表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
義理の関係だと分かったら、妹がガチの恋愛脳になった。〜妹が妹じゃなくなれば、最強ヒロインができあがる  作者: 白井 緒望


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/93

第75話 物語は図書室で動き出す。

昨年中は応援ありがとうございました。

本年も宜しくお願い申し上げます!


文末にご挨拶のイラストをつけました。

 コトッ。


 俺がカウンターに座ると、桜坂さんは、マグカップで紅茶を出してくれた。


 紅茶を一口飲むと、桜坂さんは人差し指を唇に当てた。


 「ここでの飲食は内緒。他に生徒もいないし……ね?」


 「分かりました。ここでの会話は極秘ってことで!」


 「理解が早くて助かる。実は、わたし、年明けから非常勤講師で働くかも知れないの」


 「えっ、うちの高校で? 桜坂さん、教員免許は持ってたんですか?」


 「そう、この学校で。免許は大学のときに取ってあってね。なんでも、産休で教員枠に急に不足が生じたらしくて、声をかけられたんです。でも、少し迷ってて」


 「何か不安でも? あっ、司書さんの仕事が好きってことか」


 「もちろん、それもあるんだけどね。わたし、小説家になりたいんです。だから、こうして働きながら、文学賞に応募したりとか。でも、ここでの先生方の動きを見ていると、ブラックそうだし。書く時間がなくなりそうで」


 「俺の意見なんて、参考にならないかと」


 桜坂さんは首を横に振った。


 「なんでかな。篠宮君に聞いて欲しくて。前に話した知り合いに少し似てるの。君も空手をしているからかな?」


 知り合い……きっと更紗さんのことだ。

 更紗さん、桜坂さんのことを心配していた。


 今はいないから。

 俺が少しでも助けにならないと。


 ——きっと、あの人なら、こう言う。


 「空手の心掛けに『常に思念工夫せよ』っていう言葉があるんだけど。現状に満足せず変化を求めよって意味です。さら……桜坂さんの憧れの先輩だったら、きっとチャレンジしろって言うんじゃないかなって。俺はそう思います」


 更紗さん自身、チャレンジにつぐチャレンジの人生だ。この場にいれば、きっと、同じことを言うだろう。


 「あ、憧れ……そこまでじゃないですよ」

 桜坂さんはそう言うと、前髪の束を指に巻きつけた。


 いやいや、『憧れ』でも控えめに言ったのだけれど。高校生の頃、毎日、図書室で覗き見していたんでしょ?


 むしろ、それ以上だよ。


 「あと、小説って学園モノとか多いじゃないですか。その取材にもなりそうですし。って、俺が読むのはラノベばっかりですけれど」


 「へぇ。君はラノベが好きなんだ? おすすめタイトルとかある?」


 「ええっと。ちょっと公言するのは、はばかられるっていうか。ちょっと耳貸してください。ごにょ」


 俺が耳打ちすると、桜坂さんは立ち上がった。


 「ええっ。それって、未成年読めるやつなの?」


 「一応は」


 「でも、『義理の関係だと分かったら、妹がガチの恋愛脳になった』ってタイトルからしてマズくない? 君、妹いるし。お姉さん、君のこれからが心配になっちゃう……」


 本気で心配そうな顔をしている。


 「今は俺の趣味の話はいいんです! とにかく、寄り道だったとしても、無駄なことはないかなって」


 桜坂さんは顎に手を当てた。


 「たしかにそういう面もあるかな。聞いてくれてありがとう。もう少し考えてみるよ」


 俺は桜坂さんに見送られて図書室を後にした。


 あれ、でも。

 更紗さんも外部コーチがどうのって言ってた。もし、桜坂さんが先生になったら……。


 まっ、いいか。


 それに山口が、写真部の顧問も来年は産休って言ってたっけ。人員の穴埋めが桜坂さんってことなのか?


 

 

 

 


 「ただいま」

 家に帰ると、鈴音と朱音が出迎えてくれた。


 鈴音はブタのぬいぐるみを持っている。

 眉が吊り上がっている。ご立腹のようだ。


 「あのね、悠真。ブタちゃんの鼻が曲がってるんだけど?」


 やべぇ。

 言い逃れしないと。


 「……そんなブタ知らない」


 すると、鈴音に脛を蹴られた。


 「どう考えたって知ってるでしょ! アンタが見てた本の上にあったんだから!」


 「ごめんなさい」


 「んで、蛍は何だって?」 


 「あぁ。着替えたら、ちょっと俺の部屋にこれるか?」


 鈴音は頷いた。


 俺は部屋に戻って、制服のジャケットを椅子に掛けた。


 (下着も替えるか)


 靴下を脱ぎ捨てて、パンツに手をかけたその時。


 「靴下、そのへんに脱ぎ捨てちゃだめやよ?」


 突然、背後から声がして心臓が止まりそうになる。おそるおそる振り返ると、ボブの少女。


 朱音が座って、ジッと俺の方を見ていた。


 「……早く脱いで! ワクワク」

 目をキラキラさせている。


 「ってか、お前、何でいるんだよ」


 すると、朱音は首を傾げた。


 「ここは、うちと悠真の愛の部屋やよ?」


 「おい。愛の巣みたいな言い方するなよ」


 「だって、うちの勉強道具とかこの部屋にあるし。寝てない時は、いつもここにいるし」


 よく見れば、朱音は、いつのまにか自分用のビーズクッションを持ち込んで、優雅に座っている。


 朱音が俺のスマホを持ち上げた。


 「おい、何勝手に」


 そんな俺のクレームなど無視して、朱音はスマホの画面を覗き込んだ。


 「お兄様。メールが来てます。『差出人:○○写真コンクール事務局/件名:ご質問への回答(掲載条件・個人情報取扱い)』ですって。これって、もしかして」 


 「もしかして、なに?」


 すると、何故か朱音は頬を赤らめた。


 「わたしが美少女過ぎて、悠真が勝手にアイドルオーディションに申し込んじゃったってこと?」


 「いや、それはない」


 そんなことをしたら、美岬家に訴えられかねないぞ。しかし、朱音の妄想はどんどん膨らむ。


 「しかもだよ? 条件面で担当者とやり取りって。もしかして、わたしで内定済み……? どうしよう。芸能界とか、お父様に叱られちゃう。悠真との婚約披露パーティーにもマスコミが来ちゃったりとか? キャッ」


 朱音は手のひらを両頬に添えてクネッとした。


 こんなわずかな種火で、ここまで壮大な勘違いをできるって。


 ある意味、天才だと思う。




※※※※※※※※※※※※

挿絵(By みてみん)

※鈴音です。

今年も宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ