Act8 衝撃の再会
刹那が航聖の招待状?によって襲撃をした翌日、高級車が次々と学園の門の前に並んだ。
中から黒スーツの男たちが、次々に降り立つ。中心にいる加納 耀心は、いつもの冷徹な表情ではなく、どこか上気した、焦るような面持ちで、旧館へと足を進めた。
「朔夜、本当に瑞穂学園にいたのか?……航聖がこんな場所に?」
彼はまだ、航聖のことを、自分の都合のいいようにしか解釈していない。
自分が行けば、かつてのように理知的な微笑みを返してくれると思っていた。そんな淡い幻想を抱き、彼は航聖の城(生徒会室の横)のドアを、ノックもせずにいきなり開けた。
「航聖!やっと会えた‼……」
その声が響いた瞬間、キーボードを叩いていた航聖が驚き、反射的に椅子から立ち上がった。
航聖の脳内では、ドアが開く「物理的な衝撃音」と、記憶の底に封じ込めていた「耀心の声」が最悪の形でリンクした。
「……あ、……お……」
航聖の視界が歪む。声が出ない。航聖の言葉でいう「エラーコード」だ。彼にとって、予測不可能な「過去からの闖入」は、精神の安全保障を根底から覆す。
耀心の姿が視覚情報として目に入ってきた瞬間、中学時代の「輝かしい親友の姿」と、暴行を受けた際の「自分を見捨てた耀心の不在」の記憶が混濁していた。
「……航聖?どうしたんだ?……何故そんなに怯える?……ああ、安心してくれ。お前を痛めつけた連中は、もうこの世にはいない。もう、大丈夫だ……一緒に行こう」
耀心が親愛の情を込めて一歩踏み出す。
だが、その一歩は航聖にとって「自分を支配し、また元に連れ戻すための巨大な足音」の他ならない。
「……来ないでくれ……!来るな……くるな、くるな……ッ!」
航聖はガタガタと震え、椅子を倒し、窓際まで後退った。呼吸は荒く、過呼吸気味の酸素不足で、思考が霧に包まれる。恨み、悲しみ、恐怖__整理できない感情がシングルタスクの彼の脳を焼き切り、ついに頭を抱えて叫んだ。
「君が……君のせいで僕は「壊れた」……君の知っている「玉木 航聖」はもう死んだんだよッ!」
嘘が付けない航聖の叫びはそのまま耀心への、最大級の「拒絶」となって突き刺さる。
耀心は、差し出した手を空中で凍り付かせたまま絶句した。
自分の「救済」が、航聖を死ぬほど怯えさせているという現実が受け入れられない。
「そこまでにしてちょうだい。……加納 耀心さん」
パニックの渦中にある航聖を遮るように、薫が静かに、けれど圧倒的な威圧感を持って二人の間に割って入った。
「……君が……姫神会がこいつを隠していたのか?……消息を絶って以来、くまなく大学を調べたが、こんなところに隠していたとは」
「隠したですって⁈人聞きの悪いことを言わないで下さる?……あなたが手放したものを私が偶然見つけただけよ。文句を言われる筋合いはないわ。そうでしょ?姫神会の番人さん」
薫は震える航聖を自分の背中に隠し、耀心を冷ややかに見据えた。
「今の航聖は私の脳なの。あなたの思い出の中にいる幽霊じゃない……これ以上、私の大切なパートナーを傷つけるというのなら、容赦しない」
明らかに、薫から耀心への挑戦のようにも見えた。
やっと物語が自分なりに、見えてきた。
耀心と航聖の過去編が要りますね。
後々書くことにします。




