よりみち
「うーん、いくら考えてもわかんないよ、自分の進路なんてさ?あやちゃんどうしよう〜ねえねえ、ねえってば〜!明後日進路調査書出さないといけないのに…。」
今日も7時間授業の過酷な学校が終わり、私は親友のあやちゃんと帰り道を歩いている。あやちゃんは私と違って高2とは思えない冷静さと落ち着きがあって、いつもは物静かだけどたまにふざけるところが可愛い人。私の言葉にあやちゃんは心配そうな表情をした。でも、すぐに何か思いついたように笑顔を見せた。
「ねえ、みほりん。今日寄り道して帰らない?」
「…へ?今から寄り道?なんで突然…!」
「いいから行こうよ!」
あやちゃんは私の腕を引っ張って走り出した。
え?!なんかいつものあやちゃんと全然違う!急にどうしちゃったんだろ?
私はあやちゃんに引っ張られるままに、ただ無我夢中で上り坂の疲れる道を走った。
「ちょっとあやちゃん…いつまで走るの?家まで遠回りになっちゃうって。」
それからだいぶ走ったから全然分からない道に入ってしまった。あやちゃんはようやく私の腕を離して足を止めてくれた。私は肩で息をしながら膝に手を当てて下を向いた。
「ねえ、みほりん!前見てみて!」
「え?」
私はゆっくりと顔を上げて、思わず息をのんだ。
きらきらと輝く夕日、そして澄んだ空気の中で美しい山並みが目の前にあらわれた。
私たちは住宅街の1番高いところまで走ってきていたみたい。たくさんのお家が、まるでミニチュアのように立ち並び、それを夕日の光が優しく包んでいた。
「うわあ!何これ、ほんとに綺麗...!あやちゃん私をここにわざわざ連れてきてくれたの?」
あやちゃんは恥ずかしそうに小さくうなずいた。
「私たち、今寄り道しちゃったね。でもいいんだよ。寄り道しても、遠回りしても。そこを通らないと、こんなふうに見えないものだってあるんだよ。」
これを聞いたら、私は突然自分の進路のことが頭によぎった。
「あやちゃんは小学生の頃からずーっと看護師目指してて、将来の夢が決まってるじゃん?それってすごいよね、なんか尊敬するしうらやましいな。」
「みほりん何言ってんの、とりあえず看護師目指してるだけだよ。」
「え、とりあえず?仮決定…ってこと!?」
私が思わず大きな声を出すと、あやちゃんはふふっと笑って夕日に目をやった。
「うん。たとえ看護学校に行って看護師になっても自分に合わないなぁってなったら辞めることも大事だと思う。もしかしたら看護学校の途中できついなぁって感じたら辞めちゃうかもねえ。まあ、先のことだからなーんにも分かんないけど。」
私がキョトンとしていると、あやちゃんはさらに笑顔になった。
「だって私たち、まだ高校生だよ?今決めたものにこだわらなくていいじゃん!人生は長いんだし、寄り道しても遠回りしても何にも悪くない。まっすぐな道だけが人生じゃないって私はそう思ってるよ。」
そっか、人生はくねくねしてても、道が何個あっても、いいものなんだ。あやちゃんの言葉に私の胸がじーんと熱くなる。何だか涙が出そうになって私は上を向いた。
「そうだよね。なんか一気に気持ちが楽になった!本当にありがとう、あやちゃん!」
「ううん、いいんだよ。みほりん、はい、水。」
あやちゃんは、リュックからペットボトルを出して私にくれた。私はお礼を言って水をごくごく飲んだ。運動後の水ってこんなにおいしいっけ?
私は清々しい想いを胸にきらきら光る夕日が沈むのをあやちゃんと一緒に見つめ続けた。大人になってもいつかまたこの景色を見に来たいな、あやちゃんと一緒に。
完
みなさんの人生はどんな道をしていますか?
まっすぐな道?でこぼこな道?坂が多い道?カーブだらけの道?
私はどんな道があっても良いと思いますし、正解のある道なんて1つもないと思っています。必ず綺麗でまっすぐな道じゃなければならない、なんてこと絶対にないんです。それに、道は1つじゃなくてもいい。たくさんあってもいいんです。どんな道でも引き返すことだってできる、立ち止まることだってできる、進んでいくことだってできる。人生とはそういうものではないかと、私は近頃感じています。