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第二話:ゴミ拾いの可能性

気絶した猪を前に、俺はしばらく立ち尽くしていた。頭の中ではさっきのステータスウィンドウの説明がぐるぐる回ってる。


「『ゴミとは使用者にとって不要なもの全般を指す』か……。ってことは、俺が『いらない』って思えば何でも操れるってこと?」


試しに、近くに落ちてた枝を「ゴミ」と意識してみる。すると、ふわっと枝が浮かび上がって俺の手元に飛んできた。軽く振ってみると、まるで魔法の杖みたいに扱える。


「おお、マジかよ! これ、めっちゃ便利じゃん!」


興奮して周りを見回すと、森の中には落ち葉や小石、木の実なんかがゴロゴロしてる。全部「ゴミ」と意識して操ってみると、数十個の物体が一斉に浮かんで俺の周りをくるくる回り始めた。まるで俺が魔法使いになったみたいだ。


「ハハッ、これなら戦える! 猪くらい余裕だろ!」


調子に乗って気絶した猪に近づき、浮かんでる小石を一気にぶつけてみる。バシッ、バシッ! と音が響いて、猪がビクッと震えたけど、起き上がる気配はない。まあ、死んでないみたいだし、良しとするか。


「でも、このスキルってどこまで使えるんだろう?」


試しに、猪自体を「ゴミ」と意識してみた。……何も起こらない。どうやら生き物は対象外らしい。ステータスウィンドウに補足が追加された。


スキル【ゴミ拾い】補足

制限: 生物および「使用者にとって重要なもの」は操作不可。


「なるほどね。生きてるものはダメか。まあ、これでも十分チートだろ」


とりあえず、この森から抜け出さないと何も始まらない。猪を放置して、俺は適当に歩き始めた。杖を手に持って、浮かべた小石や枝を周りに配置しながら進む。これなら何か襲ってきても即座に反撃できる。


しばらく歩くと、遠くに煙が上がってるのが見えた。村か町かな? 期待に胸を膨らませて近づいてみると、そこは確かに小さな集落だった。木造の家々が並び、畑で農作業してる人たちがチラホラ。異世界感はあるけど、思ったより平和そうだ。


「やっと人に出会える! 情報集めなきゃ」


集落に近づいた瞬間、突然叫び声が聞こえた。


「助けてくれー! 盗賊だ!」


見ると、ボロい鎧を着た男たちが数人、村の入り口で暴れてる。剣や斧を手に持って、農民たちを脅してるみたいだ。女の人が荷物を奪われて泣き叫んでる。


「うわ、マジかよ。いきなりイベント発生?」


俺は少し迷ったけど、ここで助けたら村人に感謝されて居場所ができるかもしれない。スキルを使えば勝てる可能性もある。覚悟を決めて、盗賊たちに近づいた。


「おい、お前ら! その荷物置いてさっさと消えな!」


盗賊の一人が振り返って俺を見て、ニヤッと笑った。


「なんだこいつ? ガキが偉そうに。死にたいのか?」


剣を構えて突っ込んでくる盗賊。俺は慌てて周りの地面に落ちてる石や木の破片を「ゴミ」と意識して浮かせた。


「くらえ!」


浮かんだ石が一斉に盗賊に飛んでいく。バシッ! ゴツン! 顔や腕に直撃して、盗賊が「うわっ!」とよろけた。俺は調子に乗って、さらに近くの壊れた木箱の破片とか、畑に転がってた古い農具まで操ってぶつける。


「ぎゃあ! 何だこれ! 魔法使いか!?」


盗賊たちは悲鳴を上げて逃げ出した。残った荷物を放り投げて、森の奥に消えていく。村人たちが呆然とこっちを見てる。


「えっと……大丈夫ですか?」


俺が声をかけると、一人のおじさんが恐る恐る近づいてきた。


「お、お前さん、助けてくれたのか? 魔法使い様なのか?」


「いや、魔法使いじゃないですけど……まあ、助けたのは俺です」


村人たちが一斉に歓声を上げて俺に感謝してきた。荷物を取り戻した女の人には泣いて抱きつかれるし、子供には「ヒーローだ!」って騒がれるし。ちょっと恥ずかしいけど、悪くない気分だ。


「お前さん、この村に泊まっていけよ。恩人だ」


村長らしきおじいさんがそう言ってくれたおかげで、とりあえず寝床を確保。腹が減ってたから、村で出してくれたスープとパンをありがたく食べた。異世界の飯、意外と美味い。


夜、村長の家で寝る前に、俺はステータスウィンドウをもう一度確認した。


名前: 佐藤悠斗

レベル: 2(↑1)

職業: なし

スキル: 【ゴミ拾い】


「お、レベル上がってる! 盗賊を追い払ったからか?」


このスキル、もしかしてどんどん強くなるんじゃないか? 俺の異世界生活、やっとスタートラインに立った気がする。



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