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早すぎる遭遇

よろしくお願いします。

私と男の子が笑いあった後、自己紹介をお互いにすることになった。

男の子の名前は、グローム・シュナイザーといい、赤い髪とサファイアの様に澄んだ青い瞳をしている。

今日は、彼と彼のお兄様とお父様の3人で我が屋敷を訪れているらしい。

そういえば、午後からお父様のお友達の方が遊びに来る予定になっていた。

私の事を紹介したいから、午後は外に出るのは控えて屋敷の中に居るようにいわれていたなぁ。

午後まではまだ時間があるので庭に出ていたが気づかない内にそんなに時間がたっていたのか…。


(外に出ないで屋敷の中で大人しく待っていた方が良かったかな。)


自分の行動を反省した。

自己紹介の後、入り口まで一緒に行くことになった為はぐれない様にグロームと手を繋いで歩き出す。

彼と会話をしながら観察した結果、どうやら彼は迷子のようだ。その理由は2つある。

一つ目は、彼の顔に泣いていた形跡があった。

彼の青い瞳が赤く染まっており、何度も目元をこすったのかまぶたも腫れて赤くなっていた。

なんとなく迷子になって泣いていたのかなと思った。なんと言っても、ここは大人でもクリアが難しいと言われているバラの迷路だ。

私も初めて入った時は迷ったしね。あの時は、すぐに妖精さんが助けれくれたので大丈夫だったけれど。

ただ、グロームが泣いていた事を隠したそうだったので、そこは敢えて聞かないで置くことにした。

そして2つ目の理由が、迷って泣いたりなんてしてない…と何故か仕切りに弁解してきたからだ。

私はただ、どうしてバラの迷路ここに一人でいるのか聞こうとしただけなのに。


(聞いていないのに必死になって否定するのは反対に怪しまれるよ。グローム…)


私は心の中で彼の怪しすぎる行動にツッコミを入れた。





「本当は午後に着く予定だったのに、お父様が今朝いきなり馬車ではなく久しぶりに馬で行こう…て言ったんだ。そうしたら、予定よりも早く着き過ぎて。」


「そうだったんだね。私はまだ馬に乗ったことがないから、乗れるの凄いね。」


考えていたよりも時間が立っていた訳ではなく、相手が早く着きすぎていただけだったようだ。

それにしても、かなり早く着いたようだ。3人とも馬の扱いがうまいんだろうな。

他の家族の方も迷路の中にいるのかな?


「僕も一人ではまだ乗れないから、お父様と一緒に乗ってきたんだ。だけど、兄様はもう一人でも乗れるんだ……」


楽しそうに話していたグロームだったが、お父様とお兄様の話になると涙目になり肩を落として下を向く。


(あれ?どうしたんだろ。)


いきなり、しょんぼりしてしまったグロームを心配しつつ様子をみる。


今は、入り口まであと少しで着く場所まで来ているから、迷子のせいで泣いているのではないと思う。

妖精さんの風が私たちを無事入り口まで案内してくれているから大丈夫な筈だ。

お父さんとお兄さんからはぐれてしまっ たから心細いのかな?

私が心配そうに見ているとグロームが何かを吹っ切る様に頭を振り、繋いでいた手に力をこめる。


「だっ大丈夫。僕が、入り口まで連れて行ってあげるから。心配しないでね。」


私の事を安心させる様に笑いながら力強い声で言われた。

どうやら、落ちこんでいた理由は迷子とはぐれた心細さの両方だったみたいだ。


「うっうん…。そうだね。ありがとう」


少し苦笑いを浮かべながら私は返事をした。

うん?私も迷子だと思われているね。

なんとなく、迷子ではないと言い出し辛くなりそのまま黙っていた。妖精さんの道案内によると次の角を曲がれば入り口だ。


どうやら、妖精さんの風による道案内は私しか感じることが出来ないようだ。








グロームと一緒にバラの迷路から出ると、一人の少年が入り口に立っていた。

少年は、月の光のような銀色の髪に男の子と同じサファイアのような澄んだ青い瞳をしている。


「兄様っ」


グロームが少年に気づき、私の手を握ったまま急に引っ張るように駆け出した。


(わわわっ!こっ転びそう。)


「グロームっ!まっ待って!!」


突然のことに反応出来ず、足がもつれて転びそうになる。慌ててグロームに止まってくれる様に声をかけるが遅かった。

まだ子供のため頭の方が重く体のバランスが悪いため、どうにか転ばないように踏ん張りたいところだが難しそうだ。

私はとっさに、グロームのことを巻き込まないように少し乱暴だが手を振りほどく。

手を繋いだままでは、グロームも私と一緒に地面にダイブだ。


次にくるだろう衝撃にぎゅっと目をつむり、心の準備をする。


(……あれ?)


しばらく待っても予想していた衝撃は来なかった。代わりにぽすっという音ともに暖かい何かに包まれ体を支えられているのを感じた。

つむっていた目をゆっくりと開くと視界いっぱいに濃紺色が見えた。


「大丈夫?怪我はないかい?」


頭上から優しく声をかけられた。そちらを仰ぎ見ると私のことを心配そうに見ている澄んだ青い瞳と目が合う。

どうやら、視界いっぱいに広がっていた濃紺色は彼の上着の色だったようだ。


「……はぃ。」


「足でもくじいた?どこか痛いところがあれば遠慮しないで言ってね」


吸い込まれそうなほど澄んだ瞳に見惚れてしまい、返事が遅くなってしまったことで心配させてしまったようだ。

私は、大丈夫なことを伝えるために、彼の腕の中から起こしてもらい、元気良く返事をする。


「大丈夫です。助けて下さってありがとうございました。」


「そう、良かった。うちの弟が迷惑をかけたみたいでごめんね。グロームも、いきなり走り出したら危ないだろう。彼女に謝りなさい。」


「ごめんね。シュカ」


少年に言われ、シュンと落ち込みながらグロームが申し訳なそうに謝ってきた。


「ううん。大丈夫。それに、転ぶ前に助けてもらったから怪我もしてないし。私も、乱暴にグロームの手を振りほどいちゃったけど、どこか怪我しなかった?」


「僕は大丈夫。ありがとうシュカ」


私たちの会話を優しく見守っている彼は、グロームのお兄様かな?挨拶をした方が良いよね。

私が少年のことについて考えているとそれに気づいた彼が直ぐに自己紹介をしてくれた。


「挨拶が遅れましたが、私は、グロームの兄、リヒト・シュナイザーと言います。」


「私は、シュカレイン・リスティアナです。よろしくお願いします。」



その後は、3人で色々な話をしながら屋敷に向かうことになった。

その会話の中で私の疑問も解けた。グロームが何故バラの迷路で一人迷っていたのか。

早くに屋敷に着き過ぎてしまった3人は、屋敷の庭の散歩を勧められ、しばらくは花々などを見ながらのんびり歩いていた。

途中で、彼のお父様…シュナイザー公爵がバラの迷路の話をし、それに興味を持ったグロームが迷路の中へと駆け出してしまった。

直ぐに、リヒト様が追いかけたそうなんだけれども、見つけることが出来なかったため、一旦バラの迷路の入り口に戻りお父様達を待っていたそうだ。

シュナイザー公爵は、バラの迷路内の捜索依頼をお父様達にするため屋敷に行っているそうだ。


そして、どうしてここまで大事になってしまったかというと…グロームが脱出の合言葉を聞く前に迷路内に入ってしまったからだ。


このバラの迷路はお父様達の力作なだけあり、凝りに凝りまくっている。

内部の複雑さもさることながら、魔法の使用も制限されており、合言葉による脱出魔法しか使えない。

その脱出のための合言葉を知らないで中に入るのは非常に危険だ。

大人でさえ、この迷路をクリアするのは難しいと言われている。


私は妖精さんの力を借りているため脱出魔法を使ったことはないけれど、通常内部で迷った場合ちょっとやそっとでは、出口は勿論のこと入り口にでさえ戻ることは難しい。

まさに、綺麗な外見に惑わされてはいけない危険な迷路なのだ。


だから、リヒト様が合言葉を使わずに入り口に戻った話に少し驚いた。


それにしてもこの兄弟…ものすごく美形だなぁ。

兄も弟も、誰もが振り返りそうになる程整った顔立ちをしている。


う〜ん、なんだか見たことがある様な気がするんだよね。

思い出せそうで思い出せない。モヤモヤした気分がする。


悩みながら、歩いていると前方からお父様と見知らぬ男性が私たちの方へと走りよってくる。

その男性を見た瞬間、突然閃く様に思い出した。





あっそうだ。前世の彼女の記憶の中で見たんだ。

でも…どうして?



まだ、彼らと会うには早すぎる。




ありがとうございました。

次回は8月23日投稿予定です。

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