表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界×オジさん×  作者: 五日 叶


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/15

☀13魔術師ユシン

 大きな窓からはあたたかな日差しが入り込む。日光に当たらないようにと配置された無数の本棚には魔法や魔術に関する本がほとんどを占めている。そんな本の一冊にローブで体をすっぽりと覆い隠された少女が手を伸ばす。

「先生、本はどうしましょう……?」

 控えめな声音でそう呼びかければ、「先生」と呼ばれた痩身のエルフは手元の本から視線を移すこともなく「要りません」ときっぱり告げる。少女は困った顔をしながら元あった位置へと本を戻し、「あとは何が必要でしょうか……」と消え入りそうな声で呟きながらうろうろ、きょろきょりと見渡す。

「――シーナ、ただの調査です。メモと着替えさえあれば事足ります」

 落ち着きのない少女シーナは先生――自らの師である魔術師ユシンに「でも」と口を開いては視線を彷徨わせる。

「もし分からないことが出たらどうしましょう……。やっぱり教本があった方がいざというときに役に立つのではないでしょうか?調査なら、しっかりと調べつくして原因を――」

「シーナ、調査をするのは私であって貴方ではありません。貴方の師は教本がなくても問題ありませんし、もし貴方に分からない問題が出てきたのならば私が解決する、もしくは共に考えればいいだけの話でしょう」

 きっぱりを言い切ってからユシンは眼鏡のブリッジを軽く押し上げてからようやく弟子であるシーナに視線を移し、小さな溜息を吐いた。

「心配で仕方がないのは分かりますが、もう少し落ち着きを持ちなさい。調査をしてほしいと言われただけで、何も解決しろと言われたわけではないのですから。……勿論、解決できるに越したことはないでしょうが」

 ユシンはそう言ってからその長い指で本棚の一つを指さし、「無事終わらせたいという思いがあるのならディケイラ領についての見識を深めておきなさい」とほんのりと疲労を滲ませた声音で告げた。

「は、はい……」

 尚も心配そうにしている弟子に、いつものことながら心配性だ、とユシンはまた溜息を溢す。そして再び手元の本へと視線を戻した。

(ディケイラ領での、同時火災)

 アスタラン帝国の中央部から少しだけ外れた位置に広がるディケイラ領。帝国の中でも上から数えるのが早いぐらいの広大な土地を有しており、その大半が農地だ。帝国の食を支える要所であり、畜産や養蚕で栄えるその地で起きた火災についてはユシンも耳にしていた。

(人が生きる地で火は欠かせない。そうでなくても自然火災が起きる可能性は決してゼロではありませんが、離れた地点で同時に火災が起きたとなると――)

 考えられるのは魔法による火災。わざわざ魔術協会へと調査の依頼が届いたということは、その可能性が高いからこそだとユシンは理解していた。

「そう言えば、先生。火災が発生した日に真っ白に光った、なんて話があるそうですね」

「そのようですね」

「それって、」

 シーナと目が合ったユシンが口を開くことはなく、本を読み始めた。シーナも師が何を思ったのか察し、慌てて勧められた本に読み始める。

「……やっぱり、本を持って行った方がいいでしょうか」

「必要だと思うのならそうなさい」

「はい。……そうします」

 ユシンの言葉に頷き、シーナは本を置いてから別の本棚に向かう。目の前で立ち止まったのは本というには簡素で、紙をまとめたもの、と表すのが正しい論文の束だった。

「それが役に立つとは限りませんよ」

「……分かっています。それでも、役に立つかもしれませんから」

 少し古びた紙に束の表紙を撫で、積もったほこりを払う。調査から帰ったら掃除をしないといけないな、とシーナは考えながら紙の束――師が書いた「異世界の来訪者に関する考察」に関する論文を丁寧に、それは丁寧に布で包み込んでバッグへとしまい込むのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ