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義理の関係だと分かったら、妹がガチの恋愛脳になった。〜妹が妹じゃなくなれば、最強ヒロインができあがる  作者: 白井 緒望


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第77話 リリスたんに救われた日


 「あ、いや。これは……」

 気の利いた言葉が出てこない。


 すると鈴音が言った。

 「これは、そう。悠真の趣味なの。どうしてもこの服を着て欲しいって」

 

 まぁ、たしかに、

 そのまんまなのだが。


 でも、これはどうみても。

 ——兄と妹の安全圏を軽々と超えている。


 朱音はジト目になった。


 「うち、嘘はダメやよ。2人はどんな関係なの?」



 下の階で母さんが何か言っているが、朱音は動じない。部屋にエアコンのブーンという音だけが響く。



 鈴音が答えた。


 「言い逃れは良くないね。わたしも嘘は嫌い。あのね、わたし。悠真を男の子として好きなの」


 「子供の頃から、おにいちゃんって思ってた相手なのに?」


 「……キスもしちゃったし。もう後戻りできないし、するつもりもない」

 鈴音の声は、澄んでいた。


 朱音は今度は俺を睨む。

 「んで、悠真はどうなの?」


 「いや、俺は。鈴音のことは一番大切っていうか」


 朱音が眉間に皺を寄せた。


 「あのねぇ。鈴ねえがそこまで言ってるのに、煮え切らない男やね」


 「気持ちは、鈴音に負けてないつもりだよ」


 朱音は大きく息を吐いた。


 天井を見上げて、目尻を拭う。

 浮き出た鎖骨が震えている。


 朱音は視線を戻すと、スゥーと息を吸い込んだ。



 「……まあ、ええわ。うち、薄々気づいとったし」


 健気さが、心に痛い。



 「そうなの?」

 鈴音の声が裏返った。


 「普通に分かるし。鈴ねえは、昔はいつも『おにいちゃんカッコいい』とか言ってたブラコン妹やよ? 好きすぎて兄貴と仲違いして、その後、他人って分かったら、心が動くに決まってる」


 「そんなに分かりやすい?」


 「分かりやすすぎ。今でもその目。瞳がハートになってるし」


 「えっ、え?」

 鈴音の耳がみるみる赤くなる。


 「むしろ、まだゴールインしとらんほうが不思議やよ。うちが鈴ねえの立場だったら、今頃は家族が増えてたわ」


 コイツ、なんてこと言い出すんだよ。


 「でも、朱音ちゃんも悠真のこと……」


 「好きやよ? もはや宇宙一と言っても差し支えありませんわ」


 「ごめんね」


 「でもね。鈴ねえ、そんなことより」


 「え?」

 今の状況で、これより大切なことがあるのか?


 ごくり。

 俺は唾を飲み込んだ。


 「リリスたんの衣装の着方が違う!」

 朱音はそう言うと、鈴音の背中の羽根をむしりとった。


 「これは頭でしょ!」

 朱音は羽根を頭に移動した。


 「お前、リリスたん知ってるの?」

 すると、朱音は胸を張った。


 「知ってる? むしろ、わたしはリリスたんの伝道師。証拠を見せるから、ちょっと待ってて」


 朱音は俺の部屋に放置していた段ボールを開けると、なにやら取り出した。


 キラキラした箱に入っていて、フィギュアが付いている。素人の俺でも分かる。


 あれは明らかに、レア円盤。

 限定版Blu-ray特装BOXだ。


 朱音はフッと息を吐いた。

 いつもの上から目線。


 「ごめん。悠真。悠真は二番推しだった。うちの首位は不動のリリスたんやよ」


 なんだか分からないが、フラれたみたいでムカつく。


 「朱音ちゃんは怒らないの?」

 鈴音が恐る恐る聞くと、朱音は答えた。


 「悠真は二番推しだから、うちも二番推しでも仕方ない」


 「朱音ちゃん……」

 鈴音の目が潤んだ。


 「でもね、お父様の目の前では、許嫁ポジは渡さないから。じゃあないと、連れ戻されて、変な会ったこともないオジサンと結婚させられてしまう」


 いや、オジサンとは限らないと思うが。


 「で、でも」

 鈴音は口ごもった。


 朱音は続ける。

 「説得力をあげるためにね。次にお父様に会う前に子作り……既成事実を作ってしまえばこっちのもの。フフッ。フフフッ」

 

 部屋に朱音の高笑いが響く。


 コイツ、またそんなこと言ってるし。

 

 「既成事実!? だめぇ!」

 鈴音は泣きそうになった。



 「そんなことより。リリスたん、すごくいいから。鈴ねえにも素晴らしさを分かって欲しい! 悠真。Blu-rayプレイヤーは?」


 「ないけど」


 「使えないお兄様。鈴ねえ、コイツ、不良物件だよ? 住み替えをおすすめします」


 ほんと言いたい放題なんだけど。


 朱音はまた箱から何か出すと、テレビに繋げた。スマホを操作する。


 「仕方ないから、動画配信でいいか。OVAが見れないから、ほんとは鈴ねえには、Blu-rayで見て欲しかったんだけど」


 朱音は部屋の電気を消した。


 「では、『吸血鬼っ子リリス』上映スタート!」


 その日、深夜まで吸血鬼っ子リリスの全話を見せられ続けたのは言うまでもない。


 その間、鈴音はずっとコスプレ姿。

 さすがに、ちょっと可哀想だった。


 でも、おかげで鈴音は、『リリスたん検定•初級(朱音実施)』に合格するほどのレベルになった。

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