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ゴーレム狩り3

 ゴーレムはガシガシと岩の連結部を鳴らしながら、頻りに体を動かしている。その様子から見て、どうやらさっきの攻撃で腕が地面に突き刺さってから抜けなくなったようだ……。


「さすが岩の塊だな。凄まじいパワーだ…………こいつは返してもらうぜ」


 メルディウスは腕を伝って、ゴーレムに刺さったままになっていたベルセルクを抜き取った。


 っと、そこにゴーレムの手が彼を捕まえようと襲い掛かる。


 メルディウスはチラッと見遣って、素早くその腕に大斧を振り抜いた。


「吹き飛ばせ! ベルセルク!!」


 刃が当たった直後、派手に爆発が起こりゴーレムの腕そのものをバラバラに吹き飛ばした。


 その刹那。怯んでいるゴーレムにメルディウスの持っていた大斧が金色の光を放ち剣の状態に戻り、素早く数回斬りつけると、キラキラと光になってゴーレムが消える。


 すると、周りに銅と銀色のゴーレムが腰に左手を添え剣を担いているメルディウスの周りを取り囲む。だが、メルディウスは焦った様子も見せず。楽しそうにニヤッと不敵な笑みを浮かべていた。


「これは選り取りみどりだな! 行くぜベルセルクッ!!」


 持っていた剣が大斧の姿に変わり、メルディウスがゴーレム達の中に飛び込んでいく。


 次々に襲い掛かってくるゴーレムの鉄拳をかわしつつ、素早く振るうベルセルクの爆発能力によって立ちはだかるゴーレムを撃破しながら「おらおら」と叫んで、黄金に輝くゴーレムに向かって一直線に突き進む。

 

 その姿を遠目で見つめ、デュランが口元に笑みを浮かべると。


「なるほど。そういう事か……」


 っと、意味ありげにほくそ笑む。


 その後、前を走るダークブレットのメンバー達に向かって叫ぶ。


「金、銀、銅色のゴーレム達はそれぞれ感知範囲が違う! 銅が最も広く50m程。銀は30m。金はまだ不明だが、接近しすぎるとあっという間にゴーレム達に取り囲まれるぞ。あんな風にな!」


 言い終えたデュランは、徐にメルディウスを指差す。


 そこには今まさに金色のゴーレムと対峙し、ゴーレム達に囲まれている彼の姿があった。

 彼が突っ込んだのには、ダークブレットのメンバーにその危険性を知らしめる為にではないないだろうが、結果的にそうなっただけだろう……。 


 正直。1体でも厄介な相手なのにも関わらず。彼の周りには、3体の銀ゴーレムと7体ほどの銅ゴーレムが取り囲む様にして立っていた。


 10体ものゴーレムに囲まれた危機的状況なのに、そんな状況下でもまだ余裕な表情を見せているメルディウスは澄まし顔のまま、大斧を肩に担いている。


 そして小さくため息を漏らすと、面倒そうに言い放つ。


「はぁ……たく。こんな奴等、俺のスキルさえ使えれば、一撃で全滅させられるのによ――まあいい、まとめて相手してやる。どこからでも掛かってこいよ!」

 

 メルディウスのその言葉を皮切りに、目の前にいる金色のゴーレムの鉄拳が大砲の弾の如く飛んでくる。


 その攻撃を見切ってぎりぎりのところでかわすと、直ぐ様メルディウスの大斧が火を噴く。

 地面に突き立てているゴーレムの腕に振り下ろした大斧が、轟音と共に爆発を起こす。


 辺りに爆風で撒き散らされた砂塵と白煙が舞う。


(……やったか?)


 立ち込める煙の中、眉をひそめながら攻撃を放ったゴーレムの腕を、目を細めて確認する。


 しばらくして煙が消え視界が戻ると、メルディウスは驚愕の表情で思わず身を仰け反らせた。だが、彼が驚くのも無理はない。渾身の一振りを放ったつもりだったのだが、傷どころかHPも殆ど減っていなかったのだ――。


 メルディウスが驚きを隠せないと言った表情でいると、そこに間髪入れずに周りのゴーレムが攻撃を仕掛けてくる。まあ、モンスターでしかないゴーレムが人の感情に同情してくれるはずもない。


 だがそこは流石はベテランプレイヤー。すぐに気持ちを切り替えて柄を握る手に力を込めると、向かってくるゴーレムに大斧をぶつける。


 直後。爆発によって勢いをつけると、爆発の力を利用して重さを増し、変身を解いた大剣を金のゴーレムに振り下ろす。


 ――ガキンッ!!

  

 鈍い音と一緒に、目の前に激しく火花が舞う。しかし、大きいのは音だけでHPに変化は全くと言っていいほどなかった。


 っと言ってもそれも当たり前のことだ。大斧モードのベルセルクの爆発能力でも削れなかったHPを、爆風を利用したとはいえ。それよりも攻撃力で劣る今の大剣モードの状態で削れるわけがないだろう。だが、それは武器の持ち主であるメルディウスが最も知っている。


 彼がこのモードに期待しているのは、パワーではなくスピードである。

 簡単に言うと、大技で削り切れないHPを連撃で削り切ろうという作戦に切り替えたのだ。


「一撃で削れないのなら……手数でHPを削ぎ落としていけばいいだけなんだよ!」


 そう叫ぶと、目にも留まらぬ速さでゴーレムの体に次々に攻撃を当て続けるメルディウス。


 時折飛んでくるゴーレムの反撃をかわし、周りのゴーレム達の介入にも剣と斧でモードを変更しながら難なく対応している。

 元々メルディウスの持っている武器は柄の部分に付いた刃を上部にスライドさせることで、大剣から斧へと素早くモードを変更することができる珍しい可変武器だ。


 一撃の破壊力に特化した大斧のモードは、武器とメルディウスの固有スキルの爆発能力によって攻撃力を最大限に引き上げているが。刃が大きい上に、その爆発の度に使用者が振り回されるという使い勝手の悪さが、敵に四方を囲まれている今の状況にはマッチしていない。しかも、目の前の金色に輝くゴーレムは刃すら通さない程に強固な肉体をしているのだ――。


 だが、休みなく襲って来る岩の拳をいなしながらも、確実に自分の攻撃をヒットさせているメルディウスは、やはり並のプレイヤーではないと実感せざるを得ない。


 常人ならば攻撃をかわし、攻撃を繰り出すなんて芸当はそう容易くできるものではないだろう。それは、攻撃を受ける時と攻撃を繰り出し弾かれる瞬間に、必ずと言っていいほどバランスを崩してしまうからだ。


 戦闘はリズムと言う者がいるように、テンポ良く攻撃と防御を交互にしかも臨機応変に行わなければ、すぐに戦闘そのものが瓦解してしまう。


 口で言うのは簡単だが、それを行うには何度も繰り返し行う。気の遠くなるような反復練習が必要なのである。


 そこに馬に乗って階段を下ってきていたデュラン達が次々に馬を解除して、雄叫びを上げながら近くのゴーレムに突進していく。

 圧倒的な物量差でゴーレムを見る見る内に複数人で個々のゴーレムを包囲すると、次々に武器を振り上げてゴーレムに斬り掛かる。


 そこら中で様々な色のゴーレムの体に刃が辺り火花を散らしている中。多くのゴーレム達と対峙しているメルディウスの側にいたゴーレムをいっぺんに薙ぎ倒す。


 土煙を上げるほど勢い良く地面に倒されるゴーレム達――突然のデュランの行動に驚いているメルディウス。


 しかし、それもそうだ。昔マスターの作っていたギルドで戦っていた時も、味方の窮地に駆けつけるなどということをする人物ではないはずなのだ――。

 

 礼を言おうと口を開いた直後、メルディウスの耳に意外な言葉が飛び込んで来た。


「全く、つまらない男になったものだね。君も……」


 デュランは見下したような瞳を向けて、メルディウスを罵倒する。


 だが、それを素直に受け入れるほど、メルディウスは大人しくない。


「――なん……だと?」


 デュランを鋭く睨み返したメルディウスの背後から、黄金のゴーレムが大きな拳を振り上げている。


 メルディウスは後ろを振り返ることなく持っていた武器を振りかぶると、次の瞬間には握っていた武器は光を放ち大斧の姿に変わっていた。

 

「邪魔すんじゃねぇー!! てめぇーは後回しだ。引っ込んでろ!!」


 力任せに振り抜いたその大斧がゴーレムの腹部に直撃し、今までにないほどの爆発でその巨体を吹き飛ばす。


 メルディウスの体は爆発のその勢いを殺す為、その場で地面に円を描く様に数回転して止まる。 


 鋭い眼光をデュランに向けながら、メルディウスはベルセルクを肩に担ぐ。

 

「――来いよ。お前から塵にしてやる……」


 完全に理性を失うほど頭に血が上っているのだろう。今までにないほどの殺気を漲らせ、血走った目で突き刺すような視線をデュランに浴びせている。


 彼の自慢の赤い鎧に大人の身長ほどの刃を持つ大斧を持っているその姿は、獣――いや、鬼と言った方が正しいかもしれない。


 全身から迸らせる凄まじい闘気と殺気は、デュランの体を押し潰すほどに圧力を放っている。

 空気が震えるほどの物凄い圧迫感を一身に受け、デュランは体を震わせ額に冷や汗を流しながらも笑みを浮かべていた。

 

「……すごい。凄まじい闘気だ……これが本当の彼の力か……」


 震える体を精神力で押さえ込むと、にやりと笑みを浮かべ。


「君はさすがだね。一つアドバイスしよう」

「……はっ? アドバイスだぁ?」

「ああ、武器は最大の持ち味を発揮してこそ生きてくるものだよ……それじゃ、俺は彼等の援護に行かないといけないから。またね!」


 デュランはそう言って勢い良く跳び上がると、デュランに倒され起き上がって臨戦態勢に入ったゴーレムを足場にしてその場をそそくさと退散する。

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