ピンクブロンド令嬢の物語は始まらない
突然、思い出した前世の記憶。そして、髪は見事なピンクブロンド。
私って、ヒロイン?それとも地雷物件?
男爵令嬢に転生した私の物語です⁇
ある日、突然、前世を思い出した。
前世は、地球の日本国の首都東京で生まれ育った。
文明が発達して、物があふれていた。
前世の私は、本が好きで、とりわけ異世界ファンタジーが大好きだった。
そして、転生した今、ここは地球ではない。
「やったー。異世界転生だー。地球の知識で無双してやるわ~。」
拳を振り上げたところで、鏡に映った姿に漠然とした。
容姿は上々。顔の作りは申し分なく可愛い。
太ってもなく、どっちかと言えばスレンダー。
でも、将来は胸にも期待できそう。ウエストも引き締まっている。
これにはニンマリだ。前世とは雲泥の差だ。
だが、だが、髪が、髪が、ピンクブロンドだった。
あまりのショックに手と膝をついてうなだれている。
「なんでピンクブロンド?私って、もしかして庶子?」
家は男爵家。これもまずい。
前世の知識では、男爵家でピンクブロンドは庶子が定番。
定番中の定番、地雷物件だ。
しばしの膝つきから抜け出し、両親に出生時のことを聞き出そうと・・・。
「お嬢様って言ってもねえ。
「そうよね。旦那様がメイドに産ませた子でしょ。」
「奥様も、お可哀そうに。」
「でも、貴族なんだから仕方ないんじゃない。」
「お子様をお産みできなかったんですものね。」
メイドのうわさ話に遭遇した。
聞きに行くまでもなく問題解決だ。
「解決なんてしてないわ。
どうする私。
逆ハーしちゃう。
私が、ヒロイン‼」
学院の入学は13歳からで、あと2年。
「入学前にイベントとかあるのかしら。
聖女認定されちゃったりして。」
妄想が爆走している。
ひそかに『ヒール』を唱えてみた。成功するはずが無い。
誰も病気もケガもしていない。そもそも、ここに私一人だけだ。
指をちょっと切ってみる?痛いから嫌だ。
メイドにたのんで・・・。駄目よね。
暇だし、孤児院にでも慰問に行ってみる。
私って、魅了の魔法も使えるの。
さらに妄想が爆発している。
取り合えず、落ち着くため、お茶を頼む。
頼んだメイドのつぶやきが・・・
「庶子のくせに・・・。」
これが決定打だ。
私は、庶子決定ね。
あんなに、お母様は優しいのに。
きっと、陰で……。
色々とうんうん唸っていたら、
「お嬢様、お茶をお持ちしました。」
さっき頼んだメイドじゃあない。
「ありがとう。
そうだ。ねえ、ピンクブロンドの人って私以外にもいるの。」
「結構いますね。私の妹もピンクブロンドです。
それに、巷でピンクブロンドの女性を主人公にした小説が流行ってます。」
「どんな話なの?」
「貴族学院を舞台に、男爵家の庶子が色々にぎわすんです。
みんな、当家がモデルだとキャッキャしてますよ。」
「やっぱり……。」
「お嬢様は、間違いなくご夫妻のお子様ですし、残念がる子もいるんです。」
「エッ、」
「中には、本に添って芝居ごっこまでする始末ですよ。」
「私って、庶子じゃあないの?」
「違います。もしかして、ごっこをお聞きになりました。
私は、お嬢様がお生まれになった時を存じております。」
「そう……。」
「お嬢様は、奥様のお子様です。全く、クビ案件ですよ。
奥様にご報告いたしてきます。
失礼します。」
一人になったピンクブロンドの私。
「ピンクブロンドの人って、いっぱいいるんだ。
私は、お母様の血の繋がった子供。それは、嬉しい。
でも、私って、
ただ異世界に転生しただけ?
王子さまは?
聖女認定は?
モテモテ期は?」
「お嬢様。何ブツブツおっしゃっているんですか。」
いつの間にか戻ってきたらしい。
「魔王は? 勇者は?」
「魔王様ならいますよ。魔王国の王様です。
どこの国とも友好的な国ですよ。
勇者様? どんな方ですか。」
「聖女は?」
「聖女様なんていませんよ。」
魔王はいるけど、勇者も聖女もいない。
私の転生特典は…… 無い!!
「お嬢様。床に手をついて座ったらドレスが汚れますよ。」
二度目のうなだれ姿勢だ。
「私は、ただの男爵令嬢。」
再確認をする。
「普通が良いのよ。普通が…。
高望みや妄想は禁止よ。」
物語は、始まる前に終わった。
そもそも、始まってもいない。
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