新しい母親 2
自分の身長よりも遙かに大きい天井付近まである本棚を見上げている星の隣りに行ったつかさが声を掛ける。
「どう? 星は何か良い本見つかった?」
「うーん。まだ、どれも良くて……」
難しい顔で手に持っている本を見つめている星。
それを不思議そうな顔で見るつかさが言った。
「なら、全部買っちゃえばいいんじゃない?」
その発言に驚いたように目を丸くした星につかさが言葉を続ける。
「全部良いなら全部買っちゃえばいいのに。持てる分だけ持って、後は郵送して貰えばいいんじゃない? 星の家はお金持ちでしょ? どうして買うのを選ばないといけないの?」
不思議そうに小首を傾げているつかさの表情からは本気で言ってることがうかがえる。悪意のないその瞳に、星はなんて言えばいいのか分からなくて困っていると……。
「つかさちゃん。確かに欲しいものを全部買えばいいのかもしれないけど、本当の宝物って何個もないでしょ? 星は本当に欲しい宝物を探しに来てるのよ」
「……なるほど。星は本が大好きだもんね! なら、僕も星の宝物探しを手伝うよ!」
「うん。お願いします」
エミルの話を聞いたつかさは真剣な瞳で星の瞳を真っ直ぐに見つめてぐっと両手を握り締める。星もそんな真剣なつかさに気圧されながらも小さな声でそう言った。
「よし!」
頷いて駆けて行くつかさは近くの本棚から本を3冊ほど抜いて重ねると、星の方へと持ってきた。
「星! これとかどう?」
「ちょっと見せて下さい」
星はつかさの持ってきた本を順番に手に取ると中身を開いて確認する。
しばらく中身を吟味した結果、首を左右に振ったのを確認してつかさは本を拾い集めて重ねると、元々あった場所に本を戻してまた本棚から本を抜き取って星のところに持って来る。
これを何度も繰り返して星は候補を5つに絞った。だが、数時間悩んで決めた5冊だ、どれも甲乙付け難い。
そこでエミルが悩んでいる星に声を掛けてきた。
「あと5冊だし、もうこれ全部買っちゃったら?」
エミルの提案に星は首を振ると。
「いえ、せっかくなのでつかさちゃんが決めて下さい」
「えっ!? 僕が決めるの!?」
これに驚いた声を上げるつかさに星は小さく頷く。
「えぇ……でも、僕と星の好みは違うと思うし……」
「大丈夫です。もう私が選んでますし、それに……つかさちゃんに選んで欲しいんです」
頬を赤らめながら小声でそう言った星に、つかさも星の性格を知ってる為か、小さく頷いて5冊の中から表紙と中身を念入りに確認して本を選んだ。
「これ! これがいいかも!」
つかさが選んだのは剣と魔法がメインのファンタジー系の本だった。魔法を使えない主人公の少年が剣だけで悪い魔法使いを倒すストーリーである。
ゲームが好きなつかさらしい小説で、彼女が選んだのも納得と言ったところだろう。
星はつかさの選んでくれた本を持って会計に行くと、エミルがつかさ同様カードで支払ってくれた。買って貰った本を受け取ると、大事そうに胸に抱える。
そんな星につかさは心配そうに話掛けてきた。
「本当に僕が選んだので良かったの?」
「ええ、せっかくつかさちゃんが選んでくれたんですからこれ以上の本はないです。ありがとうございます」
「まあ気に入ってくれたなら良かった。そうだ! 今度、漫画も読んでみてよ! 小説とかは分からないけど漫画ならおすすめがたくさんあるから!」
「はい。また今度……」
星の両肩を掴んで瞳を輝かせながらそう言って迫ってくるつかさに、星は圧倒されながら小さな声で言って頷く。
エミルはそんな2人に告げる。
「せっかく外に出てきたんだし、今日は優勝のお祝いにケーキでも食べに行きましょうか!」
「やったー!」
「いいですね」
つかさも星も嬉しそうに頷くと、エミルと一緒に書店を出た。
大型百貨店から車に乗って場所を変えると、今度は少し離れた繁華街の前で車を止めた。
車から降りると、目の前のビルにエミルが入って行ったのを見て星もつかさも付いて行く。ビルの中に入るとエレベーターに乗って最上階へと向かう。
透明のガラスで覆われたエレベーターは徐々に上へと向かって上がっていく、星はその様子をガラスに手を付けて上から下へと流れていく景色を楽しんでいたがつかさは入り口のドアの前に立ったまま風景を見ようともしない。
最上階に着くと天井がガラス張りの広々とした空間にメイド姿の従業員がケーキや紅茶の入ったティーカップを運んでいる。
客は皆着飾っていてお金持ちが多いのが分かる。星達は螺旋階段を登った屋上にあるテーブルに座った。
そよ風が頬を撫でるように流れ降り注ぐ日光が気持ちいい。
「さて、どれにする?」
星の目の前にメニュー表を置く、それを開いて食べたい物を選ぶ。
メニュー表を見ながら悩んでいる横で、つかさは近くのメイドを呼んで。
「ここからここまでください!」
誰もが一度は夢見た注文をつかさは全く躊躇することなく言った。
だが、メイドも慣れているのだろう……。
「かしこまりました。お持ち帰りもできますので食べられなければお申し付け下さい」
「ありがとう」
メイドの言葉に返事をするエミル。
しかし、注文したつかさ本人は食べ切る自信があるのか小さな声で「食べれるもん」と言って頬を膨らませている。
その横で星はまだメニュー表と睨めっこしたまま何を頼もうか迷っていた。そうこうしているうちに、注文していたケーキが次々と運ばれてきた。
テーブルの上にはショートケーキ、チーズケーキ、チョコレートケーキ、フルーツタルトやクッキーなど様々な種類のケーキが並べられた。
つかさはフォークを手に運ばれてきたケーキを嬉しそうに食べ始めた。
そんなつかさを横目に見たエミルはメニュー表を見ながら悩んでいる星に話し掛けてくる。
「まだ何を食べたいか決まらない?」
「はい。いっぱいありすぎて……」
「なら、私が頼むのを半分にしましょうか! その方がたくさん食べられるでしょ?」
その提案に星は小さく頷くとエミルは彼女の顔を見て微笑んだ。
エミルは近くにいたメイドを呼び慣れた様子で注文していく。
それからすぐにトレーにケーキを乗せてメイドが運んでくる。トレーからケーキをテーブルに移されたケーキを見るとブルベリーチーズケーキ、ショートケーキ、いちごのタルト、生クリームたっぷりのプリン。そして紅茶とオレンジジュースを置いて「ごゆっくり」と言って去って行った。
「まだ何を食べたいか決まらない?」
「はい。いっぱいありすぎて……」
「なら、私が頼むのを半分にしましょうか! その方がたくさん食べられるでしょ?」
その提案に星は小さく頷くとエミルは彼女の顔を見て微笑んだ。
エミルは近くにいたメイドを呼び慣れた様子で注文していく。
それからすぐにトレーにケーキを乗せてメイドが運んでくる。トレーからケーキをテーブルに移されたケーキを見るとブルベリーチーズケーキ、ショートケーキ、いちごのタルト、生クリームたっぷりのプリン。そして紅茶とオレンジジュースを置いて「ごゆっくり」と言って去って行った。
「最初は何から食べる?」
「お姉様の食べたいのを……」
「そうね。最初はプリンからいきましょうか!」
エミルはそういうとスプーンでプリンを掬って星の方へと向ける。




