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オンライン・メモリーズ ~VRMMOの世界に閉じ込められた。内気な小学生の女の子が頑張るダークファンタジー~  作者: 北条氏成
第6章

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太陽を司る巨竜12

 千代の街のトップギルドが我先にと飛び出していって、他の千代のプレイヤー達に火が付かないわけがない。


 圧倒的に巨大な化け物を相手に個人差はあるが、次々に彼等に続いて駆け出していく。


 始まりの街からきたギルド『メルキュール』のギルドマスターで、漆黒の鎧にドラゴンの頭を模した漆黒の兜を被った男が、漆黒の刃を持つ大剣を頭上に掲げて大声で周囲にいる仲間達に叫んだ。


「いいか! 千代の街のギルドには借りがある。居場所を無くした我等に、今まで手厚い支援をしてくれたのを思い出せ! 衣食住を提供してくれた彼等に、今こそこそ恩返しする時だ! いいな。大きさに騙されるな! 体が大きければ動きは鈍くなる。我々のスピードには付いてこれない。しかも、炎の翼も鎧もなくした奴はもうただの亀同然だ! 足を狙え! その巨体を支えきれないほど斬り付けて、あの巨体を地面にひれ伏させてやれ!!」

『おー!!』


 ギルドマスターの声に応えるように、各々持った武器を掲げて大声で叫んだ仲間達が突撃を開始する。


「ですが、突っ込みすぎには注意して下さいね! 自分のところのギルマスの指示は常に注意して聞いてて下さい!」


 長い茶色い髪を三つ編みに結んだ青い瞳の少女。サブギルドマスターのリアンの言葉にもメンバー達は「了解」と叫ぶ。


 その声を隣で聞いていたギルド『POWER,S』のギルドマスターであるリカは赤く長い髪を揺らし、その赤い瞳を煌めかせながらガントレットをはめた拳を突き上げて叫んだ。


「私の言いたいことは全部取られたけど、皆! 攻撃したらすぐに動いてよ! 止まったらいくら遅いと言っても、ダメージは大きいからね!」

「そうだ。油断せずに行こう! これが終わったら、皆で街に戻って宴会だ!」


 双子の姉であるリカの言葉に合わせ、短い赤い髪にリカと同じく赤い瞳のカムイが持っていた剣で千代の街の方を指して叫ぶと、彼等と同じ位の少年少女達が嬉しそうな声を上げて赤い鱗の巨竜に向かっていく。


 その様子を見ていたギルド『LEO』のギルドマスターの代行であり、焼けた狐色の肌の胸元に大きくなクロスの傷がある黒い短髪のゲインが叫ぶ。


「ガキどもに遅れを取るなよ! 俺達のリーダーの面子はここで俺達が保つぞ!」


 すると、その声にギルド4番目の実力者であるウォーニスが大声で「ウォー!」と、まるで獣の様な雄叫びを上げた。


 彼の声に相互してギルドメンバー達も、雄叫びを上げて突撃していった。


「敵の体を包む炎は尽きた! 体が巨大であれば、手数が物を言う。我等エルフの本領の見せ所だぞ! 全弾撃ち尽くす覚悟で矢を放て!!」

『おー!!』


 声を上げたのは始まりの街のエルフ専用ギルド『ネオアーク』のサブギルドマスターである。エルフの特徴である長い耳と特化武器として設定されている弓を背中に背負った青い短髪のハイルは、弓を手に取って二本の矢を矢筒引き抜くと土煙を上げて千代の街に突き進む赤い鱗の巨竜に向けて放つと同時に、素早く地面を蹴って突撃を開始する。


 最後に残っていたギルド『成仏善寺』のギルドマスターで僧侶らしいスキンヘッドの頭と、首から提げた巨大な鉄の数珠と法衣を身に纏い。手には錫杖を持っている。無善と浄歳が胸の前に手を合わせていた。


 彼等がギルドで一番最後に出ているのは理由がある。何故なら、彼等はギルドメンバー達と共にお経を唱えていたのだ。

 これが彼等の戦闘をする前の儀式みたいなものなのだろう。流石にアヌビスの兵士達と戦う前はしなかったが、後ではしっかりとお経を読んでいた。


 そんな彼等はぴったりのタイミングでお経を読み終えると、同時にカッ!と開眼し、錫杖をシャカシャカと鳴らしながら、一斉に赤い鱗の巨竜を目掛けて走り出す。

 それを上空から見ていたエミルと影虎も、最大戦力であるリントヴルム、ファーブニルの二体のドラゴンを失った為か、地上に降り立ち地上で戦闘を行っていたエリエ達と合流する。


 エリエとデイビッド、ミレイニに加え。何故かそこにオカマイスターの4人も加わっている。

 

「あら、サラザさん達まで……」


 驚いているエミルに、サラザが自慢の上腕二頭筋を見せるようにポージングを取ると、それを見たエミルは苦笑いを浮かべていた。

 

「まあ、随分と人が多かったからね。気が付かなくてもしかたないわよ~」

「……そうですね」


 まあ、そうは言っても、関取の様な巨漢のカルビに、リーゼント頭のガーベラ。そしてその中でも一番個性的なのが背中に孔雀の羽根を付けた黄色いモヒカン頭にサングラスを付けた孔雀マツザカだろう。そんな個性的な面々のオカマイスターのメンバーを例え、多くの人混みの中でも見間違えるなんてことがあるのだろうか……。


「――実は俺もずっと星ちゃんのことを追ってたんです」


 すると、カルビの後ろからゆっくりとカレンが現れた。


 彼女がそういうと、周りにいたオカマイスターのメンバー達も深く頷いた。


「私達は星ちゃんがギルドホールを抜け出していくのを目撃したの。そしたらあの子、物凄いスピードで街を駆け抜けていくじゃない? これはただ事じゃないと思ってね~。私達も店を閉めて急いであの子を追い掛けて来たんだけど、途中で見失っちゃってね~。その時にこのカレンちゃんに会ったのよ」


 どことなくねっとりとしたオカマ口調で言ったサラザの言葉を聞いて、どうして今までサラザ達と出会わなかったのかをエミルは理解した。


 っと、今度はリーゼント頭をしたガーベラが口を開く。


「でも、私達が会ったのはその子だけじゃない。もう一人、不審な男とすれ違った……」

「……不審な男?」


 ガーベラの口から出た『不審』という言葉に、サラザ達と会ってから気が抜けていたエミルの顔に緊張が戻る。


 それもそのはずだ。星が抜け出した原因は、この事件を起こした犯人である狼の覆面の男。


 星と接触する時にすれ違った場面と男という共通点だけで、容疑者としては十分だろう。


「そうなんだよ。銀色の鎧に白いマントを掛けた男でね、手には薙刀みたいな武器を持っていたから千代のプレイヤーだとは思うんだけど……深夜帯だったし。人通りは皆無だったから、はっきりと覚えているよ」

「――白銀の鎧に白いマントの男!?」


 千代の街は特区というシステムによって、オリジナル武器でも既存の武器でも日本伝統のアイテムには、本来掛かるはずの税率が掛からなくなる仕組みになっている。

 おそらく。それもあって、ガーベラは薙刀を持っている彼を千代のプレイヤーと断定したのだろう。しかし、プレイヤーの心情としては装備を揃えるならば、そのコンセプトに合った物を揃えたいと考えるのが自然だ。


 つまり。西洋の甲冑とマントに、日本古来の武器である薙刀を合わせるのはミスマッチ過ぎる。しかも、エミルはその男の風貌に心当たりがある。

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