解答編
さて、謎解きの時間だ。
キョウカは腕組みして鷹揚にうなずいており、私に探偵役を任せるつもりらしい。
「えー、この中にいる噓つきを特定するにあたり、私たち個々人の名前がカギになります」
「まず、私たちの名付け親である自称・如月蝶々について。元『十二単』メンバーには周知の事実ですが、彼女はあるこだわりを持っていました。それは、いくつかの名称からもうかがい知れます」
「如月蝶々というのは彼女が名乗った活動名ですが、苗字の『如月』は2月の別名であります。その語源は、寒くて厚着をする様子を指す『着更着』とされています」
「名前の『蝶々』は言うまでもありませんね。わざわざ繰り返し記号を用いています」
「彼女の組織した『十二単』……昔の貴族は何枚も重ね着して、その色の組み合わせでオシャレバトルをしていたといいます」
「つまり、如月蝶々の趣味は『重ねること』……。彼女の名付けた『十二単』メンバーにもその趣向が適用されています」
「では、自己紹介3周目を始めましょう。皆さんの名前の漢字表記を教えてください。それでハッキリします」
***
2周目と順番は同じだ。
「カナです。夏に夏を重ねて夏夏」
正直なところ、夏越の大祓については名前しか知らない。『夏』1文字で『な』と読ませる単語を示す必要があったのだ。
2人目。
「香りに香りと書いて、香香だ。よろしくな。ぶっちゃけ将棋は詳しくない」
3人目。
「砂塵の『サ』に土砂崩れの『シャ』で砂砂。あ、砂時計は本当に買った。おすすめ」
4人目。
「平和の和を2つ並べて、和和です~。簡単だったかしら」
そして、顔面蒼白の5人目。
「早い苗で早苗……。嘘、こんな単純なことでバレるなんて……」
***
結局、サナエが首謀者だった。隠し持っていた鍵をキョウカが強奪し、私たちは脱出することができた。キョウカが後始末を買って出たので、サシャ・ノドカ・私の3人は一足先に退出することになった。残ったキョウカはたぶん、暴力でサナエに話をつけるつもりなのだろうけれど、知ったことではない。
「2周目の自己紹介のアレって、ブラフじゃなかったのね」
帰り道、ノドカが耳打ちしてきた。
「サナエが言っていたのって確か、好きな短編小説は太宰治の『駈込み訴え』……ですか。すみません、実は読んだことがなくて」
「あらあら」
ノドカはころころと上品に笑った。
「あの小説の語り手って、世界一有名な裏切り者なのよ」




