表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
義理の関係だと分かったら、妹がガチの恋愛脳になった。〜妹が妹じゃなくなれば、最強ヒロインができあがる  作者: 白井 緒望


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/93

第70話 録音ボタンと『手放したくない』

 「それは、どうして?」


 「ウチ、鈴音に迷惑をかけたくない」


 迷惑?

 どういうことだろう。


 「詳しくは聞いてないけれど、家の事情で大学行くか迷ってるんだろ?」


 数秒の沈黙。

 俺の問いに、蛍は言葉を迷っている様子だった。


 「それはそうなんだけど。ウチ、鈴音にも言えてないことがあって。ウチ的にはすごく恥ずかしいことだから。相談に乗ってくれないかな」


 「俺なんかでいいのか?」


 「悠クンに聞いて欲しい。お金のことだけじゃなくて、別の心配もあるの」


 「込み入った話なのかな?」


 「うん。わりと……」


 「前に蛍と決めたことだけど、俺は鈴音に内緒にはしない。それでも、いいか?」


 「うん。分かってる。どうするかは悠クンに任せる」


 そんなに大切なことなら、会って話すべきだろう。


 「分かった。それでいいなら、会って話を聞くよ。明日は学校、午前で終わりだったよな。放課後とかどうだ?」


 俺は蛍と放課後に約束をした。


 時計を見ると23時を過ぎていた。

 少し前までは、隣の部屋から鈴音たちの話し声が聞こえていたが、今は静まり返っている。


 「もう2人は寝たのかな。あぁ、更紗さんの宿題もあったんだ。せめてフォームの確認くらいしておかないと」


 もう父さんたちも寝ているみたいだ。

 廊下をウロウロするのも迷惑か。


 鈴音の部屋の中を見回した。


 すると、ちょうど俺の目の高さくらいの棚の上に、ぬいぐるみが置かれていた。


 ピンクのブタのぬいぐるみ。

 人の頭くらいのサイズがある。


 的はアレでいいか。


 「シッ!」


 2、3回、蹴りの寸止めをしたところで、ブタに軽く当たってしまった。ブタはくるんとスピンした。


 (やべっ。ブタの鼻が変形してる)


 すると、ブタの下にB5くらいの冊子が見えた。ブタで隠していたらしい。冊子にはノートで作ったお手製のカバーがかかっている。


 冊子は何度も開かれた癖がついていて、隙間から写真のようなものが見える。


 ——露骨に怪しい。

 見たい。


 だが、武士の情け。

 この冊子は見なかったことにすべきか?


 いやでも。


 鈴音だって俺の部屋を好き勝手に物色している。見たっていいじゃないか。


 俺は腕を組んで悩んだ。


 あいつも女の子だもんな……やっぱ、覗き見は良くない。


 ブタを元の位置に戻そうと持ち上げた拍子に、パラリ。


 冊子の折り目がついたページが勝手に開いてしまった。咄嗟に閉じようとした視界に。


 ——ドレス姿の鈴音が笑っていた。


 片方の肩が出ていて、スカートはレースが幾重にも重なり、巻貝のように回りながら下に落ちていくティアードデザインのウェディングドレス。


 色白な鈴音によく似合っている。


 「これ、更紗さんのお店で撮った写真だ」

 まだ数ヶ月前のことなのに、懐かしい。

 

 ページをめくる。

 中にはスーツ姿の俺も写っていたが、目に入らない。


 花嫁姿の鈴音を追って、パラパラとめくると、最後のページは、ベールを越しに見える鈴音の顔写真だった。頬がキラキラしている。艶やかな唇。


 俺は写真の唇を指でなぞった。

 指先に紙の冷たさが残る。


 「こんなに綺麗な子、誰にも渡したくない」

 気づけば、俺はそう口に出していた。



 「……悠真?」


 夢中でドアが開いたことに気づかなかったらしい。そこには、トレーを持った鈴音が立っていた。


 なんだかすごく恥ずかしい場面を見られてしまった。俺が首裏をかこうとすると、鈴音がトレーをテーブルに置いた。


 「悠真。大好き!」

 鈴音は抱きついてきた。


 鈴音の髪が揺れて、もぎたてのフルーツのような香りが鼻先をかすめた。


 俺の胸に顔を擦り付けた。


 「独り言を聞かれて、なんかすげー気まずいんだけど」


 俺がそう言うと、鈴音は首を横に振った。


 「そんなことない。すごい嬉しい」

 鈴音はそういうと、手を握ってきた。


 冷たくなった指先に、鈴音の熱が伝わってくる。



 んっ。

 なにやら美味しそうな匂いがするぞ。


 

 ギュルル。


 匂いに反応して、俺の腹の虫が鳴いた。


 「俺、すげー腹減ってるみたい」


 2人で目を見合わせて笑った。


 「悠真。海苔巻きしか食べてなかったもんね。これ……」


 鈴音が持ってきてくれたトレーには、たまごサンドと水筒が乗っていた。鈴音は水筒の蓋を開けると、コポコポと茶色の液体を注いでくれた。


 紅茶のいい香りが漂う。


 「作ってくれたの?」

  

 「うん。朱音ちゃん寝ちゃったし、悠真お腹空いてるんじゃないかなって」


 さっきは、俺はよその子かと思ったけれど、鈴音は俺のことを見ていてくれたらしい。


 「やっぱ、お前は最高の妹だな」


 鈴音は笑顔になった。


 「あのね。さっきのまた言って欲しいな。手放したくない、みたいなの」


 「いや、かなり恥ずかしいんだけど」 


 「お願い♡」

 鈴音はそう言ってスマホを取り出した。


 「おまえ、何してるの?」


 「何度も聞けるように録音しとくの」


 「は? そんなん、羞恥プレイの無限ループじゃん。絶対に言わないし」


 「悠真のイジワル!」

 鈴音は頬を膨らませた。


 でも、俺の妹はやっぱり最高だ。



 

 挿絵(By みてみん)

真ん中が鈴音です。

向かって右:蛍 向かって左:朱音

※1話用に新規で描いたイラストです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ