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迷子の魂

よろしくお願いします

光と懐かしい光景に包まれていた世界が徐々に暗闇に包まれて行く

あれが走馬灯というものだろうか

忘れたと思っていた大切な思い出が蘇ってくる不思議な感覚


幼い頃のこと

両親を亡くした時のこと

歌えなくなった時のこと

病気にかかった時のこと


そして、当たり前にそこにあった幸せな日々


泣きたいような笑いたくなるような…満たされてく心


暗闇に閉ざされた中、光が見える

遠いような近いような小さい光

前に進んでるという感覚も薄れてくる

だんだんと思考も定まらなくなり大きくなる光をぼんやりと見ている


無音の世界に歌が微かに聴こえてくる

それと同時に思考が動き出す

歌は光とは反対側、暗闇に閉ざされている方から聴こえる


歌…


もう一度歌いたいたかった

一度は歌うことから逃げてしまった

歌い続けることが親に敷かれたレールのように感じてしまって

周囲の人から感じる期待と重圧が息苦しくて

声楽以外の道があるんじゃないかと…

本当にやりたいことが他にあるんじゃないかと


そして、失って初めて大切なものに気づく

歌えなくなって、自分がどんなに歌うことが好きだったか愛していたか気付いた…

気づくのが遅かったけど、それでもこれは代償だと大切な人と引き換えなんだと


逃げた自分への罰なんだと…思った


歌えなくなった代わりに大切な人を失わずに済んだ

そう思えば、歌うことが出来ない現実と向き合えた


これから、新しい生きがいを探そうって思った


でも、すぐに病にかかっていることがわかった

治療法がまだ見つかっていない病気で、余命1年の宣告をされた


周りから見たら不幸な人生に見えたかもしれない



家族をなくして

歌を…夢をなくして

自分の命をなくして


それでも、私はそんなに悪くない…ううん幸せだったと思う

なくしたものも多かったけど、見つけられたから


大切なことを


そして、11ヶ月後こうして暗闇の中を光の方ではなく、歌が聴こえる暗く閉ざされている方へと進んでいる


そう、最後の願いを思い出したから








今度は、大切なものを見失わないように

大切な人にその思いを伝えられるようになりたい


そして願わくば…来世も歌と音楽に溢れた世界に生まれたいな




暗闇だった周囲はいつの間にか光に溢れている

しっかりと耳に届く歌を聴きながら瞳を閉じる

意識が静かに溶けていくのを感じた








ありがとうございました

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