Act2 嵐の転入生 2
2-Aの教室。ヒメの席は教室の最後列の一番窓際にある。そこは、学園のすべてを見下ろすことのできる彼女の『玉座』であった。そして、その隣__本来は空席だった場所に龍輝がドカリと腰を下ろした。
「__よォ、ヒメ。この席、風通しだけは良さそうだな」
「ええ。ここならだれにも邪魔されずに『お話』が出来るでしょう?」
二人の距離は、机を並べたことで、さらに縮まる。二人を包み込み教室の後方だけが、別の空間のように見えた。一方最前列のど真ん中に座る佐藤はまさに『生殺し』の状態であった。
担任の授業が始まっているため、組長である彼は後ろを振り返りながら授業を受けることは不可能だ。堂々と二人の動向を見ることは出来ない。だから、時折背後から聞こえてくる囁きが気になって仕方ない。
(__くっ、背後で何が起きているんだ。あの姫神さんとあの龍輝が、あんな近い距離で__
僕は…僕は最前列でノートを取らなきゃならないのに__!)
研斗の頭の中は、教科書の数式ではなく、後ろの二人の『密着度』への妄想ではちきれそうになっていた。
一方最後列では、研斗の妄想をよそに、シュールな「報告書作成」が行われていた。
龍輝は航聖から貰ったスマホを机の下で構えるが、不器用すぎて入力がままならない。
「……チッ、また消えやがった。おい、ヒメ、交代だ。お前が打て」
「……ふふ。貸して。いいわ。貴方の代わりに私が「報告」してあげる」
「__書けよ。佐藤はウザい。ヒメを見る目がキモイ__以上」
龍輝はそこで一息ついた。
「……ったく、このスマホ、死ぬほど面倒くさい」
「オッケー__了解ね。送信ね」
ピコン
その送信音と同時に、航聖は怒りに震え、1-Cの希がチャットを見て吹き出した。
よからぬ妄想で一人苦しむ研斗と最後列で机の下でスマホを操作して航聖を激怒させるヒメと龍輝、吹き出す希__「BREAK」の瑞穂学園でのスタートは、予測不能なカオスから始まった。




