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Episode-11 ジソンの激突

 倉庫内では今だに激しい戦いが続いていた。


 至近距離での突きや蹴りといった格闘戦。もし脇で見ている者がいたら、かつてのアクション映画を思い出したことだろう。


「哈!」


 監察官の技一つ一つは正確にルドゥムグを捉えているのだが、間合いを外す技術に長ける敵を相手になかなか決定打が出ない。


 ルドゥムグからの打撃は大したことがないのだが、自らの技が効かないのなら意味がない。


 インファイトでは監察官に敵わないとみたルドゥムグは間合いをとりつつ打撃を捌いている。その中でもキツそうな当たりは脇に飛び退いてかわす。


「さっきからセコいことしてんじゃねぇ!」

 ルドゥムグの戦い方に激昂する監察官。無駄に絵になる。


「そんなこと言ってもね。ボクは肉体労働は苦手なんだ。まともに戦ったらキミには勝てないよ」


「黙れ!」

 うそぶく彼に次から次へと叩き込むが、やはり弾かれてしまう。肩の日本人形の髪が揺れるばかりだ。


「もうこのへんにしてさ。元帥にOKEYAの解散を持ちかけてくれないかな?」


 さすがに言葉が過ぎたようだ。

「煩い! 俺はお前みたいな奴が気にくわねぇんだ! さっさとタコ殴られろ!」


 監察官のボルテージが上がってきたのか、少しずつ技がルドゥムグを捉えはじめた。


 手応えを感じてきた監察官。勢いに乗る。


「哈!」

「くっ」


 重い一撃が肩にヒット。すかさず人形を庇うルドゥムグ。次の一撃の前にひらりと真後ろのコンテナに飛び乗る。


「舐めプレイにも程があったかな。キミとの時間は楽しかったけどここで時間切れのようだね」


 懐からあの禍々しい拳銃を取り出し監察官の眉間を狙う。もう片方の手にはバールのようなもの。彼も用意していたようだ。


「卑怯だぞ、この仮面野郎!」


「一個は解除されちゃったからね。さっきの彼、なかなか優秀なんじゃないかな」

 聞き流すルドゥムグ。


「キミもこんなに強いとは思わなかった。ここで殺すのはあまりにも惜しい」


 禍々しいその銃口から白い光弾が放たれる。一般人なら直撃するところを監察官は体を捻ってかわした。


「舐めるな。俺は銃弾をかわす訓練をしてきたんだ。そんな距離から撃たれたっ――――」


 なんと、かわした筈の光弾がそのまま戻ってきて監察官の背中を直撃した。


 何が起きたのかも分からず倒れる監察官。


「ちょっと寝ててもらうよ」


 どうやら監察官は眠らされたようだ。


「ボクだ。とりあえず作戦完了。ここを離れよう」

携帯端末(スリー・フォン)で連絡をとる。


 監察官の隣にバールのようなものを置いて倉庫を出るルドゥムグ。

「さて、これで作戦完了。当初の予定から外れたけどなんとかうまくいったね」


「待て!」

 そのままリラ達と合流しようとしたところを、バールのようなものをやっと処理し、空港の人々の避難を完了させた庶務が立ちはだかる。


「ああ、キミか。バールのようなものをよく解体できたね」


「武中先輩に何をした」

 珍しく庶務が怒りを露にしている。


「まあまあ。そう怒りなさるな。ボクにはキミと遊んでる暇はないんだ」

 手をヒラヒラと振り歩き出すルドゥムグだが、背後から庶務が飛びかかった。


「赦さない!」

 仮面にパンチを喰らわせる。やや凹む仮面。


 しかしルドゥムグも油断していたわけではないようだ。


「ゲームオーバーだよ」


 そのままホールドした庶務の首に手をまわして、後頭部に先ほどの白い弾丸を放つ。




☆★☆




 会計対リラの銃撃戦はやっと転機を迎えた。リラの武器、正確には弾薬が一つを残して尽きてしまったのだ。


 お互い障害物に隠れながらの撃ち合いなのでなかなか決着がつかなかったのだ。


「あんたもなかなか粘るね! でも、これで終わり!」

 コンテナの後ろに隠れつつ、リラは給弾不良を起こしたステンを放り出し、小銃のM-100を取り出した。


「これであんたもハチの巣に、ってぎゃー!」

 ショットの前にリラはコンテナごと吹き飛ばされた。爆炎とともに地面に叩きつけられ、ボロボロになりつつなんとか立ち上がるリラ。

 痺れを切らした会計がゴツい兵器を用いたようだ。


「こ、この焼ける臭いは……対戦車バズーカね、ごほっ……」


 会計がほぼ戦闘不能となったリラに歩み寄る。

「ご名答。さすがに死には至らないと判断し、使わせてもらった」


 言葉が出ないリラ。彼女が思っていたよりOKEYAは非道な連中らしい。まさかコンテナごとぶっ飛ばすとは。


「対人でそこまでする……? 死んだらどうするのよ……」

 涙目で怒るリラ。彼女も会計を亡き者にしようとしていたので人のことは言えない。


「……」

 そのリラの額に銃を突きつける会計。昔の地球で流行ったなんとかネーターを彷彿とさせる。


「投降、イエスかノーか」

 と殺場に送られる豚を見るような目でそんなことを言われたらどんなに肝の据わった者でも震えるだろう。


「ひいっ……」

 普通ならここで降伏して捕虜となるところ。しかし、リラはこんな時のための備えもしていた。


「なーんてね。それっ!」

 一瞬の隙をついて足元にエウロパでルドゥムグが使用した閃光弾を叩きつける。


「くっ……」

 とてもではないが目を開けていられなくなった会計をおいてリラは這う這うの体で逃げ出した。


「これは仕方ない」

 視界が晴れ、会計はすぐ近くで戦っているであろう総長を探しに行った。



「この! このこの!」

 ミャットンがサーベルで次々と総長に斬撃を仕掛ける。力任せに見えてその太刀筋にはかなりのキレがある。


 応じている総長はどちらかといえば守勢。押されている。


「早く降参しなさい!」

 ミャットンとしてはリラのようにルドゥムグのもとへ向かいたいのだろう。


「冗談キツいぞ!」

 コシガヤを操り、なんとか凌ぐ総長。


「俺だってみんなと合流したいんだ! やられるわけにはいかない!」

「しつっこいわね!」


 たじろいだミャットンの僅かな隙を総長は見逃さなかった。

「そこだ!」

「きゃ!」


 コシガヤがミャットンの髪をごっそりと斬り落とした。彼女の身長がもう少し高かったら致命傷を負っていただろう。


「チビで得したな」


 烈火の如く怒るミャットン。

「チビ言うなぁぁぁぁぁぁ!」

 怒ると大振りになりがちだ。総長の狙い通りミャットンはサーベルを振り上げた。


「獣草田流、『大袋』!」

 秘伝の剣法が炸裂。コシガヤを逆手に構えて敵の胴を攻める大技だ。


「おっと」

 なんとかサーベルで防いだミャットンだったがそのサーベルの刃が折れてしまった。


 剣など刃物というのは敵の太刀を受け止める時には脆いものなのだ。


「どうする? 降参するか?」


 ぺたりと座り込んだミャットンに投降を勧める総長。捕まえて警察にでもつき出すつもりなのだろうか。

「別に悪いようにはしない。ただ、色々と喋ってもらうぞ」


「……ふふふ。あんたは本当に馬鹿だ」


 言うがはやいかミャットンは手のひらサイズのボウガンを総長に向け引き金を引いた。

「さよなら!」


 その刹那。

「危ない!」

 なんとか間に割って入った会計が簡易バリアを使った。弾丸は総長の頬を掠めて飛んでいった。


「助かったよ。メガ姉」

「今はこいつをなんとかしないと」

 凶弾の射手を睨み付ける会計。


「さーて、私もみんなと合流するかな」



「待て! ……うっ」

 再びコシガヤを抜こうとした総長だったが急に崩れ落ちる。


「総長!?」


 それを見て笑うミャットン。


「その矢には――――が含まれているの。頬をかすっただけでもそうとうな深手になるわよ」


「総長! しっかり!」

 苦しむ総長に原子収縮させていた救急箱の中の万能薬、ポーテルを注射する会計だが、なかなか効果が表れない。


「じゃ、またね」


 リラとはうってかわって意気揚々と立ち去るミャットン。両手が塞がっている会計にはそれを追撃する術はない。

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