表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
義理の関係だと分かったら、妹がガチの恋愛脳になった。〜妹が妹じゃなくなれば、最強ヒロインができあがる  作者: 白井 緒望


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/95

第86話 蛍はカエルちゃんで遊びたい。

 神社での撮影は無事に終わり、商店街に移動すことになった。うちの近くの商店街は、アーケードになっていてレトロな雰囲気だ。


 撮影機器は思った以上に重く、カートに乗せて移動しなければならない。写真部の1年生が肩から大荷物をいくつも掛けてプルプルしている。


 俺は荷物をいくつか引き受けて、話しかけた。


 「君は田中くんだっけ? 山口部長はどう?」


 「人の好き嫌いはあるけれど、良い人ですよ。こんな部活なのに、写真に真剣に打ち込んでますし」


 こんな部活って言われてるの知ったら、山口、きっと泣くぞ?


 「そうなんだ。君に一つ聞きたいことがあってさ」


 写真部で待たされている時に、一冊の写真集を見つけたのだ。


 「なんですか?」


 「山口部長のお父さんって、カメラマンじゃないか?」


 すると、田中はキョロキョロして、離れたところを歩いている山口で目を止めた。


 「実はそうなんです」


 「お父さんは、もしかして山口謙也さん?」

  

 田中は頷いた。


 やはりそうだ。

 部室にあった山口謙也の写真集。


 あれは山口の父親のものだ。彼は戦場カメラマンとして有名だったけれど、俺が彼を知っているのは、写真を見てではない。


 ニュースだ。

 日本人の戦場カメラマンが、現地でテロの犠牲になったという報道。何年も前のことなのに、鮮明に覚えている。


 だったら山口は、なぜこんな写真部に?

 写真をやるなら、もっといい高校はいくらでもある。


 だが、田中の様子からして、興味半分で聞いていいことではなさそうだ。


 俺は山口の横顔を見た。


 ——あいつにも、色々な事情がありそうだ。


 「篠宮さんは、男性にも興味がある……と」

 声の方を振り返ると、愛良だった。


 この子はこの子で、やたら俺に絡んでくる。


 そうこうしているうちに、商店街に到着した。

 また俺と朱音はレフ板を持って配置につく。


 鈴音と蛍は商店を歩き、店頭のおじさんやおばさんと楽しそうに話している。


 山口は特に指示はせずに、シャッターを切っている。おそらく、大量に撮って、良い写真だけピックアップするのだろう。


 5分ほど歩くと、2人は立ち止まった。

 鈴音は、カエルのオモチャを手に取った。小さなポンプがついていて、カエルは背中に子カエルを背負っている。


 「このカエルのオモチャ、お父さんが好きでね。子供の頃、よくお風呂場で遊んだの」


 鈴音が楽しそうに話している。

 蛍は下唇を噛んだ。


 「……蛍、どうしたの?」

 鈴音は心配そうに、蛍の顔を覗き込んだ。


 ——下駄箱の下のうすっぺらいサンダル。

 脳裏に、蛍の家の下駄箱の光景がよぎる。


 気づけば、身体が動いていた。

 俺は店頭のカエルを手に取って、店の奥の会計に持って行った。


 買ったカエルを蛍に渡した。


 「これ、蛍にあげる。こんど、風呂……プールで一緒に遊ぼうぜ!」


 蛍はカエルを受け取るとポカンとした顔になり、少しだけ遅れて笑顔になった。


 「ウチ、カエルちゃんで悠真と一緒に遊びたい。でも、プールでカエルちゃんは怒られちゃうよ?」


 「あっ、そうか……じゃあ、カエルの浮き輪で」


 「水着は恥ずかしいから、ウチ、お風呂でもいいよ? このカエルちゃん子供ついてる。うふふ……かわいい」

 そう言って俯くと、蛍はポンプを何度か押した。


 (いや、どう考えても風呂の方が恥ずかしいし)


 「プールでお願いします!」


 「篠宮さんは、物で釣って、蛍さんをいかがわしい場所に勧誘、と」

 愛良が淡々とした口調でつっこんできた。


 「プールはいかがわしくないし。なっ、鈴音?」


 「知らないっ」

 鈴音はそっぽを向いた。


 「ちょっと篠宮くん。撮影の邪魔。きみが写ってどうするのよ」

 山口に怒られてしまった。


 レフ板をもって戻ると、朱音につつかれた。


 「あのね。うちも、お父様とカエルで遊んだことないんよ。だから、うちともお風呂はいろ?」


 初音母さんの弟の明良叔父さんは、朱音を溺愛している。そして、朱音の家のお風呂は、小さなプールみたいだ。そもそもカエルは似合わない。


 つまり、朱音がカエルで遊んだことがなくても、同情すべき事情はない。


 「入らないし。朱音の家の風呂でカエルで遊んでたら、むしろ、違和感しかないぞ」


 朱音は膨れた。


 「前から思ってたんだけど、悠真。うちにだけ冷たくない?」


 「子供の時、肉団子とか言われて石を投げられたからな」


 「石投げたりとか、そんな人知らない」

 朱音はそっぽを向いた。



 「OK。次の現場に移動しましょう」

 山口が声を張り上げた。

 

 俺が荷物をまとめていると、すれ違いざまにパシンと尻を叩かれた。振り返ると鈴音だった。


 なにやらアッカンベーをしている。


 すると、今度は尻を撫でられた。

 また振り返ると、蛍だった。


 すれ違いざまに「ありがとっ」。

 蛍は笑顔だった。


 よかった。元気になったみたいだ。


 これでこそ、各方面から嫌われた甲斐があるってものだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ