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たった一行の重大事件

よろしくお願いします。

7歳になるまでは「祈りの歌」を教えてもらい歌うことは出来ても、本当の意味で捧げる(・・・・・・・・・)ことは出来ない。

捧げる為には、透花水晶とうかすいしょうが必要になるからだ。

ただ、7歳になるまでは魔力が安定しない為、魔法や祈りの歌に魔力を使用するのは危険と考えられ、魔法の使用及び透花水晶を持つことは避けられている。


その為、透花水晶は7歳のお祝いに贈られる事が一般的である。



そこまで読んで開いていた本を閉じた。

この前教会で倒れた時に、前世の記憶を思い出した。

この世界が、前世でしたことのある乙女ゲームの世界に似ている事までは、ぼんやりと思い出すことが出来た。

だけど、前世の彼女の記憶に残っているのは…主人公の「祈りの歌」の力をひたすら育成していた記憶だけだ。

う〜ん、なんだか乙女ゲームってよりも育成ゲームをしていた感じが強い。

うん。唄うこと好きだったようだしね。

まぁ、私が知りたいのは前世の彼女の世界で、攻略対象と呼ばれていた人達の情報ではないから別に構わないけど。


今の状態だと、私の知りたい情報もわからない。

ただ知らないのか、思い出せていないのか…

前世の彼女の記憶は、何かきっかけがないと思い出せない。

それはまるで、前に読んだことのある本を読み返して「あぁ、そういえばこんな内容だった」と思い出した時に似ている。


ふと、すぐそばにある窓から外を見る。

そこから見える庭には、色とりどりの美しい花々が咲きみだれ、ときおり吹く風に花弁が揺れ、穏やかな気分になる。

空は雲ひとつなく晴れ渡っており、いつもなら外で日向ひなたぼっこをしている。


でも私は今こうして、屋敷の中にある、今まであまり訪れたことのない図書室で本を読んでいる。

窓ガラスに目をやれば、淡い桜色の緩やかに波うつ髪を肩まで伸ばし、透き通るような白い肌とアメジストの様に輝く瞳を持つ5歳くらいの少女が不安そうにこちらを見ている。


…お母様と同じ色の髪…お父様と同じ色の瞳…


そして、前世の彼女の記憶の中にあった「乙女ゲームのヒロイン」を幼くした様な姿だ…


ゲーム開始時のヒロインには両親がいない。

たった数行で書かれたヒロインの生い立ち…


ヒロインは幼い頃にある事件がきっかけで両親をなくす。

その時のことがトラウマとなり「祈りの歌」を唄えなくなってしまう。

しかし、花祈士になる夢を諦めることは出来なかった。

そんな主人公に、あるきっかけが訪れる。

透花石を探している最中に偶然立ち寄った一軒の店で「赤い透花水晶」に出会う。

この出会いが再び主人公に唄う勇気を与える。

花祈士になる為の学院で運命が動き出す。

ーーー君の祈りが世界を救うーー


…ここで重要なのは最初の一文…

ある事件…って…何が起こるんだろう

深いため息がこぼれる…


たった一行で書かれた私にとっての重大事件…

大切な人達…大切な場所…失いたくない。


俯いていた顔を上げ、拳を握る。

これはチャンスだ。神様がくれたチャンス。

もしなにも知らなかったら、ある日突然何も出来ないまま失っていたかもしれない。

そうなる前に思い出せて良かった。


失いたくないなら、運命に抵抗してみよう。

まずはその為の準備をはじめよう




ありがとうございました。

次回は7月25日投稿予定です。

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