表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
義理だと分かったら、妹がガチの恋愛脳になった。〜妹が妹じゃなくなれば、最強ヒロインができあがる  作者: 白井 緒望


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

101/108

第100話 鈴音の飴玉。

 食事を終えて部屋に戻ろうとすると、悠真がいなかった。


 わたしは彼を探した。


 「悠真だ」


 彼は、暗い夜の空の中で、月を見ていた。

 その背中は、いつもより小さくて。


 空から黒い絵の具が溶け出して、今にも彼を飲み込んでしまいそうだった。


 わたしは、駆け寄って悠真の手を握った。

 悠真の前髪が揺れる。


 「あっ、鈴音」


 振り返る彼の頬。

 青い月光に照らされて、一筋の光が伝った。


 「ムーンリバーみたい」


 わたしの言葉に、彼は微笑んだ。


 「だろ? 水面が輝いて綺麗だよ」


 ——わたしは、貴方の涙を言ったのだけれど。

 わたしは、言葉を飲み込んだ。


 「なぁ、澪母さんのところまで、光は届いてるかな?」


 「きっと届いているよ」


 わたしは、澪さんのことを覚えていない。


 いや、覚えていないのではない。

 その頃、わたしのママは違う人……実の父、あの人といた。

 わたしは、そもそも澪さんを知らない。


 でも、肉親に心が揺れる気持ちは分かる。

 よく、『大人は子供と過ごした時間で親になる』と言うけれど、子供からすれば『親は生まれた瞬間から親』なのだ。


 実父……あの人から『会いたい』って連絡が来た時、ママから酷い人だと聞いていたのに、本当は心の奥底が揺れた。


 だから、分かる。


 ママがすごく悠真を大切にしていても、澪さんの話をする瞬間、悠真の中のママは澪さんなのだ。


 仕方ないことだけれど。

 少し寂しくて、少しだけモヤモヤする。


 もちろん、澪さんのことは嫌いじゃない。

 みんなの話を聞いていると、むしろ、わたしと似たタイプだとすら感じる。


 それに悠真が大切に思っている人だ。

 わたしのハンバーグを喜んでくれるのも、澪さんのおかげ。


 

   

 陸から風が吹き抜ける。

 浴衣の胸元から冷たい風が入り込んで、わたしの心の奥をチクリと刺す。


 これは、わたしだけの本音の話。


 本当の気持ちは、きっと舌の上で飴玉を転がすように。じんわりと味がなくなって消えるまで、口に含んでおくべきものなのだ。


 わたしは悠真の手を握る指に、ギュッと力を入れた。



 第100話ですので、鈴音目線の話にしてみました。皆様のおかげでここまで書くことができました。ありがとうございます。


 以前、夜凪に浮かびあがるムーンリバーを見て、綺麗すぎて怖いと思ったことがあります。書きながら、そんなことを思い出しました。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ