表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
義理の関係だと分かったら、妹がガチの恋愛脳になった。〜妹が妹じゃなくなれば、最強ヒロインができあがる  作者: 白井 緒望


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/93

第72話 消せない蝶と消したい過去。

 蛍は、黒いドレスに蝙蝠こうもりのチョーカー、腰上までのマントを身につけていた。


 ウエストをコルセット風に締め上げ、スカートは前は短く後ろが長いフィッシュテールにレースが揺れる。足には網タイツ。その姿はまるでヴァンパイア。


 「どう……かな? ウチ、へんだよね?」

 蛍はうつむいて、モジモジしている。


 「いや、すっげー似合ってる。まじで。俺、確実に心拍数あがってるし」


 ——クールな蛍のイメージとは違うけれど。


 蛍は満面の笑みになった。


 「そっか。嫌われなかった……よかった。とりあえず、入って」


 「おじゃまします」


 玄関に入ると、下駄箱に収まりきらない靴が箱ごと山積みになっていた。いくつかは箱の上に雑に積まれている。どれもハイヒールだ。


 俺が見たことある蛍の靴は、その横にちょこんと並べられている。下駄箱の下には、男もののサンダルが見える。


 蛍の足の指に目がいった。

 綺麗なつま先。靴で傷んでいる様子はない。


 芳香剤の甘さの奥に、消え切らないタバコの匂い。


 玄関の先はキッチンと2部屋。

 広くはないが、普通の間取りだ。


 「ウチの部屋、こっち」


 引き戸を開けると、カラフルだった。

 ゲーム、キャラクターの抱き枕、壁にかかったラグにはドラキュラっぽい女の子の絵が描いてある。


 そして、よく見ると、蛍が着ているドレスと同じデザインだ。


 蛍はこっちに振り向いて、手を広げた。


 「これね。全部、ウチの好きなものなの」


 「お前の秘密って」


 「うん。このこと。ウチ、きもい?」


 「いや、そんなことないよ。ゲームとかラノベとか、俺も好きだし」


 すると、蛍は早口になった。


 「えっ。ウチは断然アニメ派! リリスたんの声優の◯◯ちゃん、すごいんだよ。歌もうまいし、美人だし……」


 こんな饒舌な蛍は初めて見た。


 俺の中で蛍は、オタクとかマニアからはもっとも縁遠い。むしろ、現実そのものに生きるギャルで、何事にも冷めていて無関心なイメージ。


 「……ひいてる?」

 蛍が泣きそうな顔になった。


 「いや、お前ってリア充なイメージだから、ちょっとビックリしたっていうか」


 「『リア充』って、2010年代のアニメの中に出てくるヤツだー。それ、とっくに死語だよ?」


 「マジ卍なんだけど」


 「それ、もっと死語ー!」

 蛍は笑った。


 それからは、蛍の好きなアニメを観せられた。リリスという吸血鬼の女の子が、困っている子供たちを助けるというアニメらしい。


 アニメの中でリリスが友達と思われる少女に言った。


 『ウチ、ヴァンパイアクイーンやから』


 『ウチ』?

 なるほど。蛍の『ウチ』はここから来ているのか。


 そして、観ているうちに、あることを思い出した。


 「これ、うちらが小学生の時にやってたやつだよな。たしか、衣装と行動が過激すぎて、炎上して放送中止になったやつ」


 「そう。でも、深夜枠で続いてたんだよ! ウチ、このリリスたんが大好きで、すっごい憧れてた。リリスたんイジメられたり、大人に意地悪されてる子供たちを助けるの」

 

 でも、俺の頭の中では、まだアニメ好きと写真集の話が繋がらない。


 「んで、どうして鈴音に写真集を諦めさせて欲しいんだ?」


 蛍がコーヒーを淹れてくれた。

 コーヒーを2人ですすりながらアニメの続きを見る。


 蛍はコーヒーの湯気がなくなると、話の続きをしてくれた。


 「ウチね。夢があるの。本当は声優になりたい」


 「へぇ。すげーじゃん」


 「悠クンは馬鹿にしないの?」

 蛍の目は潤んでいる。


 「するわけないし。惰性で大学に行こうとしてる俺なんかより、よっぽどすげーと思うよ」


 「そっか。うん。やっぱ、悠クンだ」


 やたら期待されていて、恐縮だ。


 「声優って、専門学校とかいくの?」


 「うん。それかオーディション受けたりとかだよ。でもね、ママはね。『そんな夢みたいなこと言ってないで働け』って」


 学費の援助は望めないということか。


 「でも、仕事って言っても、すぐには見つからないだろ?」


 「ママがお店を紹介してくれるって。『あんたは器量がいいから稼げる』って」


 なんだよ、それ。


 「だったらなおさら、写真コンクールは良い話なんじゃないのか?」


 すると、蛍は俯いた。


 「ウチね。鈴音にこの趣味のこと話してないの。でも、どうして声優になりたいのかって話すなら、趣味のことも話す必要あるじゃん?」


 「言えばいいじゃん。鈴音はそんなに心は狭くないよ?」


 「でもね、ウチ。前に渋谷でオタクっぽい子とすれ違った時に、つい『ああいうのダサいよね』って言っちゃったんだ」


 「鈴音もそんなこと言ってるの?」


 「鈴音は『人』の悪口言わないから。でも、前は『兄貴がクソダサい』って言ってた」

 

 おーい。

 俺も『人』に分類されるんですが?


 蛍は続けた。


 「んでね。鈴音はウチが大学行きたいって思ってるから、専門学校にお金使いたいとか言えないし……あとね、見せないといけないものがある」


 蛍は後ろを向いて、スカートに手をかけた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ