表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
義理の関係だと分かったら、妹がガチの恋愛脳になった。〜妹が妹じゃなくなれば、最強ヒロインができあがる  作者: 白井 緒望


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/94

第84話 鈴音と蛍の撮影会


 「みんなー。朝ごはんよ」

 母さんの声だ。


 俺がテーブルにつくと、鈴音と朱音も遅れてきた。


 今日の朝食は、特別に良い匂いだ。

 「朝からハンバーグ? 豪勢だね」


 母さんは、炊飯器を開けながら言った。


 「そう? 今日は撮影の日でしょ。だからかな。なんとなく」


 「ありがとう! 俺、母さんの料理はどれも好きだけど、中でもハンバーグが一番だよ」


 すると母さんは、一瞬、寂しそうな顔になったけれど、嬉しそうに微笑んだ。


 「初音お母さん、うちにもハンバーグ教えて。悠真のこと、胃から落とすの」


 初音が言うと、鈴音も手を上げた。


 「そうねぇ。前に、蛍ちゃんにも同じことを言われたのよね。じゃあ、今度、3人に教えてあげる」


 すると朱音は、母さんに何かを耳打ちした。


 「いたいぃぃ」

 朱音が鼻を摘まれた。


 「朱音ちゃん、伯母を買収しないように」


 どうやら、朱音は何か渡して、自分だけ隠し味を教えてもらおうとしたらしい。


 ちなみに、少し前から朱音は母さんを『初音お母さん』と呼んでいる。『おばさん』と言われることを、母さんが拒否したからだ。


 どうやら、近いうちに女子だけのお料理教室が開かれるらしい。


 「って、そろそろ行かないと」


 俺たちは朝食を胃に放り込むと、バタバタと家を後にした。


 「やばい、ギリギリだ」

 俺は時計を見ながら、肩から滑り落ちようとするカバンを掛け直した。


 すると、朱音が真横にならんで、言った。


 「ねぇねぇ。うちと鈴ねえと蛍ねえを一言で表すと?」


 コイツ、自分のせいでギリギリになってるという自覚はないのか。今日は本当は、時間に余裕があったのだ。


 だが、家を出る直前になって、朱音が靴が合わないとか言い出して、遅くなってしまった。


 「そうだな。鈴音は『かわいい』、蛍は『優しい』」


 「うちは?」

 朱音は目を見開いた。


 「アホ」


 「ひどい。なんで?」

 朱音は不満そうだ。


 「今の状況でそんなことを聞くことが既に『アホ』なんだぞ?」


 すると、朱音はむくれた。


 「向葵にもアホアホ言われてるのに、悠真まで言うことないでしょー」


 俺は空を見上げた。


 『素直』


 それが朱音に対して頭に浮かんだ言葉。

 でも、なんとなく照れくさい。


 「じゃあ、さっきのは取り消し」


 「やったぁ。わくわく」

 朱音は目を輝かせている。


 「まず、蛍を『綺麗』に変更。続いて朱音を『優しい』に変更!」


 「むうう。褒め言葉は、パズルじゃないんやよ?」

 朱音は泣きそうだ。


 「わかったよ。今日、良い子にできたら、クレープ買ってやるから」


 「でもさ、今日はお前の出番ないぜ? それでもいいのか?」


 朱音は俺の袖を摘んだ。


 「悠真といれたら、うちはそれでいいんやよ」


 ドキッ。

 俺は胸を押さえた。

 

 ったく、朱音も蛍も魅力的すぎる。


 朱音が言った。

 「うちに、ドキッとしてくれないの?」


 「するわけないだろ」


 すると、少し先に言っていた鈴音が言った。


 「そこっ、ジャレてないで早くするっ」


 鈴音の白いワンピースが揺れる。


 

 神社に着くと、既に山口ともう1人の男子部員。それに知らない女の子がいた。2人は俺たちに気づくと、軽く頭を下げた。


 その脇にはジュラルミンケースと、簡易的なテーブルセットが設置されている。


 「おはようございます。こちらは写真部の1年。そちらの女性は和装部からの助っ人。同じく1年生の飯田 愛良(いいだ あいら)さんです。着替えやメイクを担当してもらいます」


 愛良は会釈をした。


 身長は鈴音より少し大きいくらいで、黒髪を後ろで2つに結っている。奥二重に大きめのメガネが印象的な、可愛い子だ。


 俺は山口と肩を組んだ。


 「お前、こんな可愛い知り合いいたのな?」


 「写真部も、時々、イベントで和装部の手伝いをするんですよ」


 なるほど。この子を写真部に勧誘するのは難しいってことか。


 待ち合わせ時間ギリギリで、蛍もきた。

 黒いニットに長めのフレアスカートを履いている。


 「では、本日はありがとうございます。今回の撮影は情景がメインです。まずは、2人で遊びに行く感じで、気負わずに普通にしてください。必要があれば、適宜、指示をします。神社の方には撮影の許可はとってあります」


 「タイムスケジュールは?」

 俺が質問すると、山口は手元の資料に視線を落として答えた。


 「神社は午前中。午後は渓谷、商店街、公園の順で撮影する予定です。締めは商店街にある資料館の外観で。幸い、本日は12月にしては温かいですが、西陽が強くなる前に終えたいので、手際よくいきましょう。何か質問は?」

 今日の山口はテキパキしている。


 俺は手を上げた。


 「なぁ、山口。商店街には2度行くのか?」


 「商店街にも許可はとってありますが、撮影は人が少ないうちに終わらせたいので。資料館はこのへんでは珍しく煉瓦造りなので、造形が映えるように、西陽をあてたいんです」

 そう言うと山口は、人差し指でメガネを上げた。


 鈴音と蛍からコートを預かると、愛良が2人を座らせた。


 「午前と午後で衣装替えしますので、髪型にも変化をつけます。山口さん、いいですよね?」

 愛良は大人しそうな外見なのに、言葉尻がきつい。


 「あ、はい」

 山口は小声になった。


 「鈴音さんはこのままで。蛍さんの金髪は、……ここでは若干浮きますので、まとめましょう」


 鈴音の髪に櫛をいれ、前髪を留め直す。蛍の方は持参したリボンで、ポニーテールにした。


 「この方がピアスも映えますし。うん。それが吉です」

 愛良は、鈴音の襟を直しながら、そう言った。



 髪型を整えると、すぐに撮影がはじまった。


 鈴音と蛍、2人で手を繋ぎ、石畳の参道を歩く。


 俺と朱音は反射板をもって2人に光を当てる。山口の指示は的確で、スムーズに撮影が進む。


 すると、山口が鈴音に声をかけた。

 「会話も、口パクじゃなく、いつもどおりで。写真ですので音は残りません。レフは自分の影が映り込まないように、常に意識して」


 鈴音と蛍は目を見合わせた。


 蛍が口を開いた。

 「んで、鈴音は悠真とどこまで進んでるん?」


 っておいおい。

 いつも通りすぎるだろ。


 鈴音が答える。

 「えっ。お前の肌を他の男に見せたくないって言われた」


 いや、たしかに水着選びで言ったけれど。

 切り取りに悪意を感じる。


 全員の視線が俺に集まる。


 ——公開処刑が始まる予感しかしない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ