Extra-Episode あとのマツリ
瞼の奥に光。
官房長官、鈴谷紗羅は目を覚ました。
開放的な空間。天蓋付きのベッド。枕元に用意された豪華な果物の盛り合わせ。いつの間にか着ていたやたら高そうな生地のパジャマ。
(ここはもしかして天国……?)
あの爆発に巻き込まれた後のことはよく分からない。ただ、やることはやったし、こうして天に召されたのならそれも悪くない気がした。
(せっかくだしさっきのメロンを……)
振り向いた彼女。しかしメロンはなかった。それどころか果物がまるごと消失していた。それもそのはず。
「おお! レイちゃん。気がついたか」
艦長がメロンにかぶりつきながら笑いかけた。
「シルク先輩。人のものを勝手に食べたら……あっ、どうも。いただきますね」
庶務が皮も剥かずにリンゴをかじっている。確認をとればいいという問題ではない。
そんな二人に総長が拳骨を落とす。
「レイちゃんおはよう。バカ共がすまんな。俺のフルーツとってあるから後でそれをやるよ」
一瞬固まったあと辺りを改めて見回す紗羅。
頭をさする艦長と庶務。説教する総長。慌ててパイナップルを後ろに隠す諜報員とどこから連れてきたのか猫と戯れる指揮官。
監察官と会計はおそらく紗羅の着替えと思われる紙袋を持ってこちらへやって来た。
「みんな……じゃあ私は」
「命を繋いだってことだ」
ドアを開けて元帥が部屋に入ってきた。
「あのときの爆発でブルー号はそれはもう酷いありさまだったんだが、自動操縦に変えてなんとか地球に不時着できたんだ」
「そう! 俺らはみーんな生きてる! やったぜ!」
「お前コラ何しらばっくれてブドウにまで手を出そうとしてるんだ」
はしゃぐ艦長。パンパン叩く総長。
苦笑する紗羅にスリッパを手渡す監察官。
「果物は俺のもやるからさ。あっ、そうだ。惑星通信、土星の殿様とかのこちゃんからも差し入れが届いてるらしいぞ」
「ブルー号は渡辺さんと双さんたちが修理してくれてます。僕まだそんなに乗ってないのでホントによかったですよう」
指揮官の話なら助っ人たちも無事なようだ。
喋らせろとばかりに諜報員がずずいと前へ。
「んで僕らが気絶している間に元帥があちこちまわって地球軍の失態について訴えたんです」
おそらく紗羅が目覚める前から声をかけようと身構えていたのだろう。
負けじと会計が眼鏡をキラリと光らせた。
「そしたらOKEYAの損害を地球軍がもってくれるだけではなくこんなにいい病院とVIP待遇を工面するという申し出があったというわけ」
それはつまりタカり行為なのではと思わないでもなかったが紗羅はOKEYAらしいと笑みを漏らした。
「よし、せっかくの地球だ。退院したらみんなで出かけようか」
元帥の一言に沸くOKEYA。
紗羅、いやOKEYAの官房長官もその歓談の輪に身を投じることにした。
風は吹いた。そして予定通りに桶屋は儲かったのだ。
☆★☆
天王星のガラクの研究室。暗い室内で夏目が椅子に腰かけている。
「利用価値はあると思ったが。カチカチの軍人には所詮あれが限界だったか」
夏目が暗闇に語りかけた。誰かいるようだ。
「まあしょうがないんじゃない? おとぼけガウスにしちゃいい線いったと思うよ」
ボクも元軍人なんだけどなと肩をすくめるルドゥムグ。その腹には官房長官につけられた傷はもう見受けられない。
「夏目さん。ガラクさんなんですけど……」
リラが部屋に戻ってきた。おそらくトイレにでも行っていたのだろう。こちらは包帯をグルグルに巻いている。
「私たちをここまで送ってくれたあとに、なんかブツブツ言いながらどこかへ行っちゃいました」
彼女の言葉を遮って重要部分を報告する同じく包帯のミャットン。リラを見てニヤリと笑う。
「そうか。まあいい」
取っ組みあいを始めた二人は聞いていないが、夏目は何かを理解したようだ。
ルドゥムグは肩の人形を撫でた。
「夏目さんこれからどうするの? 何かするってならボクも連れていってよ」
「わ、私も! このパッツンはいりませんけど!」
「パッツンいうな!」
かぶりを振る夏目。リラとミャットンそれぞれの肩に手を置いた。
「ここにいる者は方向は違えどみな有能だ。次も君達とともに戦うことになる」
目を輝かせるリラとミャットン。仮面の奥で満足げな表情をつくるルドゥムグ。
「次の一手を打つための手筈を整える。新たなKOUTORIIが産声をあげるのだ」
(これでいい。OKEYAについてはまた改めて考え直す必要があるがな)
研究室を後にする夏目たち。重く軋む扉をルドゥムグが力任せに閉じた。
今までありがとうございました。OKEYAは一旦完結なのですが……
続編やります!桶売りたちの新しい活躍をお楽しみに。




