Act1 偽りの救済をデリートせよ 2
暗闇に包まれた廊下は、一瞬にして、怒号と暴力の渦に飲み込まれた。
「な、なんだっ⁈」
懐中電灯が乱反射し、三名の警備服の男たちが腰の警棒を引き抜く。彼らは元警察や警備員崩れの荒くれ者だ。素人相手なら十分すぎる戦力だが、今、彼らの前に立ちふさがったのは、その枠組みをはるかに超えた「掃除屋」たちだった。
「……三人……希、行けるな?」
「……誰に言ってんの?」
希は低く構え、最短距離で正面の二人へと踏み込んだ。警棒が空を切る風切り音。それを紙一重でかわすと、希の鋭い足払いが一人の警備員の足首を捉える。自分の体重を支え切れずに体勢を崩した男の顎に、希は容赦なく下からの掌底を叩き込んだ。
脳を揺らされた男が、糸が切れた人形のように崩れ落ちる。
「てめぇ、この女……!」
隣の警備員が横なぎに警棒を振り回す。希はそれを避けるのではなく、あえて一歩ふみこむことで懐を殺し、相手の右腕を自らの肩でブロックした。鈍い衝撃が走るが、希の体幹は微塵もゆるがない。
「正拳突きッ!!」
至近距離から放たれた正拳が、鳩尾を完全に打ち抜いた。
ドッ、という鈍い音が、静まり返ったビルに響き、男は床に沈んだ。
「……相変わらず、お前の一撃は重いねぇ」
残る最後の一人は、龍輝が仕留めていた。龍輝は警棒による攻撃をあえて左腕で受け流し、相手の首筋を強引に掴むと、そのまま膝蹴りを腹部にめり込ませる。
「が……は……っ」
「おら、寝てろ。こんなモン、振り回すんじゃねえよ」
龍輝が手を離すと、男はそのまま仰向けに倒れた。これで廊下を封鎖していた第一関門は「掃除」され
た。




