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義理だと分かったら、妹がガチの恋愛脳になった。〜妹が妹じゃなくなれば、最強ヒロインができあがる  作者: 白井 緒望


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第95話 スペシャルドリンク。


 ドアが開いた。

 ——鍵、開いたままだ。


 「失礼します。夕食のお時間の確認を忘れてしまいまして」


 仲居さんがそう言って顔を上げると、俺たちと目が合った。仲居さんの目がまん丸になる。


 俺の上には鈴音。

 すごく気まずい。


 「あの、違うんです!」

 鈴音が立ち上がると、仲居さんは後ずさった。


 「あ、あのっ。失礼しました!」


 バタン。

 ドアが閉まり、仲居さんは走り去った。


 俺と鈴音は目を見合わせた。


 「どうしよ……。わたしたち、同じ名字だし、絶対に実兄妹と思われたよね?」

 鈴音は耳まで真っ赤だ。


 「まあ、夫婦とか義兄妹とは思わないかも」


 「それって、絶対に勘違いしてるじゃん。わたし、訂正してくる!」


 俺は、後を追おうとする鈴音の手首をつかんだ。


 「やめとけ。傷が深くなるだけだ」


 「でも」


 「旅の恥はかき捨てっていうだろ?」


 「それ、違うもん。諸説あるけど、元々は、戦場で失敗して凹んでるお侍さんに、周りの人が『恥ずかしいことは書いて捨ててしまえ』って言ったの。失敗を気にするなって意味で、恥ずかしいことして良いって意味じゃないし」


 この人、無心に勉強しているだけあって無駄に詳しい。そして、それゆえの大混乱。


 物知りすぎて変な事を言っちゃうAIみたい。


 「しっかりしろ、鈴音。今の一番の問題が何だか分かるか?」


 「わたしたちの血が繋がってないってお知らせすること」


 「ちがうだろ! 今は、俺たちの夕食の時間が宙ぶらりんのままになっていることが問題なんだ! 後回しにされて最後の時間にされたら、皿に料理が残ってないかも」


 夕食はビュッフェだ。

 実際問題、品切れとか普通にあるだろう。


 「それは確かに大問題! ど、どうしよう」


 鈴音はオロオロした。


 「まず父さん達に確認だな。ってことで、ロビーに行ってみようぜ」


 「うんっ!」


 俺は鈴音の手を引いて、ロビーに向かった。


 ロビーの傍にはラウンジがあり、父さんと母さんはそこでワインを飲んでいた。テーブルには空いたビールの瓶もある。


 2人きりのデートとか、行けてないだろうし。

 

 (邪魔しちゃ悪いか)


 母さんは父さんに寄り添っている。


 それにしても、両親がベタベタしている姿って、良いことなはずのに、胸の中がこそばゆいものらしい。


 「とりあえず、フロントに行って時間を伝えようぜ」


 「え、勝手に決めちゃっていいの?」


 「いいんだよ」


 俺たちはフロントに行き、夕食の時間を一番早い18時にしてもらった。


 今は16時だ。


 あと1時間ラウンジにいたとして、その後の風呂で1時間。18時なら、ちょうど良いくらいだろう。


 第一、俺は腹が減っている。

 早めに食べたい。


 部屋に戻ろうとすると、さっきの仲居さんが話しかけてきた。


 「さっきは、すみませんでした」


 「いえ。無事に時間も決まったし、全然です」


 「あ、あの。兄妹で仲がいいことは、良いことだと思います……ので。個人的には、堂々として欲しいって思います」

 仲居さんは下を向いた。


 この子、絶対に勘違いしている。


 そして、どちらかというと、さっきの邂逅よりも、今の発言の方が失言度が高いと思うのだが。


 よく見ると若い。

 女子大生くらいかと思ったが、もしかすると、地元の高校生なのかも知れない。


 こんな調子で、他のお客さんに怒られないのかな。少し心配になってしまった。


 黒髪おさげの仲居さん。

 メガネがよく似合っている。


 胸の名札には「花凛」と書いてある。

 例の如く、名前か名字かは、分からない。


 「まぁ、大丈夫ですので」


 そう言って立ち去ろうとすると、仲居さんが追いかけてきた。


 「ご両親もラウンジにいらっしゃったので、ぜひ、ドリンクを召し上がってください。お詫びに料理長に頼んで、スペシャルドリンクを作ってもらいますので」


 この子、あまり空気が読めないみたいだ。


 すると、鈴音が手を握ってきた。


 「わたし、スペシャルなの飲みたい」

 あー、この人、食いしん坊なの忘れてたわ。


 鈴音の強い希望で、俺たちもラウンジに行く事にした。

 

 「おう。お前達も座りなさい」

 父さん達は、俺たちに気づくと声をかけてくれた。ご機嫌そうだ。


 (なんだか、ごめん)


 「あなたたちも何かオーダーする?」


 「ううん、仲居さんがスペシャルドリンクくれるの!」

 母さんの問いに、鈴音は元気に答えた。


 座ると、鈴音に太ももをつねられた。


 「いてっ。なにすんだよ」


 「悠真。あの仲居さん、好みでしょ?」

 鈴音はむくれている。

 

 さっきの仲居さんは。確かに可愛い。

 でも、それよりも、人懐っこいあの感じ。


 「あの子、どことなく朱音に似てないか?」


 「あー、たしかに!」

 鈴音は頷いた。

 


 5分ほど待っていると、仲居さんがやってきた。お盆には特大パフェみたいなのが2つ乗っている。


 「これ、どうぞっ」


 テーブルに置かれたその物体には。

 フルーツやらブラウニーやらが大量にぶっ刺さっていた。


 ドリンクという風貌じゃない。

 完全にフードだ。


 仲居さんは、俺に耳打ちした。

 「邪魔しちゃったお詫びにサービスしちゃいました。料理長に色々もらって花凛流アレンジです♡ 栄養つけて、夜も妹さんと仲良くしてくださいね!」


 言いたい事を言うと仲居さんは、鼻歌混じりに去っていった。あの仲居さん、自由人すぎる。料理長さんに、よほど可愛がられているのだろう。


 ますます朱音っぽい。


 でも、まぁ。

 せっかくのご厚意だ。頂くか。



 「げふ……」

 完食した後には、虚しさだけが残った。

 満腹になってしまったのだ。


 父さんはワインを飲み終わったらしく、グラスを片付けた。


 スペシャルドリンクの容器を眺めながら、父さんはため息混じりに言った。


 「悠真。夕食は何時にしたんだ?」


 「18時」

 

 「あと1時間か。じゃあ、私は先に戻って風呂に入ろうかな。ところで、お前たち」


 「なに?」


 「そんなに食べていて、夕食は食べられるのか?」

 

 いや、どうでしょう。

 俺も鈴音も、既に満腹です。


 席を立った父さんに母さんがついて行く。

 母さんが振り返った。


 「あ、そうそう。今日の夕食は、蟹の食べ放題付きなの♡」


 マジっすか。

 ——もっと早く言って欲しかったんですけれど。

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