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義理の関係だと分かったら、妹がガチの恋愛脳になった。〜妹が妹じゃなくなれば、最強ヒロインができあがる  作者: 白井 緒望


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第81話 朱音のお願い事。


 少し前に、朱音をお茶を頼んだ時に、『なんでもお願いを聞いてやる』と言ってしまった。


 その後、触れずにスルーしていた。

 忘れたと思っていたのだが、昨日、朱音は突然思い出したらしい。


 目の前にきてクネッとした。


 「うち、なんでもお願い聞いてくれる日を待ってるんやよ?」


 「……」


 ストーブからカチカチと音がして、灯油の匂いが鼻をかすめた。


 「やよ?」


 朱音はヒックと喉を鳴らし、両肩を震わせた。

 やばい、泣きそうだ。


 「わーったよ。ただし、一つな?」


 朱音は頷いた。


 何を頼むか迷っているらしい。

 数秒、逡巡し、朱音が口を開こうとした。


 背中に悪寒が走った。

 俺は今、17年間の人生でもっともヤバい場面に置かれている気がする。


 だから、俺は朱音より早く言った。


 「……ただし、俺が聞ける範囲でな」


 「チッ」

 こいつ、舌打ちしやがった。


 「お兄様は、今日は、わたしの言うことに『はい』と了承してください」


 なにその包括的なお願い事。

 悪魔との取引で、3つのお願いを100個に増やしてくれってお願いしているようなもんだぞ。


 恐ろしい。

 ただし書をつけておいて、本気で良かったぜ。


 「分かった。でも、さっき言ったように、常識的、能力的、モラル的にNGなものはダメだからな」


 すると、朱音は頬をふくらませた。


 「それじゃあ、何も頼むなって言われているようなもんなんだけどーっ」


 おいっ。

 NG項目しか頼む気がなかったってことじゃないか。


 「まあ、試しに言ってみろ」


 「悠真の子供が欲しい」


 「却下」


 「うちに『愛してる』って言って欲しい。心を込めてやよ!」


 お願い事権で言わせている時点で、心はこもっていないと思うのだが。


 「却下」


 「じ、じゃあ。うちが持ってくる紙に署名ハンコして」


 新興宗教のやり口だな。


 「ちなみに、どんな紙を持ってくるの?」


 「これ」

 朱音は何やらA3サイズの紙を出した。

 表題には『婚姻届』と書いてある。片方の欄には既に朱音の名前が書き込まれている。


 証人欄には、両家の父親の署名がある。


 「この証人欄って本物?」


 「うん」

 あの2人なら、普通に書いてくれそうだ。


 「いや、俺も朱音も未成年だし、これ意味ないよ?」


 「意味ないなら、書いて。うち、意味のない紙でもお守りにしたいの。ゴッコ遊びって分かっててもいいの」

  

 胸が痛む。

 ゴッコ遊びでもいいなんて、健気だ。


 「まぁ、意味がないものでもいいなら……」


 俺は空いている名前欄に、『篠宮』と書き込んだ。

 

 ふと用紙に視線を落とす。

 

 朱音は正直に生年月日を書き込んでいる。

 妻の名前欄もちゃんと埋まっている。


 (これなら、生年月日を改変されたり、他人の名前を書かれたりする心配はないか)


 再びペンを握る手に力を入れた。


 んっ?


 なにやら違和感。


 そして気づいてしまった。


 この婚姻届。

 届出日欄はちゃんと今日の日付だ。

 だが、ここだけ文字の質感がなんか違う。


 指で擦ってみる。

 落ちない。


 ボールペンか。

 それなら心配はないか。


 でも、念のため。

 消えるボールペンを持ってきて、専用消しゴムで擦ってみた。


 字、消えた。


 つまり、日付を消されて、2年後とかにシレッと出されたら、普通に受理されてしまう。


 朱音め。

 なんて恐ろしいことを思いつくんだ。


 「やっぱダメだ。これ、提出日が消せるし」


 「だら。結局、何も聞いてくれない!」

 朱音は手足をバタバタした。


 「お前がNGな事ばっかり希望するからだろう」


 朱音はまだ手足をバタバタしている。

 目尻には涙。


 ほんとに泣いているみたいだ。 

 

 (はぁ。しかたねーな)


 「じゃあ、他の言ってみろ。前向きに検討するから」

 

 朱音はスクッと起き上がった。


 「グスッ。じゃあ、うちの彼氏のふりして」


 「1日だけか? 永遠にフリをしろとかはなしな?」


 朱音は頷いた。


 何でも聞いてやるっていって、何でもかんでも断るのはさすがに可哀想だ。


 「……わかった」


 俺は頷いた。

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