Episode-26 真打がフタリ
OKEYAとKOUTORIIの激突を眺めるルドゥムグ。自身も参戦しようと機会を窺っているようだ。
「さーて。ガラクさんの加勢にでも入るか、っと」
意気揚々とガラクの援軍に向かおうとしたルドゥムグだったが、突然足元に銃弾が降り注いだ。
「……桶屋くんもなかなかワルだね。そんなにボクが憎いのかい」
いつの間にか元帥が高い岩の上からルドゥムグを見下ろしていた。わざわざ登ったのだろうか。
「当たり前だ。KOUTORIIごとぶっ潰してやる」
次の弾の用意があることを示す元帥。
ルドゥムグは肩をすくめた。
「もしここでボクたちを倒しても夏目さんや中将たちについてはどうしようもないんじゃないの?」
「それは心配ない。そう易々とは行かせないさ。秘密兵器もあるしな」
「ふうん。まあいいや。そっちがその気ならいかせてもらうよ。そっちにとってのリベンジマッチだ!」
拳銃を取りだし元帥の眉間を狙う。
当然簡単に的にはならず元帥は岩から飛び降りた。そして再びルドゥムグを撃つ。今度はルドゥムグが地面の凹凸を利用してやり過ごした。
息をつかせる間もなくボール爆弾がルドゥムグを襲う。真横へダッシュし距離をとったものの、元帥から一瞬目を切ることとなった。当然このチャンスを逃すはずがない。
「ルドゥムグゥゥゥゥ!」
一気に距離をつめ渾身の右ストレートを仮面に見舞った。衝撃で飛ばされるルドゥムグにさらに銃弾を叩き込む。
「ぐっ……」
素手での攻撃だがなかなかのパワーだ。
普通ならKO勝利。しかし。
「いやぁさすが桶屋くん。あの頃から全然変わらないね。でも」
一方的にルドゥムグを攻めていたはずの元帥ががくりと膝を着いた。
「ボクが気がついていないとでも思った? 君は今そんな体じゃないよね。コールドスリープぼけもそれだけの年数になれば簡単には抜けないはずだ」
これまでの戦いで元帥が矢面に出なかった理由。言うなれば超弩級の時差ぼけだ。さっきのような動きはそう長くはもたない。
強い頭痛に苛まれる元帥。その顔に容赦なく蹴りを入れられる。今度は元帥が岩に叩きつけられる番だ。
そこへルドゥムグが木星で使った例の拳銃を向ける。
「こんな形でお別れなんて寂しいよ桶屋くん。しかしこれは君の選択だ。恨むなら自分を恨むんだね」
「じゃ。桶、いや瀬尾健哉くん。あっちでみんなによろしくね」
引き金に指をかけるルドゥムグ。
そこでニヤリと笑う元帥。
「いや。決めつけるのは早いぞ」
「なんだって?」
気にせずにルドゥムグは彼を撃つ。
ここで思わぬことが起こった。
元帥は放たれた赤い弾丸を自らの銃で相殺し、空いているほうの手で庶務作製の煙玉を破裂させた。
「そんな子供だまし。逃げられるとでも思ったのかい!」
煙に視界が覆われても音を頼りに再び元帥に狙いをつけるルドゥムグ。今度こそ彼を三途の川へと案内する。黒い意欲に燃えていた。
「!」
そこへ不意に横からの攻撃。元帥に気をとられていたため、反応が遅れた。
ルドゥムグは元帥を諦めなんとか受けにまわった。急所は守ったがそれでも重い打撃だ。
やっと煙が晴れた。ルドゥムグは攻撃の主を仮面の奥から睨みつける。
「OKEYAってボクが思ってたよりだいぶセコい集まりみたいだ。リーダーが不意打ちの師範代なら仕方ないけど」
「そんなに褒めても何も出ません。ここからは私が相手です!」
そこに立っていたのは官房長官。彼女は一人でルドゥムグを相手取るつもりのようだ。
「たしかに君はなかなか骨がありそうだ。くれぐれも期待を裏切らないでね?」
☆★☆
ガウスと夏目の乗った宇宙船は木星で船団と合流し、火星の星間転送口から今まさに顔を出した。
「よし。ここまで計画通りだ。地球もこれまでだな」
「はっ」
現在のところ作戦は順調。あとはこの軍団で地球へ攻撃をかけるのみ。
ガウスの目はまだまだ遠い目標である地球を見据えていた。
そこへエウロパから通信が入った。
「中将、今すぐ行軍をストップしてください!」
「何を言っている!? それにお前には三番隊を任せたはずだ。何故エウロパにいる!」
「それが急に船から脱出ポットで排出されまして……他の船団の奴らもみんなここにいます!」
怒りに任せ、ガウスは乱暴に通信を切った。
「おい夏目! これはどういうことだ!」
「まあまあ。いいじゃないですか。慌てちゃいけませんよ」
なぜか落ち着いている夏目。
これにはガウスも即席湯沸し器だ。
「貴様舐めてるのか!」
「舐めてるのはそっちですよ」
のらりくらりと口答えする夏目についにガウスがキレた。
「もういい!あとは一人でやる!」
人間の隠れた急所、鼻。ガウスは夏目のそれを的確に撃ちぬいた。
これは致命的なダメージ。夏目は顔から血を流し倒れた。
「お前はもともと信用ならんのだ。まったく、恩を忘れおって」
「いやいや。そうでもないと思うよ?」
なんと撃たれた夏目がむくりと起き上がった。百戦錬磨のガウスもこれには肝を潰す。
「な、なんだ貴様は! このバケモノめ!」
「ひどいなぁ。僕は紛れもない人間ですよ」
夏目が顔を手をやると途端に皮が剥がれた。そして着ていた服も脱ぎさる。
「どうもです」
そこにいたのは夏目とは似ても似つかない少年だった。見たところ中学生くらいだろうか。
「な、な……」
ガウスもそのまわりにいる部下たちも言葉が出ない。
「何者だ!」
一人が叫ぶとともに全員が正気に戻り、彼に銃を向けた。
「そんな物騒なものしまってよ。僕はOKEYAが誇る宇宙一の諜報員。お見知りおきを」
「何を言っている! 夏目をどこにやった!」
「いや、別に夏目さんにはなにもしていないよ? そろそろ本物がコンタクトしてくるだろうし潮時かなって」
「どういうことだ」
「おっと。時間みたいだ。じゃあね!」
言うがはやいか足元の脱出ポットを起動させ火星へ飛び出していった。
あまりの出来事にガウスたちは固まっている。
そんな彼らに通信係がしたり顔で報告した。
「中将、今本物の夏目さんと連絡が取れました。どうやら船団の自動操縦システムに細工したのはあいつだったみたいです。夏目さんのところには中将からの偽の指令が入っていたそうで……」
「煩い! そんなことだろうと思ったわ!」
OKEYA最後の一人は見事な奇襲でKOUTORIIを撹乱せしめた。




