じこもっていた。

 呼びかけても返事がない。

 しかし、悠長に構えていられなかった。今日は王宮へ登城し、ロリばばあに謁見する日だったのだ。

「ちょっと王宮へ行ってくる。ザグリーヴ卿のところで馬車を借りて行くから心配しなくていいよ。夕方までには戻って来るからね」

 俺は自分独りで身支度をし終え、テイルに今日の予定を伝えて屋敷を出る。

 取り敢えず、近くに住む貴族の屋敷で馬車でも借りて王宮に行くことにした。




 王宮に登城した俺は、謁見の間にていつも通りに跪き、ロリばばあに謁見する。

「ペガタウロス軍団の首尾はどうじゃ?順調か?テイルも元気にしておるか?ちゃんと可愛がっているかえ?」

 ロリばばあは少しニヤケた顔でペガダウロス軍団やテイルのことを聞いてきた。

「その件で、お話があります。その役目、俺には荷が重すぎます。おろさせて下さい」

「何を戯けたことをいっておるのじゃ?第一、テイルはその件を承知しておるのか?」

「昨日、伝えました」

 ロリばばあの含み笑いが癪に障るのを俺は堪えながら、単刀直入にペガタウロス軍団の任を辞退した。

 すると、ロリばばあは急に真顔になって、テイルは承知しているのかと聞いてきた。

 ロリばばあはテイルが認める訳がないと踏んでいるのであろう。

 確かに承諾は貰えていない。しかし説明はした。

 すこし汚い気がしたが俺は自分に有利な事実を述べることにする。


「そうか。ソチは、ワラワの命令を聞けぬと申すのじゃな?」

「平にご容赦を。準士爵は返上いたしますのでご勘弁ください」

 ロリばばあはムッとした表情のまま、最終確認をしてきた。

 引き返す最後のチャンスだとロリばばあの目は言っている。

 しかし、平身低頭の俺は平伏して許しを請うことしかできなかった。


「この者をひっ捕らえよ。我が命に背く反逆者じゃ。牢にぶち込んでしまえ」

「ガシャーン!」

 そんな俺をロリばばあは許す訳もなく捕縛の命が下知された。

 兵士が俺を取り囲もうとした矢先、窓から何かが飛び込んでくる。

 俺は捕まってなるモノかと剣をぬいて身構えようとしたが、あっさりと首根っこを掴まれてしまった。

 勇者のハシクレとはいえ無様である。格好悪すぎるね。


「ショータ様、助けに参りました」

 しかし、それはテイルだった。

 しかし今日はメイド服でなく、昔、見慣れた鎧姿だ。

 俺を助けに来たようで、俺の首根っこを掴で後ろに放り投げるように背中に座らせてくれると、大広間の高い天井を駆け巡りながら脱出の隙を伺っている。


「テイル、俺を下してくれ」

「今、下に下すと捕まってしまいます」

「いいから下してくれ。俺に考えがあるんだ」

「……」

 俺はテイルに下すようにお願いするが、テイルは何を馬鹿なこと言っているのと言った目付きで取り合ってくれない。

 しかし俺は真っ直ぐにテイルを見つめて説得すると、渋々、テイルは床に着地してくれた。


「これはどういうことじゃ。ショータ、説明せい」

「陛下の命令に背いたのは俺だけでテイルは忠実に命令を実行しペガタウロス軍団編成に向けて準備ておりました。重責に音を上げて国外に逃げようとしていたのは俺だけですので、俺だけ罰して下さい」

「何を言ってのよ。私もついて行くから。独りで行くのは認めないからね」

「いいから黙ってろ」

「黙ってろとはどういうことよ!ふざけないでよ!」

「煩ーい!ワラワが質問しておるのだぞ。私語は慎め!」

「「……」」

 着地した俺達は片膝をついてロリばばあに頭を下げると、ロリばばあが俺を詰問してきた。 俺はテイルに罪が掛かっては拙いと思い、独りで逃げようとしていたのだがら俺だけを罰するよう言った。

 するとテイルが猛剣幕でついて行くと言い始めた。

 全くもって台無しである。慌てて俺はテイルを黙らせようとしたがテイルは大人しくしているはずがなかった。俺に言われたことを百倍にして返そうとしている。

 そして俺達は見るに見かねたロリばばあに大声で一括されてしまう。そうなると、俺達は黙るしかなかった。


「ショータよ。ソチは準士爵を辞退して国外逃亡を企てていたのだな?」

「はい」

 まず、ロリばばあは俺に事実確認をしてきた。

 俺は逃げる算段をしていた事実を認める。


「テイルよ。ソナタは、ショータが独りで国外逃亡する計画を認めたのか?」

「そんなもの認めるわけありません!」

 そしてロリばばあはテイルにも俺の逃亡計画を認めたのかと確認する。

 確認する時に俺独りでと強調するものだがら、テイルは怒ったように否定した。


「分かった。やはり罰するべきはショータのみじゃ。ショータのに与えた爵位は剥奪することにする。そしてそれをテイルに授与することとする。テイルよ。引き続きペガタウロス軍団の編成に尽力するように」

「そんな爵位、要りません!」

 するとロリばばあは満足そうに笑みを浮かべて、俺を罰すると結論づけた。

 そして俺の爵位はテイルに授け、それをエサにペガタウロス軍団を承諾させるつもりのようである。

 しかし、テイルは間髪入れず、要らないと断る。

 まずい。テイルまでロリばばあの逆鱗に触れるのではないかと思うと、俺は気が気ではなかった。


「ふっ。要らぬと申すか。貴族の責務には領地内での犯罪の裁判や罪人の懲罰というものがあるが、ショータという小悪人の懲罰をソチ預かりにしてやってもよいのだぞ」

「懲罰?」

 テイルの返事をロリばばあは鼻で笑う。

 そして貴族の仕事のことを説明し始め、具体例として俺の懲罰を挙げてテイルの翻意を促そうとする。

 汚い。卑劣だ。俺をダシにテイルを懐柔するつもりか。

 俺の懲罰と聞いてテイルも心が揺ら着始めているようだ。


「そうじゃ、準士爵を受けるのであれば、ショータを思いのままに懲らしめることができるというわけじゃ。煮て食おうが、焼いて食おうが、はたまた性奴隷として慰み物にしようがソチの勝手にするが良い」

「……性奴隷」

「……テイル?」

 さらにロリばばあはテイルに追い打ちを掛ける。

 ロリばばあは俺の生死与奪の権利を与えるとテイルを揺さぶっていた。

 俺のことで心を痛めているテイルに対して申し訳なく思い俯いてしまう。

 どうにかしてやめさせようと思うが上手い手立てが思いつかない。

 でも、そうこうしているうちに事態が進展し始めた。

 それはロリばばあが発した性奴隷と言う言葉を聞いた途端、テイルの目付きが変わったのだ。

 口元がニヤけている。テイル、涎を拭いたほうがいいぞ。

 なにかよからぬことを考えているみたいだ。

 そう思った俺は自分の世界に浸り始めたテイルに呼びかけたが返事が返ってこない。


「陛下、ショータの懲罰、このワタクシメにお任せください。陛下に減らず口を聞くことのないようキツく、お仕置する所存にございます」

「テイル、何を考えているんだ?」

 俺の心配をヨソにテイルはロリばばあの提案を快諾する。

 目が血走っており、口元に笑みがこぼれているね。

 俺にお仕置するって、何企んでいるだよ。俺は不安になってテイルに小声で問い掛けた。


「テイルよ。こやつ、まだ自分の立場を理解しておらぬぞ。一度、奴隷の身分に落とした方がよいのではないか」

「御意にございます」

 俺を無視して、時代劇に登場する悪徳商人と悪代官のような顔をしながらロリばばあとテイルはアイコンタクトで頷き合っている。

 俺の処分について思惑が一致したようだ。


「では奴隷契約の儀式を今から行う!皆の物準備せい!」

「「はは!!」」

 ロリばばあが奴隷契約の準備について家臣に号令をかけると、皆、蜘蛛の子を散らしたように謁見の間を後にした。

 俺とテイルとロリばばあの三人だけ取り残される。

 俺、どうなっちゃうんだろう。

 そして目付きのいってしまったテイルのことも気掛かりであった。


次回、奴隷契約の全貌が明らかに



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一読頂ければ幸いです。

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