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義理の関係だと分かったら、妹がガチの恋愛脳になった。〜妹が妹じゃなくなれば、最強ヒロインができあがる  作者: 白井 緒望


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第79話 3人の輪舞(ロンド)

 神社につくと、鈴音と蛍がいた。

 蛍は朱音を見ると、笑顔になった。


 「ウチ、鈴音の親友の北条 蛍って言います。よろしくね」


 朱音は俺の陰に隠れた。

 

 あっ、そうか。

 まだ、2人はちゃんと話したことがない。


 「ほら。お前も自己紹介しろよ」

 俺が促すと、朱音がブツブツと囁いた。


 「『ウチ』のアクセント違うし。エセ関西人やん」


 いや。朱音よ。


 君は関西ではなく北陸の”金沢っ子”だろう。

 エセ関西人とは、『やん』とか言っちゃってる今のお前のことだぞ?


 「朱音は関西じゃなくて、金沢っ子じゃん。関西人を語る資格ないだろ」


 朱音は俺を睨みつけた。


 「悠真。許嫁と泥棒猫、どっちの味方?」


 いや、向こうから見たら、泥棒猫はお前の方だと思うんだが。でも、これは泣かれそうなので言わなかった。


 「どっちの味方でもない」


 俺の答えが気に入らないらしく、朱音はベーッと舌を出して言った。

  

 「アホ」

 もはや『だら』ですらないのか。


 朱音は俺の背中から、ぴょこっと顔を出した。


 「はじめまして……」

 なにやら、一文字ごとに声が大きくなっていく。朱音はまだ何か言いたいようだ。


 「わたし、悠真さんの”許嫁”の美岬朱音といいます。宜しくおねがいしますっ!!」

 

 蛍の眉がピクリと動く。


 「ちょっと悠クン。この子、許嫁なの?」

 声に不満が漏れ出ている。


 「いや、いたって普通の従姉妹です」


 どうしよう。

 このままだと犬猿の仲に一直線だ。


 今日は掃除の予定だったから、宮司さんに許可を取ったのに。それどころじゃないかも。



 「あ、あと。この前の衣装。ありがとう」

 俺はリリスたんの衣装を蛍に返した。


 「ううん。鈴音にリリスたんのこと教えてくれようとしたんでしょ? おかげで、鈴音とリリスたんトークができるようになったよ。夢みたい」


 蛍は笑った。


 「良かったな」


 まあ、鈴音をリリスたん漬けにして英才教育したのは、この朱音の方なんだけどな。


 蛍は恥ずかしそうな顔をした。


 「ウチ、てっきりあの衣装を悠クンが着たり、その……ウチの匂い嗅ぎたいのかと思ってた」


 おーい。

 壮大な勘違い。やめて?


 「違うし」


 「嗅ぎたくなったら、ちゃんとお願いしてね!」


 そう言うと蛍は鈴音の方に戻った。

 なにやら、お願いすればOKらしい。

  

 朱音は、俺の後ろで、なにやらプルプル震えている。


 「やっぱ、泥棒猫やよ。悠真。この子は何? アンタの再従姉妹はとこ?」


 どうも、こっちサイドにも重大な勘違いがあるようだ。それに俺の再従姉妹なら、朱音からみても親族だろうが。


 「あのさ。俺は別に”親族しか愛せない派”とかじゃないからな? 仲良い女子を勝手に“親族枠”に編入しないでくれ」


 俺らは境内を見て回ることにした。

 

 縁日の時が嘘のように、ひっそりと静まり返っている。緑の匂いが、心地いい。


 境内には手を洗うための手水舎や鳥居や池があって、各所で写真を撮った。


 蛍と朱音はというと。


 歩きながら「リリスたん」問題をお互いに出し合った結果、朱音が自らの敗北を認めた。


 朱音が一生懸命話している。

 「あのね。わたし、小さな時、両親が忙しくて、全然一緒にいられなくて。リリスたんが留守番の子と一緒にいてくれる話があったよね? わたし、あの話、大好きなんだ」


 「あーっ。わかる! ウチもその話は大好き!」


 「蛍ねえの『ウチ』って、リリスたんみたいで可愛いね」


 一周まわる頃には、朱音は蛍と鈴音と3人で手を繋いで歩いていた。


 (さっき、俺が朱音の味方をしていたら、俺は今頃、スケープゴートだったな)


 風が吹き抜け、枯れ葉が舞い上がる。


 「はーっ」

 俺は手に息を吹きかけた。

 白い息が、輪になって解けた。



 「なぁ、そろそろ小社の方に行ってみようぜ」

 今日は掃除イベントだ。


 すると、朱音が手を上げた。

 「ちょっと待ってて」


 朱音は授与所にいくと、巫女さんから小さな紙袋を3つ受け取った。戻ってきて鈴音と蛍に渡す。


 紙袋の中は、鈴のお守りだった。


 友情の証なのだろうか。

 朱音なりのお詫びなのかもしれない。

 

 もしかしたら、3袋目は俺にくれるのかな?


 ワクワクして待っていると、朱音は紙袋から鈴を出して、自分のバッグにつけた。


 (まぁ、そんなもんだ)


 その後は社務所に行って、宮司さんに掃除道具を借りた。


 小社にいき、手分けして枯れ葉を集める。

 俺の担当は本殿で、賽銭箱の周りの掃き掃除だ。


 階段の上から眺めると、子供の頃の思い出よりも、石畳が小さく見えた。


 ここに鈴音と来るのは、3度……いや、4度目か。


 カラン。


 俺は鈴緒を軽く引いた。


 「神様。なんか色々、ありがとうございます」


 目を開けると、朱音がじーっと俺の顔を見ていた。


 「お兄様は、見えない人と話してる系の人ですか?」


 朱音は笑いながら階段を降りる。


 「朱音っ。まて」


 朱音を追いかけようと、石畳を踏んだ時。



 「あのね」

 蛍が話し始めた。


 「鈴音はウチが大学に行くと思ってたんだよね? でも、ウチ。本当は専門学校に行きたいんだ。だから、もし写真のコンクールで優勝したら、学校のことにお金を使いたいの。ごめん」


 鈴音は蛍に手を伸ばした。


 「専門学校? 何の?」

 

 「アニメとかの声優さんの」


 「そっかあ。リリスたん、可愛いもんね」

 鈴音は微笑んだ。


 リリスたん検定。

 確実に効いてる。

 

 「ウチ、夢を目指しても……いい?」

 蛍は胸の前でギュッと手を握った。


 「良いに決まってるし。わたしはいつも親友を応援してるよ」


 「ウチ、それなら写真集やってみたい」

 蛍はそう言うと鈴音に抱きついた。


 「うんうん」

 鈴音は蛍の頭を撫でながら何度も頷いている。


 2人が抱き合っている姿が、逆光でシルエットになっている。信頼し合っている2人の姿はまるで。


 ありきたりな場所で、普通の女の子が2人。

 でも、いまの一瞬は特別。


 『2人の友情と君の街』かぁ。


 気づけば、俺は左右の手で四角を作って。

 2人をファインダーに収めていた。





 

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