Act1 偽りの救済をデリートせよ 3
「……廊下のクリアを確認。二人ともそのまま直進してください。」
航聖の無機質なナビゲートが響く。
「次のフロアはオペレーション室。一人いますが、問題ありません。……ただその先の執務室前にに控えている二人は、実弾の拳銃を携帯しています。先ほどのようにはいきませんよ」
航聖の言葉に、龍輝は不敵に唇を舐めた。
「拳銃か……ようやく仕事らしくなってきたじゃねえか」
「先輩、無茶しないでくださいね。……死なれたら後味悪いですから」
希はそう言い残し、まだ熱を持った拳を握り直して、次の部屋へと走りだした。
廊下の制圧を終えた二人の前に、重厚なスチール製の防火扉が立ちはだかる。ここを突破すれば、組織の中枢であるオペレーションルームだ。
「……希、龍輝、扉の向こう(オペレションールーム)はまだ異変に気付いていないようです。……今、僕が内部音声を切りました。__突入まで、3,2,……」
航聖のカウントが「0」を刻むと同時に、電子ロックが解除され、扉が簡単に開いた。
「な……ッ⁈」
ブルーライトに照らされた室内で、数台のモニターに向かっていた男が慌てて振り返る。だが、言葉を発する暇はなかった。
龍輝が音もなく間合いを詰め、逃げようとした男の肩を背後から掴む。
「悪いね、仕事なんだ。ちょっくらおねんねしてくれや」
龍輝の手刀が男の頸動脈を正確に突いた。男はうめき声一つ上げられず、デスクの上に突っ伏した。
「……オペレータールーム終了。航聖、次!」
「了解……今から、そちらの全サーバーの権限を掌握します……OK、顧客データ及び被害者リストのバックアップ開始、完了と同時に組織の資産をヒメと凍結し、ログを破壊します」
キーボードを叩く乾いた音が、インカム越しに心地よく響く。
しかし、その静寂は長くは続かなかった。
「……待ってください。執務室から男が二人出てきます」
航聖の声に緊張が走る。
「……二人とも、ジャケットの内側に……間違いない、拳銃です」
希の背筋に冷たいものが走った。道場で磨いてきた空手は、拳や蹴りで戦うものだ。火を噴く鉄の塊を相手にしたことは一度もない。
隣の龍輝を見る。彼は不敵に笑っていたが、その瞳には獲物を狙った猛獣のような鋭い光が宿っている。
「……なんだよ、震えていんのか?」
「……うるさいわね。武者震いよっ!」
「そうか……ならいい。あいつらが銃を構える前に、一気に決めるぞ」
廊下の突き当り、ボスの執務室の扉がゆっくりと開いた。
そこから現れたのは黒のスーツの冷酷な眼差しの男たち。考える時間はない。
インカムからこれまで沈黙していた薫の楽しそうな、しかし冷たい声が届いた。
「……彼らの誇りごと叩き潰してらっしゃい。【BREAK】よっ!」
その言葉を合図に、希と龍輝は、死線へと足を踏み出した。
そうそう、こういうのが書きたかった!




