Act10 強制終了(シャットダウン)
「……もういい。おまえら、出ていってくれ」
文句を言いながらも、嵐のような二人はドタドタと騒がしく出ていった。扉が閉まるまで「七味とステックシュガー」について言い合っている声が聞こえてくる。
バタンと扉が閉まり演算室にようやく「本来の静寂」が戻ってきた。
「……ふう。やれやれ、これだから非効率なものは……」
航聖は独りごとを呟き、眼鏡をはずして深く椅子に背を預けた。
空のカップが3つ。
「……」
片づけようとしたところに薫が入ってきた。
「……お疲れ……でも案外、楽しそうだったね」
薫は、航聖の横に置かれた予備の椅子に腰を下ろすとクスクスと喉を鳴らした。
「……見ていたなら、少しは援護して欲しかったですね。あいつらの味覚は、もう僕には理解不能だ」
「ええ、随分、楽しませてもらったわ……久しぶりにね」
航聖は自分のカップを手に取り、薫と二人分の豆を挽きだした。
「……ふふ。やっぱり雑味のないブラックがいいわね」
「同感ですね」
二人は並んで、窓の外に広がる校庭を見つめた。騒がしい二人(龍輝と希)がいなくなった後の部屋は、かつて二人(航聖と薫)が出会った図書室のような、凛とした空気に包まれている。
薫が生徒会室に戻ろうとしたとき、航聖がポツリと溢した言葉。
「……僕は、いつか彼らを裏切るかもしれない」
「……えっ?」
薫が驚く。ドアノブに手を掛けたまま動きを止める。
「……僕はいつか彼らの期待を無効化にしてしまうかもしれない」
「……無効化ですって?無理だと思うけど?……あの子たちを甘く見過ぎだわ」
二人が関わってくればくるほど、なぜかその場を逃げ出したくなる。その「逃げ癖」こそが今の彼の不安材料なのかもしれない。
薫は振り返らずに、クスリと笑った。
「いいじゃない。航聖が関りを切ろうとしても、あの番犬たちは多分、君の服の裾をがっしり噛んで離さないと思うわよ。その証拠に、『立ち入り禁止』の札が何の効力も無くなっているしね」
「……迷惑な話だな」
「じゃあね。ご馳走様」
バタンと戸が閉まる。
少しづつ、航聖は彼らとの関係が変わってきたことに気づき始めていた。
さて、一旦ここで終了します。次に向けて。おまけで、ビブリオバトルを次に置きました。
ひとまず有難うございました。




