第108話 プレゼント選び。
「なぁ、なんで眼鏡外したの?」
「ふっ。本当に鈍い人ですね」
なにやら笑われた。
本当につかみどころがない子だ。
「あ、わかった! 眼鏡はずしたら実は美人です的な?」
「……それで、ご感想は?」
どうやら、その線だったらしい。
「別に。特には」
愛良は肩を落とした。
「そうですか。どうせそんなものですよね。わたし、血族じゃありませんし!」
いや、だから。
血族は、絶望的マイナス要素なんだけど。
どうも誤解されている気がする。
また鈴音が何か吹き込んだのか?
「いや、そういうことじゃなくてさ。そのパターンって、メガネの冴えない子がメガネ外したら可愛かったっていうのでしょ? 愛良は元から美人だから、その前提は成り立たないでしょ」
愛良は真っ赤になった。
もしかして、この子。
褒められ慣れていないのか?
可愛い顔なのに。
和装部だし、きっと周りに男子がいないんだ。
そして、俺は気づいてしまった。
ここは更紗さんのアクセショップがあるモールだ。
言いようもないイヤな予感。
早くこの場を離脱した方がいい気がする。
「じゃあ、そういうことで。俺は帰ります」
愛良に挨拶して店から出ることにした。
ガシッ。
手首を掴まれた。
振り返ると愛良だった。
「メガネまで外させておいて帰るんですか?」
いや、あなたが勝手に外したんでしょ。
「そう言われてもな」
俺は鼻先をかいた。
「素顔を見たんだから、責任とって」
責任?
頼むから、誤解しか生まないような言い方をしないでくれ。
どうやら、このまま直帰は許されないらしい。
俺は時計を見た。
まだ午前11時だ。
更紗さんが店に出るのは午後からだ。
たぶん買い物をするくらいの時間はある。
「ごめん、プレゼント選びに付き合ってくれないか?」
俺は素直に頼むことにした。
「最初からそうやって助けを乞えばいいんです」
そう言いながらも……。
(愛良の口元、ニコニコだ)
「なんです? 文句ありますか?」
俺の視線に気づいた愛良は、眉間に皺を寄せた。
『素直にお願い』しても、文句は言われるらしい。
「ないよ。それより、何が良いと思う?」
歩きながら愛良に聞いた。
「鈴音さんの好みとか分かりませんし」
ごもっともだ。でも、それでは1人で選ぶのと変わらない。
視点を変えてみよう。
「じゃあ、愛良は欲しいものはある?」
「ぬいぐるみ……かな?」
これまた意外な答え。
「ぬいぐるみ好きなの?」
「べ、別に……」
愛良はメガネがないのにメガネをあげる仕草をした。俺は吹き出しそうになってしまった。
「なんです?」
不機嫌そうに愛良は聞いてきた。
「いや、別に。他にはなにかある?」
ぬいぐるみが大好きなのね。
「女の子なら、アクセサリーじゃないですか? ベタですけど」
「愛良も?」
「そりゃあ、好きな殿方にいただけたら嬉しいですよ(ごにょ)」
殿方って……。
一周回って新しい感じがする。
アクセサリーか。
確かにベタだけど、アリかも。
「アクセサリーの中ならどれがいいかな?」
「そうですね。意中の殿方にいただけるなら……やっぱり、指輪かな? いや、でも、それは図々しいか。わたしは妹枠じゃないし」
この子は何を言っているのだろう。
でも、良く見ると……。
俺は愛良の顔を改めてみてみた。
奥二重で、すっきりした目元。まつ毛も長い。
メイクで化けそうだな。
「指輪はあげたことがあるからなあ」
「妹に指輪あげたんですか?」
愛良は目を丸くした。
「そうだけど? 変?」
「いや。わりとガチなシスコンなんですね」
愛良はジト目になった。
指輪は既に2個あげてるし、さすがに追加はナシかな。それ以外だとピアスとか?
そういえば、鈴音。
星のピアスはネックレスにしちゃったんだ。
他に持ってないわけじゃないだろうけれど、ピアスいいかも。
「ピアスは?」
「え? わりと嬉しいかも。でも、わたし、ピアスの穴とか開けてないし」
なかなか良いみたいだ。
よし、ピアスに決めた。
でも、このモールには、アクセサリーショップはひとつしかない。更紗さんの店だ。




