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自己紹介をもう一度  作者: 穿石(センセキ)


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3/3

解答編

 さて、謎解きの時間だ。

 キョウカは腕組みして鷹揚にうなずいており、私に探偵役を任せるつもりらしい。


「えー、この中にいる噓つきを特定するにあたり、私たち個々人の名前がカギになります」


「まず、私たちの名付け親である自称・如月蝶々について。元『十二単』メンバーには周知の事実ですが、彼女はあるこだわりを持っていました。それは、いくつかの名称からもうかがい知れます」


「如月蝶々というのは彼女が名乗った活動名ですが、苗字の『如月』は2月の別名であります。その語源は、寒くて厚着をする様子を指す『着更着きさらぎ』とされています」


「名前の『蝶々』は言うまでもありませんね。わざわざ繰り返し記号を用いています」


「彼女の組織した『十二単』……昔の貴族は何枚も重ね着して、その色の組み合わせでオシャレバトルをしていたといいます」


「つまり、如月蝶々の趣味は『重ねること』……。彼女の名付けた『十二単』メンバーにもその趣向が適用されています」


「では、自己紹介3周目を始めましょう。皆さんの名前の漢字表記を教えてください。それでハッキリします」



***



 2周目と順番は同じだ。


「カナです。夏に夏を重ねて夏夏(カナ)

 正直なところ、夏越の大祓については名前しか知らない。『夏』1文字で『な』と読ませる単語を示す必要があったのだ。


 2人目。

「香りに香りと書いて、香香(キョウカ)だ。よろしくな。ぶっちゃけ将棋は詳しくない」


 3人目。

「砂塵の『サ』に土砂崩れの『シャ』で砂砂(サシャ)。あ、砂時計は本当に買った。おすすめ」


 4人目。

「平和の和を2つ並べて、和和(ノドカ)です~。簡単だったかしら」


 そして、顔面蒼白の5人目。

「早い苗で早苗(サナエ)……。嘘、こんな単純なことでバレるなんて……」



***



 結局、サナエが首謀者だった。隠し持っていた鍵をキョウカが強奪し、私たちは脱出することができた。キョウカが後始末を買って出たので、サシャ・ノドカ・私の3人は一足先に退出することになった。残ったキョウカはたぶん、暴力でサナエに話をつけるつもりなのだろうけれど、知ったことではない。


「2周目の自己紹介のアレって、ブラフじゃなかったのね」


 帰り道、ノドカが耳打ちしてきた。


「サナエが言っていたのって確か、好きな短編小説は太宰治の『駈込み訴え』……ですか。すみません、実は読んだことがなくて」


「あらあら」

 ノドカはころころと上品に笑った。


「あの小説の語り手って、世界一有名な裏切り者なのよ」

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