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Episode-25 泥沼のネプチューン

「それでは試させてもらおうか」

 ガラクは徐にヘルメットを被った。


「頭上注意ってか? 足元も気にするべきだぜ!」

 艦長が何かを投げつける。今度は石ではない。庶務お手製の爆弾だ。

 投擲スキルがあるのかないのかは定かでないが、これで倒せればと期待していた三人だったがそうはいかなかった。


「ほう」

 ガラクの体が急上昇し爆発を回避した。跳躍ではなくもっと機械的な力が働いたようだ。


「残念だったな。私にとって重力などあってないようなものだ」

「その足、サイボーグか!」

「ご名答。G(重力)に縛られないというわけだ」

「じゃあそのヘルメット、バックパックも……?」

「察しがいい。今の私はまさに歩く兵器!」


 庶務とガラクのやり取りを艦長と監察官は異国のラジオ番組かのように聞いていた。


「と、とにかくやっつけるぞ!」

「おお!」


「そううまくいくかな」

 再び降下してきたガラクの白衣が内側から破れ、新たに六本の腕が伸びてきた。


「何あれ」

「あれもサイボーグですよ先輩」

「手と足で八本とかタコかよ」

 艦長は妙なところで呆れる。当然そんな場合ではない。


「では……今度はこっちからいくぞ」

 言うがはやいかサイボーグの腕が三人に向けてレーザーを発射した。


「うおっ!?」

 なんとか消し炭になるのを回避した三人。監察官が二人を抱えて飛び退いていなかったら危なかった。


 状況の打開を図る艦長。

「ここはバラけよう。俺が引きつけるから信さんと変態はやつのサイドに回って!」

「わかった!」

「誰が変態だ!」


 走り出す二人。艦長は監察官から黙って借りた銃でガラクを狙う。

 しかし、サイボーグの腕で防がれてしまう。

「木星の古いモデルか。話にもならんな」


 続いて投げつけられた爆弾も飛び上がって回避。ダメージが通らないうえに機動力もある。

「こいつは厄介だな! でも!」


 その隙をついてガラクを三方から囲む陣形が出来上がった。


「でぇぇぇい!」

 監察官が、庶務が、そして艦長が三方からガラクに向かっていく。さっきと違い今度はガラクの死角をとっている。


 しかし。

「……まあ事実上最初だ。直は勘弁してやろう」

 三人は爆発に巻き込まれて吹き飛ばされた。


「どうした。六本の腕それぞれからのレーザーには対応できないか?」

 なんとか起き上がった三人に問いかけるガラク。突き刺さる視線に気がついた。


「あぁ。このヘルメットか? これは私のサイボーグと脳を繋ぐ役割をしている。そして気がついていると思うがカメラビットが多数内臓されていてな。死角に回り込むなどというのは徒労に終わるぞ」


 人数でみれば三対一。しかしガラク相手には意味をなさないのかもしれない。




☆★☆




 二つの刃から火花が散る。総長のコシガヤとミャットンのサーベルが激しくぶつかり合う。


 前回木星で戦ったときよりも互いに力量が格段に上がっている。それは太刀筋に如実に表れていた。


「あんたもしつこいわね!」

 真一文字に斬りつけるミャットン。パッツンした髪の怨みを晴らすべく連続で叩き込む。


「それほどでも!」

 巧く受け流す総長。前回よりは余裕があるようだ。


 激しい斬り合いのなか、総長が先に動いた。

「獣草田流、『大袋』!」

 木星でも使った技。あの時と同じようにサーベルで受けようとしたミャットンだが、半拍遅れた。


「ぐぅっ」

 飛ばされなんとか着地したが、衝撃でサーベルを取り落としてしまった。

 好機とみて追撃を狙う総長。


「なーんて」

 やはりボウガンを隠し持っていた。矢が高速で総長を襲う。


 しかし今回はそれなりに用意があった。

「そうくると思った!」

 足元に来る射は飛び退いてかわし、胸元や顔を狙うものはコシガヤで叩き斬る。かなりの反射を必要とする技術だ。


「ほー、驚いたね。昔の地球にそんなことをする剣豪がいたらしいけど」

「俺は剣豪なんて大したもんじゃない。本職は茶道だ」


 それを聞いてミャットンは右手を高く挙げた。


「じゃあ私はその茶人をここで始末する。そうなるでしょ?」

 彼女の手に原子収縮で光る刀が現れた。


「名刀ヒメミヤ。そっちのコシガヤよりも軽いけどその分小回りが利く。いい買い物したわ」

「そっちも本職隠してたってことかよ!」


 今度はミャットンから総長へ斬りかかる。先ほどまでの力押しではなく手数で攻めるスタイルだ。


「木星でも地球でも邪魔されたけど仏の顔も三度までよ!」

 こちらも一筋縄ではいかないようだ。




☆★☆




「いいかげんに、してっ!」

 リラが機関銃をぶっ放す。


「する気はさらさらない!」

 弾の間をぬって走り、岩陰に飛び込む会計。そこからちょいと顔を出しライフルでお返しの弾丸を見舞う。


 しかしリラもそれは読めていたようで原子収縮で機動隊の盾のようなものを出してきっちり防いだ。


「かくれんぼする気なら岩ごとやる!」

 リラは原子収縮でグレネードランチャーを取り出した。


「こいつの射程はおよそ500メートル。もう逃げられないよ」

 このまま隠れていてもジリ貧だと判断し、会計は勝負に打って出た。


「試し撃ち、いくよ!」

 意気揚々と放たれた化学エネルギー弾。衝撃(インパクト)にダメージの全てがこもる運動エネルギー弾とは異なる特性を持つ。


「人間一人にやりすぎだって……」

 文句を言いつつも発射の反動から軌道がややぶれることを計算し、会計は難なくかわした。


 そして今度は拳銃でリラを狙った。


「なにすんの!」

 慌てて伏せつつキレたリラ。次を放った。


 今度は見当外れの方向へ。その隙に会計はOKEYAを運んできた宇宙船のほうへ走る。


「ちょっと! どこいくの!?」

 慌てて追いかける。その足どりはどこかおぼつかない。


 会計は宇宙船に乗り込んだ。ガウスの号令で天井部分は卵の殻のごとく割れているが動かすのには遜色なさそうだ。


「アッタマきた。こうなったらこれで!」

 再び原子収縮で何かを出した。奇妙な形状の銃火器だ。抱えきれないほどの大きさがある。


「ルドゥムグさんから借りてるやつだけど……えい!」

 轟音が響いた。

 瞬間、リラは反作用によって後ろに飛ばされた。

 脱げた靴を履き直し起き上がる。そしてターゲットを確認。


「やった……やった! 勝った! ミャットン、見てた?」

 もちろんミャットンはそれどころではないわけだが。

 なんという威力。会計が乗り込んだ宇宙船は木っ端微になっていた。

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