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異世界×オジさん×  作者: 五日 叶


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12/15

☀12続・花の相談会

「魔術師に何を聞くか、か……」

 悩みをロデソンに伝えれば、ふむ…と髭が豊かなそのあごに手を当てた。

「一番は聞きたいことを聞くのが良いのだろうが…。その様子を見るに、聞きたいことをがありすぎるんだろうね」

「……多分、そうなんだと思います。色々考え過ぎて、何を聞きたいのか自分でも分からなくなってしまって」

 見上げた空は青く澄んでいる。何を聞けばいいかと色々考え過ぎてしまった頭はもはや考えること自体をやめてしまったのか、いい天気だな、だなんてのんきな感想しか出てこない。

「一つは、決まってるんです。元の世界に帰れるんですかっていうことは、聞こうって」

「ふむ、それは大事なことだろうからね。忘れず聞かなければ、ね」

 ロデソンさんは私が異世界の来訪者だということを知っている。この世界の異物で、このディケイラ城の招かれざる客。けれどそういったことを気にすることもなく、当たり前の様に一人の人間として扱ってくれた。賓客でもなく、厄介者でもない。知識のない未熟者としてない知識を授け、程よくこき使ってくれる。ヘドウィンさんやイレイラさんに不満はない。むしろ私が苦労しないようどれだけの気を使ってくれているのか、と考えると感謝の気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

(だからこそ、大事でもなんでもなく……普通に接してくれるロデソンさんは心地が良いんだろうな)

 土いじりは楽しいということを知った。庭師の仕事の一端に触れさせてもらっていることを考えれば、私のやったことを土いじりと呼ぶのは彼ら庭師に失礼なのかもしれないけれど、仕事をするのならこういった仕事がしたい。体力も知識もまだまだない、きっととんでもなく苦労する作業だってあるだろう。それでもやれるのなら信頼できる人がいる、楽しい作業が良い。

(……責任や苦労から逃れようとしている感じが否めない。楽をしようとしているんだろうな、私……。いや、楽をしようとして悪いことはないんだろうけど)

「顔色がコロコロと変わるな」

 ははは、という笑い声をあげるロデソンさんにそう言われ、相談に乗ってもらっていたのに考え込んでいたことにハッと気が付く。

「……すみません」

「私は気にせんさ。だが、気を付けた方がいい癖ではあるかもな」

「はい」

 本当に気を付けないといけない。申し訳なさで胸がざわつくが、ロデソンさんにとっては些細なことなのかもう一度ははは、と笑った。

「魔術師というのは、この世の理に触れるものを良く知る存在だ」

「この世の理……。そう言えばイレイラさんも、魔術はこの世の理に干渉する術だ、と」

「ああ。雲ができれば自ずと雨が降るように、この世には決められたルールがある。水を温めればお湯になるといったような、ね。それこそが理だ」

「……物事はルール通りに存在してる、みたいな感じですかね。お湯からは必ず湯気が出る、っていうのも理ということでしょうか?」

 そう尋ねればロデソンさんは深く頷いた。

「そうだ。当たり前の様に思っていることこそ、この世の理なんだ。種を植え、水をやればいずれ芽が出る。その芽を大事にしてやれば花や実になるというのも理、水をやらずに枯れるのもまた理、だ」

 当たり前こそが理、ということなのだろう。深く考え過ぎると頭がこんがらがってしまいそうにもなる複雑さを感じる。

「そんな理を研究し、そして雨を降らす雲を吹き飛ばす、なんて理に逆らう技である魔術を編み出し操っているのが魔術師だ」

「……理に逆らう技」

「言い方が悪いが、魔術師のやっていることを簡単に説明すればそういうことなんだ。――植物を成長させるのに必要なのは水や光、そして時間。魔術を使えば必要なものなんて関係なく、時を操り一瞬で植物を成長させてしまうことだってできる」

「正直……便利、だなと思ってしまいます。……あの、イレイラさんは魔法って仰っていたんですが、魔法と魔術って何か違いがあったりするんでしょうか?魔法使いじゃなくて、魔術師って呼ぶのも何か理由が……」

 と言い出してから、迷惑ではないだろうかと不安になる。ちらりと視線を向けてみればロデソンさんの気分を害したわけではないらしく、ただ目を細めて笑っていた。

「エナ、それを魔術師に聞いてもいいんじゃないか?」

「……それは、」

 確かに。

「でも、その……。知識のない人間にあれやこれやと聞かれるのは……迷惑じゃないでしょうか」

 そう思ったのも確かだった。素人質問で恐縮ですが、と言い出して本当に素人質問であることなんて滅多にない気がする。時にはそう言ったこともあるのだろうけれど、知恵ある人は何も知らない人間に初歩的な質問されて面倒ではないだろうか。

「それは人による、としか言いようがないだろうね。私が君に教えるのが楽しかったように、やってくる魔術師もそうかもしれない。勿論そうではないかもしれない。それは君自身で確かめて、質問の内容を選ぶべきかもしれないね」

 ロデソンさんの言葉に頷く。相手が話を聞いてくれる人かどうかは会ってみないと分からない。病院に掛かったとき、話をする間もなく質問ばかりを重ねていた医者を思い出す。

(そういう職についているから、と言って話を聞いてくれるかどうかは分からない。逆に、話を聞いてくれる人だって勿論いる、よね)

 結局のところ、相手次第だ。

「いい人だと、いいんですが……」

「それは相手次第だな。まぁ話を聞いてくれなさそうな魔術師だったなら、魔術や魔法についてはヘドウィン様にでも聞いてみればいい。深刻に考え過ぎず、知れるかもしれない程度に考えておくといい」

「そう、ですね。そうします」

 深刻に考え過ぎなくていい。明るい笑い声とロデソンさんに淹れてもらった温かいこのお茶が緊張をほぐしてくれる。

(きっと大丈夫だ)

「よし、それを飲みきったら残りの花壇もやってしまおうか」

 そう言われ、慌てて熱々のお茶をあおるのであった。

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