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お父様とわたし

よろしくお願いします。

リリーにお父様のお仕事を聞いてはみたが、おそらくあまり多くの情報は得られないと思っている。


なぜなら自分が仕えている主の子供に、ましてやまだ5歳になったばかりの相手に


「旦那様はこんな問題を抱えていて、あんな危険に遭いやすいお仕事です。」

とは普通に考えて言わないだろうからね。

どんなに私が知りたい情報だったとしても聞き出すのは難しいと思うんだよね。


その為、私は会話以外でも情報を得ることが出来ないかと思い、顔の表情や声のトーン、身ぶりなどを観察して見ることにした。


「そうですね。旦那様はこの国の王様を助ける宰相様なんですよ。」


「そうなんだ。王様を助ける宰相様なんだ。」


うんうん。成る程…ん?宰相様なの?

えぇ〜そんなに偉い人だったのか。

知らなかったよ。宰相様か。

…敵も多そうだよね。そのせいかなぁ…事件に巻き込まれるの。


「騎士様みたいに悪い人とかと戦ったりするの?」


「悪い人をお仕置きしたり、いざとなれば騎士様みたいに王様を守ることもありますね。」


その後も色々質問して見たけど…

う〜ん、やはりいくら観察してもよく分からないかな…

流石に大きな屋敷に勤めているだけあって、表情はいつもと同じにこやかな感じのままだし、そもそも表情に心配や不安が思わず出てしまうほどの会話の内容でもないからなぁ。


かと言ってあまり変なことは聞けないしね。何かいい方法ないかな?





リリーと手を繋いで小鳥の雛や綺麗に咲く花を見ながら庭を散歩し、途中で出会ったジョフにお礼を伝えたりしながらのんびり過ごしていると、お父様が私のことを探しに来た。


お父様と会うのは私が倒れて目覚めた時以来である。

どうやら今は山のように仕事があり忙しかったようなんだけど、私が目覚めるまではお仕事をお休みして側についてくれて居たため仕事が溜まってしまったみたいだ。


それだけ、心配かけてしまったんだと思うと申し訳ないような、心配してくれたことが嬉しいような複雑な心境だったりする。


私が目覚めてからも、心配だからそばについて居たかった様なんだけど、お仕事の補佐をしてくれている人に泣きつかれて渋々お城に行ったみたい。


それからは、溜まった仕事を片付ける為お城にお泊まりの日々で中々帰れない状態が続いていたようなんだよね。


今日は、仕事がひと段落ついたから屋敷に帰って来られたんだって。


私はお父様の腕に抱っこされたまま屋敷の中に入った。


うん。会ったとたん優しく微笑みながら抱き上げられたよ。

お父様は身長が高いから抱き上げられると視線が高くなって楽しいんだよね。


「ただいま、シュカ。体の調子はもういいのかい?」


意外と子煩悩というか私に甘いお父様だと思うんだけど、でも…


「おかえりなさいっお父様。もう元気だよ」


お父様の首に抱きつきながら満面の笑みで返事をする私も、ファザコンなのかもしれない。

私は、お父様の優しい光を放つアメジストの様な瞳も夜の空の様な深い藍色の髪も大好きだ。


着いた先は、いつも家族で団欒している大きな部屋だ。

その部屋のソファに抱っこされた状態で座っている。

ちょっと恥ずかしいけれど、嬉しい気持ちの方が勝っている。


こんな風に甘えられるのも小さいうちだけだしね。


「今日は何をする予定だったんだい?」


「今日はお庭の散歩をしてから図書室で読書をする予定だったの。」


「最近、図書室でよく本を読んでいるらしいね。何か面白い本でもあったのかい?」


お父様の質問に最近の悩み事が頭に浮かぶ。


7歳にならないと魔力が安定しない為、祈りの歌も魔法も禁止されている。

でも、私には7歳まで待っている時間も余裕もない…「ある事件」は待ってはくれないだろう。

かと言って前世の彼女の知識は、今は役に立たない。


ここが現実世界である以上、リモコンのボタンを押しただけで祈りの歌も魔法も使えるようにはならないのだから。


私は、祈りの歌や魔法について知りたい…

でも、独学には限界があるのも確かで、図書室で調べて勉強しているのでは余り効率的ではない…誰かに教えをこえるなら助かる。


祈りの歌と魔法について調べていることを言ってしまっても大丈夫だろうか?

勉強はまだ早いと言われてしまうだろうか?


様々な考えが浮かんでは消えていく。


ただ一つだけはっきりしていることはある。


自分に出来る事はなんでもやっておく!


いざという時の為に、手札は多いに越したことはないから。


内心どきどきしながら話を切り出す。


「うん…今は祈りの歌と魔法の本を読んでお勉強しているの。」


「そうかぁ。シュカも5歳になったから、そろそろ魔力の勉強も少しずつ始めた方がいいかもしれないね。今度、いい先生を探してくるよ。」


「えっいいの?お父様」


お父様の言葉に思わず驚きの声を上げながら、背後を振り返る。

拍子抜けするほど簡単にお父様から許可が出てしまったからだ。

いや、出て良かったんだけど…うん、こんな事もあるよね。

自分が考えているよりも物事は複雑ではなく簡単に出来ている。

考えるより実際にやって見た方がいいこともある。


なんて言うんだっけ…あぁそうだ。


(案ずるより産むが易し)


昔の人はいい言葉を残しているよね。

緊張していた心が一気に緩みどうでもいいことを考えながら、一歩前進したことを感じた。


取り敢えずお父様にお礼を伝えながら抱きついておこう。



本当にありがとう…お父様



ありがとうございます。

次回は8月1日投稿予定です。

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