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Episode-30 カゼが吹けば

「あのう、思ったより敵さんヤバくね?」

 顔を真っ青にした艦長。

 雨あられと降りしきるレーザーの中、ブルー号は船団に向けて直進している。


「当たり前だろ。そんくらいじゃないと手応えがない」

 答える監察官。彼ら二人は脱出用シェルター担当で直接の操縦に携わっていない。いくらか余裕があるようだ。


「サンマル、ナナゴの方向から砲撃です!」

 モニター担当の庶務から総長へと伝令が走る。

 ブルー号は船体を傾け、最低限の動きでかわした。


 反撃とばかりに会計が荷電量子ビームを放つ。


 轟音とともに敵艦隊を吹き飛ばした。瞬間、ガウス機の護衛がゼロになった。

 ブルー号がうまくそのサイドへ回り込む。

「よし、今だ! メガ姉!」

 会計が放ったおまけの一発が今度こそ中将機に炸裂した。

「どうだ、やったか――!?」

 庶務が勝利に期待を寄せる。


 爆風が晴れた。ガウス機は表面にわずかな損傷が見られたものの他の戦艦型宇宙船のように大破しなかった。


 続いて双たちも攻撃を浴びせるが、こちらもダメージにはならなかった。

「チッ! 無駄に頑丈だな」

 捨て台詞を吐いて一旦距離をとった。


 攻撃が効かなかったとはいえ怒り心頭のガウス。先ほどの被弾が火に油を注ぐかたちとなってしまったようだ。


「小うるさい蝿共め。もういい、ここから直接地球を狙う! 残っている全艦隊のエネルギーをこの主砲に転送しろ!」

「ハッ!」


 ガウスは通信を強引にブルー号へねじ込ませた。

「聞こえるかOKEYA! もう抵抗は無駄だ! そこで大人しく見ていろ! そして地球が――」

「黙れ」

 元帥がガウスの通信を完全にシャットアウトした。

 

 ガウスの声とともに敵に新たな動きが。

「大規模なエネルギーの収束を確認。向かう先は……敵機の主砲です!」

 官房長官の報告で船内に衝撃が走った。


「野郎、地球をやるつもりか!」

 怒りに震える総長。適格な操縦で敵の攻撃をかわし続ける。


 しかし。

「うわっ!」

 船体が大きく揺れた。直撃ではないが被弾したようだ。船内の全員が反対の壁へ放り投げられた。


「出力32%ダウン! 動力の一つをやられました、高度を保つことができません!」

 照明が落ち、赤ランプが点滅するなか官房長官が悲痛の叫びをあげる。


「総長、敵の真下だ。そこなら今の状況で砲撃を浴びることはない!」


 元帥の指示で自動操縦に切り換えられてゆるやかに下っていくブルー号。会計が放とうとした火器も砲身が歪んだせいかうまく撃つことができない。

 

 敵の真下へ到達した。途端に静寂が訪れる。


「ど、どうしたら……」

 肩を落とす艦長。あまりの絶望的状況に悲観的になっているようだ。


「脱出用シェルターだ」


 元帥の言葉に艦長は思わずすっとんきょうな声をあげる。

「俺たちの担当じゃないすか。もしかして逃げるってことですか?」


「違う。敵が撃とうとしている主砲は膨大なエネルギーを必要とする兵器だ。だから発射の直前にその余剰分を逃がす必要がある。そのための噴出口をカイモニウム合金製のシェルターで塞ぐ。そうすれば内部にダメージを与えられるはずだ」


「その噴出口ってのはどこに?」

 モニタから目を放さず諜報員が尋ねた。


「主砲の縁の上側。そこにある半径3メートルの穴だ。発射の直前にそこを塞ぐ」

 元帥がなぜそんなことを知っているのか気にする余裕はその時のOKEYA一行にはなかった。


 庶務がおずおずと手を挙げた。

「それは名案ですけど……つまりそのためには奴らの真ん前に出ていかなきゃいけませんよね。そこまで行くのに格好の的になっちゃうし……もし失敗してもその主砲をゼロ距離で浴びることになりますよ」

「勿論だ。だからこの作戦の失敗は我々と地球の終わりを意味する。でも、やるしかないんだ」


 モニタには必死に戦う指揮官らの姿が。


「私は乗りましたよその作戦。ここまできたらもう何でもありですって」

 待ってましたとばかりに官房長官が予備のユニットをオンにした。


「俺もです!」

「私も元よりそのつもりです」

 総長と会計も再び持ち場についた。


 古参勢の奮起で士気が高まった。


「ぼくだって!」

「俺もだ!」

「ここで見せ場を……」

 庶務、監察官、諜報員もまだ生きている計器類を模索し始める。

「やってやんよ……」

 引っ込みがつかなくなった艦長。


「官房長官、残りのエネルギーを全て動力に回してくれ。総長は私が合図したらガウス機の前までブルー号を一気に上昇させるんだ」

「はい!」


 照明の分まで機動力に割いてブルー号は飛ぶだけの力を取り戻した。


「合図ってどういうことだ?」

「俺に聞くなよ」

 小声でやりとりする艦長と監察官。


 その時、元帥の携帯端末(スリー・フォン)が鳴った。指揮官からの連絡のようだ。

「元帥! コバンザメは僕たちが粗方片付けました。今ならいけます!」


「よし。上昇だ!」

 総長は頷いてブルー号を垂直に上昇させた。


 ガウス機の正面に来たブルー号。大船団としてやって来た艦隊は半数以上が双と渡辺に撃墜されるか逃げるかして、残りは指揮官たちが引き付けている。ガウス機もエネルギーを全て主砲に割いているので現時点でブルー号を攻撃することはできないのだ。


 今度は元帥がガウス機へ通信を割り込ませた。

「そろそろ潮時じゃないのか?」

「うるさい! あと5分でこの主砲が地球の大陸を順番に焼き払う。今逃げるなら特別に見逃してやってもいいんだぞ?」


 コクピット越しに睨み合う二人。


「ならちょうどいい。せっかくだしここは地球人どうし国語の勉強といこう」

「な、何を言っているんだ!? ええい、誰かこいつらを撃ち落とせ!」


 ゲキを飛ばすガウスだがその命令に従える部下はいない。

 普通なら怒るところ。しかし主砲を撃ちさえすれば地球ごと一掃できると考え冷静さを保つ。

 どうせここで死ぬつもりの連中だ。最後の啖呵(たんか)を聞いてやっても悪くない、そう思ったのだ。


「『風が吹けば桶屋が儲かる』ってことわざ知ってるか?」

「あぁ。お前らのようにありもしない輝きを盲信する桶屋の滑稽さを笑うものだろう」


 残りのメンバーは二人の会話を異国のラジオ放送か何かのような静けさで聞いていた。

「それもなくはないが……ちょっと違うな」

「なんだと!?」


「『風』だ。何か些細なきっかけが思いがけない結果を生むということ。カオス理論でいうところのバタフライエフェクトに類似したものと捉える学者もいるらしいが」


 熱弁する元帥をガウスが笑い飛ばした。


「大層なことを言っているがここは寒々しい宇宙だ。風など吹かん。……ちょうどエネルギーの充填が完了した。もう逃げても遅い、ここで死ね」


 主砲が目映い輝きに包まれた。 


「艦長、監察官。噴出口の真上に突っ込む。タイミングをとってシェルターを切り離すんだ」

「はい!」

 二人はそれぞれ装置に手をかけた。残りの面々も機体を安定させるため持ち場で微調整を図る。


「今さら何をしても無駄だ!」

 ガウスは高まるエネルギーの中で不適に笑う。


 ブルー号は一気に主砲の縁に到達した。

「発射まで15秒、14、13、12……」


 会計がカウントを始めた。ここへきて彼女の観測を疑う者は一人としていない。


(11、10、9……)

 激しく飛び回る指揮官も心の中でともに数字を刻んでいた。


「8、7、6……」

 渡辺も、双も、服部も残り時間を必死に稼いでいる。


 時計の秒針を眺めていれば一瞬で過ぎてしまうような小さな小さな時間。この場にいる彼らにとっては永劫の長さにも思えた。


 この一瞬で全てが決まる。


「5、4、3、2……」


「今だァッ! 落とせェッ!」

「いっけえええええ!!」

 

 切り離された脱出用シェルターは噴出口にまっすぐ落ちて、その役目を果たした。


「滅べ、地球!」

 主砲がさらに輝き、そして唸りをあげ――

「総長、離脱だ!」


 ガウス機を中心に辺り一面を巻き込む大爆発を起こした。


「お、桶屋さん!」

「ブルー号がッ!」


 渡辺、双、指揮官らはうまく逃れたが主砲に肉薄していたブルー号は離脱が間に合わなかった。


「嘘だ! 嘘だ! みんなが死ぬはずがない!」

「教祖、そっちは危険です!」


 爆発に飛び込もうとする指揮官を諌める信者たち。


 ガウスの野望は彼の滅亡とともに塵芥へと帰した。しかし、そこには大きな代償があったのだ……

この後にもう一つあります。よろしければ。

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