Act1 偽りの救済をデリートせよ 5
踏み込んだ佐伯の執務室。
ミハイルは冷笑を浮かべ龍輝の眉間に銃口を向けた。彼の銃は特殊だ。
「小僧……。丸腰で、この『科学の結晶』に勝てると思っているのか?」
バババンッ‼
三連射。だが、只の連射ではない。一発目が逃げ道を塞ぎ、二発目が回避先に着弾し、散髪目が本命を狙う。
龍輝は「チッ!」と舌打ちし持ち前の運動神経で回避するが、弾丸が足元の床をえぐり、火花が散る。
「龍輝、希!銃口にセンサーがついています。赤外線で君たちの熱源を追尾している__ただの道具じゃなく小さなコンピューターだ」
航聖の声がインカムから響く。
「ハッ、逃げろ逃げろ!この銃のAIは君たちの次の動きを予想するんだよ!」
佐伯が狂ったように笑いながら、希の眉間に赤いレーザーサイトを固定した。
「……っ、希、伏せろっ!」
龍輝が飛び込もうとするが、ミハイルの銃は既に発射プロセスを完了している。希の額は撃ち抜かれる。
「……させませんよ。僕が、そんな安物の計算機に負けるはずがない」
インカムから聞こえたのは、いつもの淡々とした声ではなく、怒りを含んだ航聖の声だった。
その瞬間、ミハイルの拳銃のインジケーターが真っ赤に点滅し『System Error: Overridden by K.T.』
という文字が浮かび上がった。
「な……⁈銃がロックされた?馬鹿なオフラインのはずだぞ?」
「ミハイルさん、甘いですね。その銃、あなたのスマートウォッチと心拍データを同期させていたでしょう?」
航聖がハッキングの成功に顔をほころばせた。
「龍輝、希……今です」
航聖がエンターキーを叩きつけた瞬間、ミハイルの銃口のオートフォーカスが狂い、勝手にマガジンが排出され、彼の手の中でただの『鉄の塊』へと成り下がった。
「あ、あわわ……っ!」
「……へっ、サンキュー、メガネ!……あんたもやるじゃんっ」
武器を失い呆然とするミハイルに龍輝の飛び蹴りと希の鋭い正拳突きが同時に炸裂。
執務室の窓ガラスが粉々に砕け散り、ミハイルの野望はこうして「デリート」されたのだった。




